車椅子や杖をご利用のお客さまがご来店される際のサロンでのお迎えの仕方は?今回は、上肢・下肢・体幹障がいがあるお客さまがサロンで具体的にお困りになっていることから、本当に喜ばれる配慮、明日から使えるコミュニケーションのコツまで、お客さまの声を交えて分かりやすく解説します。

「上肢・下肢・体幹障がい」とは?
「上肢・下肢・体幹障がい」と聞くと、少し難しく感じるかもしれません。
これは、手足や体幹の動きに、何らかの制限がある状態のことです。生まれつきの方もいれば、病気や事故がきっかけの方もいます。
そのため、「歩く、立ち上がる、座り続ける」「細かい手作業をする」といったことに、困難を感じる場合があります。

サロンにいらっしゃる際は、車椅子や杖、義足などの補装具を使っている方もいます。お店のちょっとした段差や、狭い通路を移動するのが大変だったり、同じ姿勢を保つのがつらかったりすることも。
まずは「そんなお困りごとがあるかもしれない」と、少しだけ想像してみることが、心のこもった接客への第一歩になります。
データで見る!~予約から会計まで~
上肢・下肢・体幹障がいがあるお客さまのニーズ
お客さまは、サロンで過ごす時間の中で、どんなことに「助かるな」「うれしいな」と感じるのでしょうか?#3でもご紹介した調査の中から、障がいがある方全体の平均値とも比べながら、上肢・下肢・体幹に障がいがあるお客さまならではのニーズを、予約からお会計までのシーン別に探っていきます。
《予約時》 来店前の「入れるかな?」という不安に応える

上肢・下肢・体幹障がいの方(n=108)、全体平均(n=442)/ともに複数回答
予約時で最も特徴的なのは、「店舗の設備が事前に明示されている」ことへのニーズの高さ。全体平均を22ポイント以上も上回る52.8%という数字からは、「お店に入れるだろうか」という来店前の不安を解消したい、という想いが伝わります。
《受付時》 スペースのゆとりが、心のゆとりにもつながる

上肢・下肢・体幹障がいの方(n=108)、全体平均(n=442)/ともに複数回答
受付では「安心できる待合スペース」のニーズが51.6%と、全体平均より高くなっています。車椅子などでの移動を考えると、物理的な空間のゆとりが、お客さまの心のゆとりにも直結するようです。
《カウンセリング時》 「決めつけない」姿勢が大切

上肢・下肢・体幹障がいの方(n=108)、全体平均(n=442)/ともに複数回答
カウンセリング時のニーズは全体的に平均より低いものの、その中で最も高いのは「希望を丁寧に聞き取ってくれる」(36.1%)です。障がいを理由に「できない」と決めつけず、対等な立場で一緒にスタイルを探していく姿勢が求められています。
《施術時》 身体的な負担を軽くするサポートが重要

上肢・下肢・体幹障がいの方(n=108)、全体平均(n=442)/ともに複数回答
施術中は、身体的な負担を軽くする配慮へのニーズが特に高まります。「クッションやタオルの用意」(46.3%)や「施術時間の調整」(31.5%)は全体平均を5ポイント以上も上回り、身体的な負担を軽くする具体的なサポートが安心感につながることがわかります。
《会計時》 スムーズな決済は嬉しい配慮の一つ

上肢・下肢・体幹障がいの方(n=108)、全体平均(n=442)/ともに複数回答
会計時のニーズも全体平均より低い傾向ですが、トップは「キャッシュレス決済に対応している」(54.6%)でした。財布から現金などを取り出す動作に困難がある方にとって、スマートフォンなどでスムーズに支払える決済方法は嬉しい配慮の一つです。
~上肢・下肢・体幹障がいがあるお客さま~
お客さまの声で知る「本当にうれしかった配慮」
実際に、お客さまが「ここのサロンに来てよかった!」と感じたエピソードをご紹介します。

下肢障がい
ホットペッパービューティーから、ゆっくり施術してもらえそうな個人サロンを探して予約しました。予約時に備考欄へ障がいのことを記載してドキドキしながら初回伺ったら、とても丁寧にカウンセリングしていただきました。姿勢がなるべく辛くならないように配慮いただいたり、移動をサポートしていただいたり、お会計も座ったままでと配慮いただいたり、初回からストレスなく過ごせました。 施術内容にも満足しており、それからはずっとこちらのヘアサロンにお世話になっています。

下肢障がい
障がいについて過剰に対応したりせず普通に接してくれる。 障がいが原因で難しい移動や動きがあるが、それらを把握して負担がない方法でやってくれる。
他にも、たくさんの「うれしかった!」というお声をいただきました。内容ごとに分類して、一気にご紹介します!
姿勢や体調への、さりげない気遣い
- 同じ姿勢でいるのが辛いと伝えたら、クッションや首に当てるタオルを貸してくれました。(40代・女性・下肢障がい)
- 長い施術中にでもトイレに行きやすいように、必ず『トイレ大丈夫ですか?』と度々声掛けしてくれるところがすごくうれしい。
(70歳以上・女性・体幹障がい) - 自分が嬉しかった事を話した時に一緒に喜んでくれた! 毎回、体調を気にしてくれる。
(40代・女性・上肢障がい)
移動や動作を、そっとサポート
- あらかじめ近い駐車場を教えてくれた。(60代・男性・下肢障がい)
- 現在行ってる理容室は 自動ドアではないが 外の車椅子に気付いてくれて ドアを開けてくれるので いつも安心して利用出来る。
(50代・男性・上肢障がい) - 車椅子のままカット、わからないように車椅子にもケープをかけてくれた。
(60代・女性・下肢障がい)
「急かさない」が生む、心のゆとり
- 待ってる人が多くてもゆっくりでいいよって言ってくれた事。(20代・男性・上肢障がい)
- 店内の移動や支払い時には自分に合わせてゆっくりしてもらえる。慌てないように気を遣ってくれる。(50代・女性・下肢障がい)
いかがでしたか。どれも、決して特別な機材や設備が必要な「すごいこと」ではないのかもしれません。ほんの少しの想像力と「お客さまにリラックスしてほしい」という温かい気持ちそのものが大切なのかもしれません。























