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訪問美容~データ&実例編~
超高齢化社会を迎え、サロンの潜在市場として注目される “訪問美容”。
データや実践事例を交えて訪問美容の可能性について考えていきます。
vol.52
実例編訪問フットケア。1年で5施設と契約できた理由は?
巻き爪フットケアFlora
- 全スタッフ1名
- 1店舗
- FSIフスフレーガー:
- 笹原真弓さん
- 訪問美容開始:
- 2022年
- 訪問施設数:
- 5施設
- 施設訪問頻度:
- 1カ月に1〜4回(1回の訪問で5〜10名)
- 訪問個人顧客数:
- 10名
- 個人顧客訪問頻度:
- 1カ月に1回
- 訪問スタッフ:
- 1名
- 価格:
- 巻き爪矯正5,500円〜、爪切り2,750円〜、角質ケア3,850円~
-
Q
笹原さんが携わるフットケアとは?
-
A
巻き爪やタコなど、足のトラブルを緩和する仕事です。
施設や個人宅の訪問を中心に、健康靴ショップの一角で施術を担当。
足のトラブルには、巻き爪や、爪が分厚くなる肥厚爪(ひこうづめ)などの変形爪や、タコや魚の目など角質のトラブルなどがあります。それらの悩みを抱える人は、「病院に行くほどではないけど、自分では解決できない」と思っている方が多いのです。特に高齢者の方は、体がかたくなったり手の力が弱くなることで、自分の足の爪を切れない方が少なくありません。高齢になると乾燥などが原因で足の爪が分厚くなることも、爪を切りにくくなる原因です。爪を切らないことでさらに別のトラブルが起こる悪循環が起きます。そうした足や爪のトラブルのケアをするのが私の仕事です。施設や個人宅の訪問が中心ですが、鎌倉のシェアオフィスでサロンワークもしていました。この7月からは移転し、平塚の健康靴ショップの一角で施術を始めます。
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Q
もとは看護師をされていたそうですが、フットケアを始めたきっかけは?
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A
爪の悩みをもつ方が多く、「自分がやらねば!」と使命感をもちました。
看護師のままではフットケアに時間を費やせませんでした。
もともと総合病院で看護師をしていて、透析室の担当でした。糖尿病の患者さんが多かったのですが、足のケガが命取りになる病気なのです。そのため、看護師のときから患者さんのフットケアはしていました。出産・育児を機に転職し、パートの看護師として皮膚科とデイサービスで勤務し始めました。そのときに、足の爪を切るためだけに皮膚科に来る高齢者の方々にたくさんお目にかかったのです。「爪を切る」という日常的に必要なことに困っている方々の多さに驚き、「もっとお役に立ちたい」と思うようになりました。でも、看護師として働いていると、日々の業務が多く、患者さんのフットケアに専念する時間はありませんでした。
スクールで学んで認定資格を取得。
フットケアについてネットで調べてみると、それを職業にしている方がいることがわかりました。自分も独立してフットケア専門でやっていこうと思ったのです。そして、ドイツ式のフットケアのスクールで専門的にフットケアの知識や技術を学び、「FSIフスフレーガー」という認定資格を取得。スクールでは複数の講座で学んだため、トータルで約100万円かかりました。独立後、勤務していたデイサービスから施設などに紹介してもらったところ、「やってほしい!」という方が続々と出てきました。施設にいらっしゃる方からの要望が多かったので、訪問中心にスタートすることにしました。それが2022年の5月のことです。
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Q
独立して1年で5施設の契約に至った経緯は?
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A
チラシで営業もしましたが、潜在ニーズが高かったのだと思います。
ホームページやInstagramを、ご家族や職員の方が見つけてくださった。
デイサービスの紹介以外では、チラシを作って自分で営業しました。介護施設の入居者向けのホームページで近隣の施設をリストアップし、チラシをもって直接営業に行きました。また、ホームページを作成したり、Instagramも始めました。個人の方はホームページやInstagramをご家族の方が見つけてくださって訪問につながることがほとんどです。独立して1年で、定期的に訪問する施設は5件、個人のお客さまは10名。不定期にお邪魔する方、サロンにお越しいただく方も含め、順調にお客さまが増えていきました。足や爪の悩みを持つ方がいかに多いのかを思い知っているところです。今の高齢者の方々は若いときに、おしゃれだけれど足に合わないハイヒールを履いていたことで、足や爪が変形してしまった方が多いと感じています。また、地元の鎌倉は高齢者が多い一方で坂道ばかりなので、足にトラブルがあると出歩くのが困難に。そういったことも訪問フットケアへのニーズにつながっているようです。
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Q
独立してフットケアを実際にやってみていかがですか?
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A
お客さまに喜んでいただけるだけでなく、自分の学びが多く充実しています。
変形爪がなおることで、歩けなかった高齢者がお散歩できるように!
やってみてよかったと思うのは、変形爪などが痛くて歩けなかった高齢者の方々が、元気にお散歩ができるようになった時などです。出歩かないと筋力が弱りますます外出が困難になってしまいますが、爪の痛みがなくなると自然と歩きたくなり、健康にもつながるようです。また、爪の状態は千差万別。いろいろな爪の形やお悩みの方にお会いできるので、日々勉強になります。珍しい症例のときは、「半額でもいいからやらせてください」とこちらからお願いする場合もあります。自分だけでは解決できないときは、スクールで出会った先生や同業の仲間たちと、SNSで情報交換して、アドバイスをもらっています。
持ち歩く道具の数が多く、重いことが大変。
やってみて大変なことは、訪問の際に持ち運ぶ道具が多くて重たいことですね。必須の道具はフットバス、ニッパー、ネイルケアマシーン、フットクリーム、アルコール、タオルなど。施設では多いときは10名ほど施術しますが、ニッパーは使い回せないので予約人数分プラスαの本数をもっていきます。ニッパーは小型ですが意外と重量があるのです。訪問の際はポータブルのネイルケアマシーンを持っていきますが、サロンでは据え置き型を使っています。必要な道具の初期投資は120〜130万円くらいかかりました。
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Q
今後はどのように展開させたいですか?
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A
仲間と一緒にやったり、介護現場の方向けのセミナーをやってみたいです。
足の悩みをもつ方をお世話をする人々の力にもなりたい。
ありがたいことに、ひとりでやるには限界があるほどお客さまが増えてきています。それでもまだ、潜在的に足や爪のケアで困っている方はたくさんいると感じています。1度施術させていただくと必ずリピートをいただけるほど、求められている仕事です。足のトラブルを抱えるご本人だけでなく、病院の看護師さんや、施設の介護士の方、ご家族など、お世話をする方々からも求められています。技術的に難しい仕事ではありませんが、トラブル別のケアの仕方や医療との境目についてなど、知識は必要です。フットケアの知識がある仲間と一緒に活動できたらうれしいですね。また、介護の現場で困っている方々向けに、私の知識と経験を活かしたセミナーなどもこれからやってみたいです。
笹原さんからひとこと
ネイリストの方でフットケアに挑戦したいと思っている方も多いと思います。爪の悩みを持つ方は本当に多いので、ネイルの手技を活かしつつ、足のトラブルケアについて学びを深めれば仕事を広げるチャンスがあります! 変形爪がきれいになれば、ネイルもしたいと考える高齢者の方は多いはずです。フットケアと美容を共存させると可能性は大きくなっていきます。他の人が始める前に、やるなら今ですよ!
Salon Data