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訪問美容~データ&実例編~

超高齢化社会を迎え、サロンの潜在市場として注目される “訪問美容”。
データや実践事例を交えて訪問美容の可能性について考えていきます。

vol.46

実例編介護エステで施設契約20件。喜ばれる理由は?

介護や福祉のサービスを行うNPO法人「ひだまり創」を自ら立ち上げ、介護福祉士としても活躍している古澤由加里さん。「ひだまり創」の事業のひとつである「介護エステケア協会」で、訪問介護エステケアという、高齢者の肌に触れて心身ともの健康をめざす施術を行っています。また、その施術ができる介護エステケアセラピストの養成にも力を入れています。「介護エステケアを通して魂が震えるくらいのうれしい経験をたくさんできています」と語る、古澤さんの活動についてお話を伺いました。

NPO法人ひだまり創 介護エステケア協会

  • 全スタッフ3名
理事長:
古澤由加里さん
訪問美容開始:
2016年
訪問施設数:
約20件(1回の訪問で6〜7名)
施設訪問頻度:
月に1回
訪問個人顧客数:
4名
個人顧客訪問頻度:
週に1回
訪問スタッフ:
3名
価格:
3,500円〜(50分)

Q

介護エステケアを始めたきっかけは?

A

一人ひとりの利用者さまとゆっくり向き合いたと感じたことでした。

エステでスタートし、育児との両立のために介護業界に転職しました。

もともとはエステティシャンとして働いていました。エステの仕事は好きでしたが、エステティックサロンはお客さまがお仕事帰りに来店されることが多いため、勤務時間が夜型。結婚して育児をしながら続けるのは難しく、転職したのが介護業界でした。当初は昼間に働けるという理由で始めた介護の仕事でしたが、「利用者さまに笑顔になってもらうサービス」という意味で、エステとの共通点を感じていました。
ただ、介護の現場は人手不足。常に時間との戦いでした。お風呂上がりにクリームをつけてさしあげたり、食後の休憩時間に足のマッサージをしたり、利用者さまと目を合わせてゆっくり会話をするととても喜んでもらえたのですが、介護施設としては時間をかけることは求められていませんでした。介護の範ちゅうでやろうとすると施設の考え方と異なるため、どうしたら自分がしたいサービスを提供できるか考えて思いついたのが、「介護エステケア」でした。

介護エステケアの信頼度を高めるために、法人を設立しました。

まずは私自身を信頼してもらえるように、介護福祉士の資格を取りました。その後「介護エステケアを始めたい」と勤務先の施設の社長に伝え、同意をもらいました。勤務先は7つの介護施設を運営していたので、各施設へ月に1回ずつ有償ボランティア(交通費や材料費などの諸経費が報酬・謝礼として支払われるボランティア)として介護エステケアを始めさせてもらったのです。
当初は訪問1回あたり、1時間半程度で6〜7人の施術を行い、材料費として2,000円いただいていました。でもこの価格では事業として成り立たないため、個人ではなく組織で活動していこうと考え、NPO法人として「ひだまり創」を設立。その活動の一環として「介護エステケア協会」を立ち上げました。

  • 「エステも介護も、相手から笑顔をいただけることが喜び」と語る古澤さん

Q

どのように契約数を増やしていったのですか?

A

介護施設に飛び込みで回り、個人向けには新聞の折り込み広告を入れました。

ホームページを作成してブランディングにも力を入れています。

施設への営業はアポなしで飛び込みで回りました。「介護エステケア」と言っても聞き慣れないため、電話でアポイントを入れようとしても断られてしまうからです。チラシをもって飛び込みで行ったほうが、話を聞いてもらえる確率が高かったです。
また、ブランディングをきちんとしようと思い、協会のホームページも自分でつくったり、SNSで発信しました。すると、営業で直接お話しした職員の方から興味をもってもらえなくても、チラシを見た他の職員の方がホームページを見てくれてご連絡をいただくというケースが増え、契約に結びついていきました。

  • 実際に施術した利用者の方々の笑顔が散りばめられているチラシ。介護エステケアのメリットが伝わるよう工夫している

離れて暮らすご家族からお申し込みが入るように。

個人のお客さまの獲得に結びついたのは、新聞の折り込み広告です。フリーペーパーやポスティングもやりましたが、高齢者の方は新聞の購読率が高く、新聞広告への信頼も高いようです。訪問美容はご家族の理解が重要なため、お正月やお盆などご家族が帰省されている時期に折り込み広告を入れました。結果としてご家族からお申し込みいただくケースが多かったです。離れて暮らすご家族は、なかなか親御さんに会いに行けず、お世話もできません。有料老人ホームなどに入居されている利用者さまのご家族が、ご自身の代わりに「親が喜ぶサービスをしてほしい」というお気持ちからお申し込みいただいているようです。そうしたご家族には施術後の笑顔のお写真を送ってご報告しています。

  • 訪問介護エステケアで使っている道具。保湿用のクリームがメイン。サービスのメイクはまゆ毛とリップなど簡単に落とせる程度に

Q

介護エステケアではどんなことをしているのですか?

A

顔、手、足などいずれかのエステケアを行っています。

筋肉に触れることで、その方の歴史がわかります。

エステでサロンに来られるお客さま向けの施術の場合は、美容効果が優先されます。一方、介護エステケアの場合は、エステの手技で気持ちよくなっていただくことと同時に、どんな時間を過ごすかが大切だと思います。おひとりにかけられる時間は15分程度なので、顔、手、足などご希望のパーツのいずれかを施術させてもらいます。
限られた時間での施術で心身ともにリフレッシュしていただくために、利用者さまのお体に触れて感じたことから会話を広げることを心掛けています。例えば顔の筋肉が凝っている方は、歯を食いしばっていらしたことが多いので、「重いものをもったり我慢をしたり、がんばり屋さんだったのではないですか?」などとお声がけしてみます。すると「そうなのよ、実は…」と、その方の人生のお話を伺えます。筋肉に触れるとその方の歴史がわかるんですね。手足などが動きにくくなって、できないことが増えてしまったマイナスに見えることを、その方ががんばってきたことの証としてプラスに捉えていただくようにすると、みなさん素敵な笑顔を見せてくれます。

  • いちばん人気は顔の施術。普段触れられることがない分、より気持ちよさを感じてもらえるようだ

  • 体に触れることで、その人がどのように生きてきたかを感じることができ、会話もはずむ

Q

介護エステケアをやってみてよかったことは?

A

信頼を得られれば、魂が震えるほどの喜びをいただくことができます。

「あなたの手は人を救う手」とおっしゃっていただけました。

要介護の方々の生活は、介護する人とされる人の二極しかない世界にいらっしゃいます。そこに、我々のような第三者が関わることで、「要介護者ではなく、ひとりの人間に戻れる」とおっしゃっていただけます。施術後に簡単なメイクをしたりすると「昔に戻って、おしゃれして出かけたくなる」とおっしゃる方も多いです。
例えば、うつ病をおもちでふさぎこみ、施設でも孤立しがちな利用者さまがいらっしゃいました。最初はお体を触らせていただけなかったのですが、少しずつお話ししながら打ち解けて、施術をさせてもらったときに「心がすーっとした。あなたの手は人を救う手だ」と言ってくださったのです。また、職員と関わることも嫌がっていた認知症の方が、エステケアを通じて人との触れ合いを心地よく感じてくださったのか、施術後は笑顔で職員の手を握ってきたそうです。普段はおひとりでいることが多かったその方が、他の利用者さまと一緒に歌をうたうようにもなり、「エステの力ってすごい!」と職員の方からも喜んでいただけました。
こうしたお言葉をかけていただくことで、私自身が魂が震えるほどうれしい気持ちにさせてもらえています。

  • 「施術後に乙女のように喜ぶ姿を見ると、とても幸せな気持ちになります」と古澤さん

Q

今後は介護エステケアをどのように展開していきたいですか?

A

介護保険外サービスを行う事業者全体で協力体制をつくりたいです。

高齢者の方々の多様なニーズに、サービス事業者全体で応えていきたい。

訪問理美容をはじめとして、介護施設を対象とした介護保険外サービス事業者はさまざまあります。どのサービスも、利用者さまを笑顔にする時間を提供できることが共通していると思います。一方で、施設の種類は多様ですし、利用者さま一人ひとりの年齢や好みも異なります。我々介護保険外サービス事業者が競合するのではなく、協力体制をつくって、どんなニーズにも応えられるようにできたらと考えています。

  • 「介護保険外サービス事業者全体で、高齢者の方々の笑顔の時間を増やしていきたいです」

古澤さんからひとこと

介護施設にとってヘアの訪問理美容はかなり浸透してきていると思いますが、介護エステケアはまだこれからの分野。必要性やメリットを理解いただくことが大事だと感じています。施術するにはエステの知識があればできると思いますが、施設の信頼を得るために、介護の知識もあったほうが安心していただけると思います。また、営業をかけようとする施設がどんなところか、予めホームページや職員の方のブログなどを読んで知っておくと、お話がしやすくなります!

Salon Data

NPO法人ひだまり創 介護エステケア協会 【エヌピーオーホウジンヒダマリソウ カイゴエステケアキョウカイ】

アクセス
JR岐阜駅から車で約12分
創業年
2016年
スタッフ数
3名
URL
https://furusawa19840328.wixsite.com/kaigoesutekea
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