サロンオーナー必見!

人を雇ったら知っておきたい
労務のキホン

スタッフを雇ってサロンを経営していく上で必要な、労務関連の制度や法律の基本知識について解説していきます。

vol.4

〜「社会保障」のキホンを知る編〜

「シャホ(社会保障)」のこと、ちゃんと知っている?

人を雇用するときに、経営者としての責任が問われやすいのに、サロンオーナーが詳細を知らないケースが多いのが社会保障のこと。今回からは、マイナンバー制度が実施された以上、知らないでは済まされない社会保障について解説します。
※青文字・下線が付いた箇所をクリックすると、その言葉の説明が見られます。

連載ショートストーリー

「サロンRの日常」4
  • 須多井 リスオ

    須多井 リスオ(スタイ リスオ)

    アシスタントを2年経験し、スタイリストデビューをしたばかりの23歳。「サロンR」勤務。デビューして意気揚々。オーナーも店も基本大好きで、サロンとともに成長したいとはりきっている。
  • 小尾奈 サロヒコ

    小尾奈 サロヒコ(オオナ サロヒコ)

    「サロンR」オーナー。スタイリストとして7年間別のサロンに勤務した後独立。「サロンR」を開業して3年目の33歳。スタッフを大事にしてサロンを成長させたいが、経営の知識はない。
  • 赤出 ミーコ

    赤出 ミーコ(アカデ ミーコ)

    「サロンR」に勤務するスタイリスト歴5年の須多井リスオの先輩。27歳。指名が多く、新婚で公私ともに絶好調。同僚からの信頼も厚いが、結婚を機に子どもがほしいと考え始めている。
  • 秋田センセイ

    秋田センセイ

    社会保険労務士。多数のサロンの労務管理相談を受けている、この企画の監修を担当。美容業界を他業界に負けないくらい、オーナー、スタッフともに働きやすい環境にしたいと考えている。
  • ビューティー

    ビューティー

    秋田センセイの名アシスタントの猫。先生の言いたいことを伝言するために、ここそこに現れるこの企画の陰のキーマン。サロンオーナーたちがいい経営者になることを心から願っている。
オーナーと一緒に社会保障について勉強しましょう
POINT1

人を雇ったら入る義務のある社会保障は、全部で4種類。

種類を覚えてね!

 みなさんも「社会保険」や「雇用保険」などの言葉を聞いたことがあると思います。これらは人が会社などの組織で働くときに加入する保険のことですが、それを専門で扱う仕事をしていなければ、種類や内容について正しく認識している人は一般企業の会社員でも多くはいないようです。
 しかし、サロンの経営者ともなればそうは言っていられません。まずは種類と名称について正しく知っておきましょう。
 労務における社会保障は、大きく分けて2つ、さらに2つずつ分けて全部で4つの保険のことを指します。

【社会保障に含まれる保険】
労働保険労災保険雇用保険の2つがあり、その総称のことです。
社会保険健康保険厚生年金保険の2つがあり、その総称のことです。

 「社会保障」全部のことを「社会保険」と呼んでいる人もいますが、正しくは上記のように分かれています。まずはこの用語を今日から覚えてください。

必ず全部入らないといけないの?

 サロンを法人にしている場合、「社会保険」はオーナがひとりで経営していても加入しなければなりません。「労働保険」はスタッフを雇用した場合に雇用条件により加入の必要があります。法人でなく個人事業主として経営している場合でも、「労働保険」は加入しなければなりませんが、全てのスタッフについて入るかどうかは、保険の種類やスタッフの雇用条件などによって異なります。事項で違いについて説明します。

POINT2

入る義務のある保険と、任意の保険がある。

違いも知っておきましょう

 4つの保険について、必ず入る義務のあるものと、任意のものについて解説します。

労働保険 労災保険

オーナーが法人であっても個人事業主であっても、人をひとりでも、1日でも雇ったら必ず全員、加入しなければなりません。スタッフが正社員の場合はもちろん、パートでもアルバイトでも同様です。

雇用保険

オーナーが法人であっても個人事業主であっても、人をひとりでも雇ったら加入しなければなりません。

しかし、雇っているスタッフを全員加入させるのではなく、「週20時間以上、かつ31日以上働き続ける」スタッフが適用されます。つまりパートでもバイトでもこの条件に当てはまれば、雇用保険に加入させなければなりません。ただし、昼間の学校に通う学生や、日雇いで毎日その都度給与を支払うスタッフなどは適用外です。

社会保険 健康保険

サロンが法人登録されている場合は、人を雇わずオーナーがひとりでサロンを経営していても加入しなければなりません。

一方、オーナーが個人事業主である場合は健康保険の加入は任意となります。通常は個人事業主でも5人以上雇っている場合は加入が義務づけされていますが、特定の業種にはその義務はなく、美容業は適用事業所に該当しないため任意加入となります。任意なので、オーナーが魅力的なサロンづくりを目指して加入したい場合はもちろん加入できます。

個人事業主のオーナーが健康保険の加入をしない場合は、スタッフたちに個人で国民健康保険に加入してもらうことになります。

厚生年金保険

健康保険と同様で、オーナーが法人である場合は、人を雇わずオーナーがひとりでサロンを経営していても加入しなければならず、オーナーが個人事業主である場合はスタッフの厚生年金保険の加入は任意となります。

個人事業主のオーナーが厚生年金保険の加入をしない場合は、スタッフたちに個人で国民年金を納めてもらうことになります。

国民年金は20歳以上の国民全員に義務づけられた制度で、サロンで厚生年金保険に加入した場合、納付はスタッフ分もまとめてサロンが行うことになります。

 
 各保険の目的や事業主負担額の目安などの詳細については、次回以降で詳しく解説していきます。

義務のある保険に入らないとどうなる?

 法人なのにいずれかの保険に入っていなかったり、個人事業主でも労働保険に入っていない場合、行政からの指導が入る場合があります。特に今年(2016年)からはマイナンバー制度が導入され、税分野と社会保障分野のデータがつながりを持つため、給与を支払っているスタッフが社会保障の保険に入っていないことがすぐに把握できると考えられます。健全な経営のために、適切に加入するようにしましょう。

今回のポイント

社会保障の整備は経営のキホンとも言えます。保険料の事業主負担が理由で加入できていない場合は、サロン経営の仕方そのものを検討する必要もあるということ。マイナンバー制度の導入で未加入のサロンは岐路に立つことになります。美容業界全体を魅力的な業界にするためにも、みなさんのサロンから整備を始めましょう!

次号は「労災保険」編です。

秋田繁樹さん

監修

特定社会保険労務士

秋田繁樹さん

プロフィール:

社会保険労務士法人 秋田国際人事総研代表。東京都社会保険労務士会所属。国内大手生命保険会社、大手企業のシステムインテグレーターなどを経て、独立開業。人事労務のスペシャリストとして、多店舗展開の美容室の労務管理や就業規則・社内規定などにも詳しく、多数の美容室の指導相談に当たっている。http://www.akita-sr.com/

編集・取材・文
長島佳子
イラスト
木村𠮷見

※掲載されている情報は2016年01月12日現在のものです

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