ビジネスの世界において圧倒的な存在感を放つ人。その視点はどのように生まれるのか?
他業界の「知」を美容業界へ。そのヒントをお届けします。
PEOPLE.13 松田崇弥 ヘラルボニー 代表取締役Co-CEO
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岩手発アートビジネスが東京、パリへ。 障害がある人の支援ではなく、伴走者。
Profileプロフィール
松田崇弥(たかや)さん/1991年岩手県生まれ。東北芸術工科大学デザイン工学部企画構想学科を卒業後、小山薫堂氏が率いる企画会社「オレンジ・アンド・パートナーズ」のプランナーを経て、2018年に双子の兄である文登さんと「株式会社ヘラルボニー」を設立。
・「ヘラルボニー」
https://www.heralbony.jp/
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どこにでも行ける。"
パリで勝てば、どこにでも行ける。
千葉
(ホットペッパービューティーアカデミー・アカデミー長)
「ガイアの夜明け」や「Forbes JAPAN」で紹介されるなど、ますます注目が高まっていますね。
松田
想像していた以上に、反響が大きかったですね。ただ、世の中にサステナビリティやSDGs、ダイバーシティというのが広がってきている機運があったので、自分たちの実力という感じが持てていなくて、そこは悔しい(笑)。ただ、そういった言葉の殻を外しても「かっこいいかどうか」を大事にしている企業が、生き残ると思っています。
千葉
創業のきっかけは、兄・翔太さんの存在があったとのことですが?
松田
ヘラルボニーは双子の兄・文登と2018年に立ち上げました。4歳上の兄は重度の知的障害を伴う自閉症で、生まれながらに障害は身近な存在。小さい頃はすごく仲がよかったのに、中学くらいになると、兄も、弟である僕たちもバカにされることがあり、兄の存在を遠ざけていた時期も…。
僕らが生まれたのは岩手の人口1万人ほどの小さい町。地元の友人たちがルイ・ヴィトンに憧れて財布を持つように、いつかヘラルボニーの商品を「かっこいいじゃん!」と言ってくれる世界になったらいいなと思い、起業しました。
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「ヘラルボニー」という社名は、兄・翔太さんが7歳の頃、自由帳に何度も書き記していた謎の言葉からきているという
千葉
2024年、パリで開催された「LVMH Innovation Award 2024」にて、日本企業として初めてのカテゴリ賞という快挙。素晴らしいですね!
松田
あれは、できすぎていると思うくらい、うれしかった!海外進出を考えたときに、フランスというのは最初から決めていました。ヴィトン、ディオールなど名だたるブランドはフランスにある。そうだ、フランスに行こう、それには「LVMH Innovation Award」だと。
ビジネスとしてレバレッジを効かせるためには、世界向けのコンペで実績を残すしかない。パリで勝てば、どこにでも行ける。今後グローバル展開を進めるうえで、大きな権威になると考えました。
過去受賞した企業は、アメリカ・ヨーロッパが多く、アジアの企業は難しいのでは…という声も多かったです。たくさんの方に会い、推薦状を書いてもらうなど、動いて、動いて、獲得できたもの。なので、ラッキーパンチというより、戦略的に取りにいった感じです。
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世界中のスタートアップ企業を対象とした「LVMH Innovation Award 2024」にてカテゴリ賞に輝いたヘラルボニー。LVMHは、ルイ・ヴィトンやクリスチャン・ディオールなどのブランドを傘下に持つ世界最大級の多業種複合企業体