女性が活躍するサロン
女性スタッフが辞めない
サロンの秘訣
結婚・出産を経ても女性スタッフが長く活躍している、さまざまなサロンの取り組みや職場づくりを紹介していきます。
vol.48結婚退職率99%からママ10名に。
関西有名サロンが始めた新しい経営とは?
Lee
大阪市中央区
グループ全体で31店舗、約350名のスタッフを抱える「Lee」。10年ほど前まではほとんどの女性スタッフが結婚と同時に退職していましたが、今ではママスタッフが10名。またFC(フランチャイズ)オーナー11名中、女性が2名、事業部リーダー12名中女性が6名と、役職者にも続々女性が増加しています。女性スタッフが辞めないサロンに変貌したきっかけと取り組みについて、代表取締役の眞城さんにうかがいました。
1取り組み
実力とやる気のある女性は、FCオーナーとして登用。
どんな取り組み?
「Lee」では、店長まで育った人材でやる気のあるスタッフは、FCオーナーとして経営を任せて出店させている。しかし、FCオーナーになる人材は、店長を育てるなどのマネジメント力を身につけるまでに成長しなければならない。女性の場合、それまでに結婚や出産のライフステージの変化が訪れることもあり、目指す人が少なかった。郡山店の永野さんが女性第1号FCオーナーになったことをきっかけに、2人目の女性FCオーナーも誕生し、女性のキャリアプランの選択肢が広がった。
なぜそうした?メリットは?
永野さんは創業当時からのスタッフで、「Lee」で産休第1号だった。出産後はパート勤務をしていたが、子どもの成長とともに本格復帰を目指し「やるならとことんやりたい。女性でもFCオーナーになれるなら自分が第1号になりたい!」と希望していた。その頃、社長の眞城さんたち幹部も、「女性のFCオーナーを育てたい」と思っていたため、お互いの希望が一致した。永野さんがFCオーナーになったことで、女性スタッフたちの声を受けとめやすくなり、その後の女性のための制度整備に拍車がかかることとなった。
2取り組み
結婚、出産しても働きやすい「フォークシステム」を導入。
どんな取り組み?
「フォークシステム」とは「Forever Work」の略で、女性スタッフがずっと働けるための制度だ。具体的には、結婚や出産などで勤務時間が制限される場合、正社員のまま本人の事情に合わせて時短にできたり、休日を土日に設定できる制度だ。また、保育士が常駐している託児施設が併設されているサロンが現在2店舗あり、ママスタッフが格安の保育料で子どもを預けることができている。
背景とメリットは?
以前は、「結婚相手が同じ業界でない場合は、結婚して仕事を続けることは無理だ」と女性たちは考え、99%が結婚とともに退職していたが、時短勤務を選べることから結婚退職者が減っている。また、子どもがいる人も中途採用し始め、彼女たちも「フォークシステム」を利用できるので、ママスタッフが急増している。大型店で店舗数もスタッフ数も多いため、ママスタッフが子どもの事情で早退する場合も、スタッフ同士や他店から補える体制になっている。
3取り組み
トップダウンをやめて、スタッフの声をすくい上げる経営に。
どんな取り組み?
以前、眞城さんはトップダウン式の経営をしていた。離職率が高く思うように経営ができなかったときに、スタッフの声をすくい上げる方向に180度舵を切り、上記のような取り組みがスタート。社長である眞城さんは幹部やFCオーナーたちの声を聞き、FCオーナーは店長の声を聞き、店長はスタッフの声を聞くということを徹底し始めた。特に、女性たちの声に真剣に耳を傾けることで、上記のようなしくみが作られていった。
きっかけとメリットは?
以前の「Lee」は新入社員が1年で半数近く辞めるなど、離職率の高いサロンだった。それを食い止めるために眞城さんが最初に考えたのは、制度よりもまず人間関係の改善だったという。「サロンの問題点やスタッフの不満は、突き詰めればすべて人間関係なのです。それなら部下は自分に不満があるのかもしれないと考え、ものが言いやすい風土にしたり、部下を観察することで自分をどう思っているか省みることにしました。相手を振り向かせるには、一旦相手を受け入れることから始めるべきだと思ったのです」(眞城さん)。
シンプルながら思い切った舵取りが功を奏し、部下の気持ちを重視して、求められていることを制度化していったことで、男女とも離職率が激減。それによって、新店舗展開がしやすくなり、売上が急成長する好循環が実現している。
社長インタビュー
- Q. 経営を見直す際、ご自身の今までのやり方を否定するのは並大抵のことではなかったと思いますが?
-
A. 切羽詰まって、本気で「辞めてほしくない」と思ったらできるはずです。
離職率が高かった頃から、「スタッフに辞めてほしい」と思っていたわけでありません。美容業界は労働時間が長かったりと大変なことはありますが、自分たちがそれで成長してきたので、当初は「なぜがんばろうとしないんだ?」と相手の非ばかりを見ていました。でもそれでは通用しない。部下に「辞めずに成長してほしい」と心底思っていたので、「何を思っているのだろう?」と本気で知りたかったのです。「トップダウンがいけなかったのだ」と気づいたからには、そこで改善に向けて実行するのは経営者として当たり前のことだと思います。
- Q. 「フォークシステム」で女性が早く帰ることを、周りのスタッフが受け入れることは難しくなかったですか?
-
A. まだ完璧とはいえませんが、徐々に風土も変わっています。
「フォークシステム」を導入することは、3年前の新年会で全社員に向けて宣言しました。「女性スタッフを大切にし、部下の声を聞く」という方針にしたのですから、それは各店にも浸透させなければなりません。幹部がママスタッフに「もうあがる時間だから早く帰りな」と声をかけていれば、スタッフたちも「うちのサロンは変わったんだ」と理解してくれます。また、永野のようなママスタッフの働き方を見せるなどして、浸透させています。それでも理解を示さないFCオーナーがいれば「人が辞めていなくなってしまったら、サロンを成長させることができないんだよ」と、人の大切さをわかるまで伝えます。
技術者は人を育てるのが苦手な人もいますが、マネジメントは「管理」ではなく「スタッフの応援」だと思っています。上司も部下もお互いが気持ちよく働ければ、会社は成長します。
Salon Data