「障がいがあるお客さまとの向き合い方」を学ぶ連載企画。今回のテーマは、外見からは分かりにくい「内部障がい」です。
お客さまの外見からは分かりにくい疲れやすさや体調面の不安に、サロンとしてどう寄り添えるのか。データと実例から、お客さまの安心につながる接客のヒントを探ります。
美容の未来のために、学びと調査・研究を

「障がいがあるお客さまとの向き合い方」を学ぶ連載企画。今回のテーマは、外見からは分かりにくい「内部障がい」です。
お客さまの外見からは分かりにくい疲れやすさや体調面の不安に、サロンとしてどう寄り添えるのか。データと実例から、お客さまの安心につながる接客のヒントを探ります。
「内部障がい」と聞いても、ピンとこない方もいらっしゃるかもしれません。
ひと言でいうと、心臓や呼吸器、腎臓といった、からだの内部にある器官の機能が大きく低下している状態のことです。対象となる臓器はさまざまで「呼吸器・心臓・肝臓・腎臓・小腸・膀胱・直腸・免疫機能」などがあります。
ペースメーカーを体内に埋め込んでいる方や、人工膀胱・人工肛門を造設した「オストメイト」と呼ばれる方もいらっしゃいます。
困りごとは一人ひとり異なりますが、多くの方に共通するのが、体力的に疲れやすく、活動に制限が生まれることです。

そして、なにより大きな特徴が、外見からは障がいがあることが分かりにくいということ。そのため、周りの方に気づいてもらえず、お困りの状況をなかなか理解してもらえない、という悩みを抱えている場合も少なくありません。
だからこそ、美容サロンのスタッフの皆さまが少しでも知識を持っておくことが、お客さまの安心につながる第一歩になります。
内部障がいのあるお客さまが、サロンのどんなシーンで、どのような配慮を求めているのでしょうか。#3でご紹介した調査をもとに、予約からお会計まで、5つのシーン別に見ていきましょう。障がいのある方全体の平均と比較しながら見ていくと、特に大切にしたいポイントが浮かび上がってきました。

内部障がいの方(n=47)、全体平均(n=442)/ともに複数回答
1位は「障がいや体調に関する要望を事前に伝えたり、記入できる欄がある」。事前に体調面の不安(例:「長時間同じ姿勢でいるのが難しい」など)を伝えられることで、お客さまは安心して来店できます。予約フォームに自由記述欄を設けるなどの工夫が喜ばれます。

内部障がいの方(n=47)、全体平均(n=442)/ともに複数回答
1位は「安心できる待合スペースがある」(55.3%)で、内部障がいのあるお客さまが特に重視していることが分かります。来店までの移動で、すでに体力を消耗している場合も。「どうぞ、おかけになってお待ちください」の一言と共に、すぐに座れる椅子へご案内するだけで、心遣いが伝わります。

内部障がいの方(n=47)、全体平均(n=442)/ともに複数回答
1位には「無理に話を続けず、適度な距離感で対応してくれる」がランクイン。会話が続くと、知らず知らずのうちに心身の負担になることも。お客さまの様子を見ながら、沈黙も「心地よい時間」と捉え、ゆったりとしたコミュニケーションを心がけることが、かえって信頼感に繋がります。

内部障がいの方(n=47)、全体平均(n=442)/ともに複数回答
注目したいのは、施術中の配慮です。1位の「クッションの用意」や3位の「途中の休憩」など、身体的な負担を軽くする項目が、全体の平均より高い結果となりました。長時間同じ体勢でいることが、大きな負担になり得るのです。同率3位にも「長時間の施術を考慮して、途中で休憩をはさんでくれる」、「体調や疲れに応じて、施術時間を短縮・調整してくれる」がランクイン。
「つらい体勢ではないですか?」「少し休憩をはさみましょうか?」など、お声がけをしながら進めることで、お客さまは安心して施術を受けられます。

内部障がいの方(n=47)、全体平均(n=442)/ともに複数回答
1位は「支払い時に急がせず、待ってくれる」(55.3%)がランクイン。お財布からお金を出したり、スマートフォンを操作したり、一つひとつの動作に少し時間が必要な場合もあります。急かさず、ゆっくり待つ姿勢そのものが、温かい配慮になります。
実際に「うれしかった」と感じたお客さまの声には、私たちが明日から実践できるヒントがたくさん詰まっています。
▶体調や身体への細やかな気遣い

▶個別の要望や気持ちへの寄り添い

▶誰もが使いやすい環境づくり
などの声があがっています。特別な設備がなくても、ほんの少しの想像力と行動で、お客さまのサロン体験は格段に心地よいものになります。
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