イノベーターが
見ている未来
vol.76
その取り組みと背景、そして未来についての展望をうかがいます。
ONE’sグループ 代表
吉田圭人さん(age.29)、阿部清貴さん(age.31)、鈴木佳人さん(age.29)
2018年に創業したONE’s(ワンズ)グループの代表3名は、最年長の阿部さんでもまだ31歳。そんな若き代表たちがこの3年で美容サロン16店舗を展開し、他の業種を含むグループ全体で2021年の年商見込みは5億3,000万円超という急成長!さまざまな業種の多角経営、最短3カ月でのスタイリストデビュー…その根底にあるのは、「社員第一主義」。その実現に向けた道筋に迫りたい。
吉田圭人さん(写真左)/1992年、茨城県出身。専門学校卒業後、美容室1店舗を経て2018年にONE’s創業メンバーへ。教育と海外事業開発を統括。
鈴木佳人さん(写真右)/1992年、群馬県出身。専門学校卒業後、美容室1店舗を経て2018年にONE’s創業メンバーへ。集客や人事、アイラッシュサロンとドライヘッドスパ事業を統括。
・「ONE’sグループ」WEBサイト
https://www.onesgroup-salon.com/
第1章スピード出店&多角経営の理由
「みんなでワクワク仕事をするために
雇用環境を整える」
ONE’sさんは代表が3名。お一人ずつ、役割を教えてください。
吉田●主に新卒採用者の教育を担当しています。うちは約3カ月から半年でデビューを目指すための新卒教育アカデミーがありまして、そのカリキュラム構成やスケジュール管理を決めたりとか。もう一つは海外事業部で、中国に店舗と美容専門学校をつくるプロジェクトを担当しています。
阿部●僕は美容部門だけでなくて、その他うちがかかわる事業の計画や仕組みづくりをしています。細かい実務的なことは他の者に任せているんで、この先の方向性を決める感じですね。美容部門では全体のブランディングをやっています。
鈴木●人事に関しては僕が担当しています。ほしい人材像を固めて面接官と共有し、人材募集に関する外部に向けた発信をしたり。あとは採用に向けた動画制作も。もう一つ集客については、現在は別の者が実動しているので、その監修という立場です。
創業のきっかけは?
阿部●僕が都内でフリーランスの美容師をしていて、それもよかったんですけど「一人はつまらないな」って思いもありまして。みんなでやると楽しいし、誰かとあれやろう、こうしようと言い合いながらのほうがいいのかなと。会社を立ち上げるにしても、僕一人の独裁でいくのも違う気がして。いろんな代表者を置いて、それぞれを売り出すほうが規模の面でもメリットがあると考えたんですね。それで、以前同じ美容室で働いていた吉田と鈴木に声をかけた、という流れです。
美容室のほかにも多様な事業を展開されていますね。
阿部●現在は美容室10店舗、アイラッシュ4店舗(うち2店は他社とのコラボサロン)、ネイル1店舗、ドライヘッドスパ1店舗、さらにこの11月、ドライヘッドスパ1店舗、脱毛サロン1店舗の出店をひかえています。
あと不動産2店舗、IT業サロン向けアプリ会社、携帯電話販売会社、親族経営のところと協力している事業として内装業があります。来年からは保育園、飲食業も始める予定。本来は今年スタートしているはずだったんですが、コロナの影響でちょっと遅れているんですよ。
すごいですね。そうした多角経営は、創業当初から考えていたのですか?
阿部●そうですね。ワイワイ楽しく盛り上がりながら仕事をしたいから会社を創ったわけですが、それって経営環境が整っていないと実現できない。給料が低いと、楽しく仕事はできません。だから僕は自分にかかわってくれる人たちに高水準の環境下で働いてもらい、生活を豊かにできるようにと思って創業しました。手始めに自分にできる美容室からスタートしましたが、美容室だけをどんどん大きくしようとは当初から考えていませんでした。
ただ、美容業界の雇用環境を高水準にしたいという想いを叶えるために、多角化というのは必要です。美容師って歳をとると、どうしても売上が落ちてしまう。そういう人のセカンドキャリアを用意する意味でも、いろんな事業の連結経営を行って「この分野はきみに任せたよ」って、できるといいじゃないですか。
2018年の創業から3年で、現在は美容系のサロンだけで16店舗、2021年の年商見込みが5億3,000万円に達しています。そのスピード成長を可能にしているものは何だとお考えですか。
阿部●年商をアップしていける企業とそうでない企業の差は「人に仕事を託せるか」「社長がどれだけ仕事をしないか」ってことだと思うんです。社長がすべての権限を持つようでは企業の成長はない。美容業界は親方商売なので、ハサミを置いて経営者になっても、親方思考が抜けないことが時としてあるのでは…。なので僕たちは、社長の役割をいかに多くの仲間たちに分配、分担させるかを大事にしてきました。
共同代表の吉田さん、鈴木さんと分担をして、そのほかの人にも任せているわけですね。
阿部●はい。まず「幹部」の在り方を考えました。普通は店長イコール幹部という考え方ですが、店長はあくまでも現場責任者。事業部長などの幹部は別に用意しました。幹部は投票で決まる2年の任期制とし、各事業部に予算と決定権を与えて、いちいち僕ら代表の判断を待たなくても進められる体制にしています。こういう仕組みは、ある程度大きい企業であれば当たり前でしょう?でも美容業界ってそうではないので、その壁も業界の発展をさまたげている。
僕は美容という利益率の低い商売で、いかに大企業を模倣していくかという点を大事にしていて。人を成長させる、開花させるというマインドのもとで、いずれ上場を果たしたいと思っています。役割分担、そして成長させる意味でも、通常は店長がやるような材料発注などをうちでは1年目・2年目の若手に担当させているんです。
さまざまな店舗、事業をされていて、もちろん軌道に乗るまでは代表のみなさんがサポートするとは思います。とはいえ3人とも美容師出身。他分野のビジネスに関する知識やノウハウはどう得ているのでしょう。
阿部●うまく進められている秘訣の一つは、うちの本部バックオフィスの存在ですね。IT出身のシステムエンジニアと、税理士事務所にいた人間の2名が主に稼働していて、運営上必要になってくる事務管理や労務、税務面を受け持ってくれています。普通は外部の税理士さん、社労士さんに相談することが多いと思いますが、うちは内部にいるのでタイムロスが防げる。それにリサーチ力も高いので助かっています。
ノウハウ面では、何としても「リアルな情報」を手に入れるのが僕ら3人の仕事。いろんな人に聞きに行ったり調査もしますし、その業界に入り込んでみたり。今度、残土処理業も立ち上げるつもりで、ゆくゆくは親族経営の内装業との合併や連結を考えているんです。まずはその業界を知る必要がありますが、建設関連の業界も職人世界というか、なかなか中身が見えづらい。なので僕がその業界に平社員で3カ月~半年くらいは入って、実動的なノウハウを知ろうと思っています。
ご自身で現場に入り込むとはすごいですね!成功の理由がわかる気がします。
阿部●いやいや、僕らみたいな小さな会社で「代表です」なんて偉ぶっても仕方がない。幸い、形になった事業は他のスタッフに任せることができているので、いまは地べたを這いずり回ってでも、必要な情報を手に入れたいんです。
平成生まれの若き代表3名!
8業種の多角経営&最短3カ月デビュー…
その圧倒的成長を、支えるものとは?