女性が活躍するサロン
女性スタッフが辞めない
サロンの秘訣
結婚・出産を経ても女性スタッフが長く活躍している、さまざまなサロンの取り組みや職場づくりを紹介していきます。
vol.50女性スタッフ160人超、女性店長は12人!
時短ママ店長も活躍するサロンの3つの取り組み。
tip・top吉祥寺店/ヘアサロン
東京都武蔵野市
東京、埼玉に17店舗を展開するトータルビューティーサロン「tip・top」。今年で創業30年を数え、母娘3世代で通うお客さまもいるという老舗です。スタッフは女性比率が高く、9年前までは妊娠・出産で退職する確率は100%。ところが現在は一変して、ほとんどが産休を取って戻ってくるように。女性スタッフ163人中、今春に仕事復帰したママは、なんと4人も!大きな変化はどんな取り組みによるものか?執行役員で総務・労務などを担当する白石さんにお話を伺いました。
1取り組み
時短勤務でも、能力があれば店長に復職できる。
どんな取り組み?
「tip・top」ではスタッフの約9割が女性で、17店舗あるうちの12店舗で女性ディレクター(店長)が活躍している。ディレクターには店づくりを一から任せており、店ごとにオープンからの方針を貫きたいというのが会社の想い。これまで店を育ててきてくれた能力のあるスタッフには、出産後も変わらずにディレクターを勤めてほしい。そこで、フルタイムの正社員や時短の準社員など契約形態にかかわらず、ディレクターのままでの復帰を打診。本人が望めば、産休・育休前と同じ役職で働き続けることができる。
メリットは?
会社が声をかけるのは、もともとディレクター職にやりがいを感じて頑張ってきたスタッフたち。「育児中はゆっくり働きたい」という声もあるが、なかには快諾するスタッフも。「夜のミーティングに出られない分、朝礼で伝達をしっかりする」など、自ら課題解決に動いている。
会社にとっては、信頼できるスタッフに引き続き店を任せられることがメリット。スタッフにとっては、時短勤務になっても役職を失わずに働けることが、モチベーション維持につながっている。
2取り組み
やる気次第でしっかり稼げる、基本給+歩合給のシステム。
どんな取り組み?
給与には歩合制を導入。正社員の基本月給、準社員の基本時給に加え、売り上げに応じた歩合給が支払われる。基本給はトップスタイリストもアシスタントも同額。「勤務時間内にどれだけお客さまを満足させられるか」で収入が大きく変わってくる。正社員のトップスタイリストの場合、基本給の2倍の額を歩合給で稼ぐこともある。
メリットは?
売り上げ100万円を超えるスタッフなら、十分な収入になる仕組み。「tip・top」ではキャリアを築いてから出産するスタッフが大半のため、お客さまとの付き合いが長く信頼関係もできている。そういったお客さまが短い勤務時間に合わせて来店してくださるので、復帰後の売り上げ回復もスムーズな様子。「いざとなれば、夫に代わって大黒柱になれる」というほどに稼いでいるママスタッフもいるとか。
3取り組み
初めてのことだらけのママへ、本部からのアドバイス。
どんな取り組み?
現在、各店に在籍する子育て中のスタッフは多くて1名。ママスタッフ同士の横のつながりがないため、出産・復帰に必要な情報が行き届いていないというのが現状。そこで産休前に最終出勤日の相談で訪れた女性スタッフへ、白石さんが対面でアドバイスを送っている。
内容は、社会保険から得られる手当や有給を余らせない出勤日の計算法など、労働者として損をしないための知識。その他、引き継ぎでの注意点や復帰のタイミングなど、先輩ママから集めた情報もなるべく詳しく伝えている。
スタッフの反応は?
特に社会保険に関することなどは、「まったく知らなかった」と目を丸くするスタッフも多い。お客さまの引き継ぎに関しても、先輩ママの失敗例をなぞらぬように上手に対応できている様子。ささやかな取り組みではあるが、産休・育休後に戻ってきやすい環境づくりに活かされているようだ。
執行役員インタビュー
- Q. 女性活躍の取り組みを始めたきっかけは?
-
A. 初の産休希望スタッフに、よい労働環境を提供したいと思ったのが始まりです。
実はこれと言って、会社として取り組んできたことはないのです。なので女性スタッフが活躍する現在の状況も、時代と共に女性の意識が変わってきた結果だと思っています。
それでもあえてきっかけを挙げるなら、8年前に初めて、産休を願い出るスタッフが現れたこと。優秀なスタッフだったので、出産後も働きやすい環境をつくってあげたいと思いました。その時に、1年単位の変形労働制を取り入れたり、所定労働時間を変更するなど、就業規則を根本から整え直しました。弊社の営業時間と営業日数を維持しながら、労働基準法を順守したものに変更したのです。その成果が、今出てきているのかもしれません。社保完備なんて会社としては当たり前のことですが、美容業界はそこをおろそかにしてきました。当たり前の労働環境を提供できれば、出産後も女性たちが生き生きと働き続けられるのではないでしょうか。
- Q. これからやりたいことは?
-
A. 十人十色の要望に対して、応えられることを増やしていきたい。
同じ子育て中の女性スタッフでも、ディレクターとして頑張りたい人もいれば、無理せずほどよく働きたい人もいます。一人ひとり望んでいることが違うので、多くの意見に耳を傾けて、対応できることを増やしていきたい。現在、準社員の勤務時間や勤務日数は各人の希望に応じて決めていますが、これは第一歩。より柔軟性を高めて、ママスタッフたちが安心して活躍できる場をさらに広げていきたいと考えています。
Salon Data
tip・top吉祥寺店【チップタップきちじょうじてん】
- アクセス
- 吉祥寺駅公園口から徒歩3分
- 創業年
- 1986年
- 店舗数
- 17店舗
- 設備
- 8席 ※tip・top吉祥寺店
- スタッフ数
- 9名(うちスタイリスト5名、アシスタント4名)※tip・top吉祥寺店