訪問先に到着。指定場所に車を停め、希望のメニューに必要な道具を降ろします。「個人宅の場合、お風呂場や玄関先で施術させていただく場合もあります。施術時などの邪魔にならないよう、必要最低限の道具をコンパクトにまとめて持参することがオススメです」と園田さん。ご家族にご挨拶後、持参したスリッパをはき、施術場所となるお客さまのお部屋までご案内いただきます。
※必要な道具一式は、vol.2でご紹介しています。
学ぶ。つながる。発信する。美容の未来を創る場所。
訪問美容を始めたいオーナーの皆様に贈る全13シリーズ。
実例などを交えながら、訪問美容経営のために必要なノウハウをわかりやすくご紹介します。
vol.3
訪問先のお宅に到着し、午後からの仕事がスタート。ご挨拶してお客さまが待つお部屋へ移動し、施術スペースを作るべく準備します。月に1度のペースで訪問美容を利用される川村さん一家とはとても仲良し。和やかな雰囲気の中、施術は進んでいきました。到着から退出までの約1時間の様子をご紹介します!
ご協力いただいたスタイリスト
園田敦子さん
44歳。スタイリスト歴21年、訪問美容歴10年。長男の出産を機にサロンを退職、子育てが落ち着いた2年後の34歳のときにNPO法人ふくりび所属の訪問美容師に。36歳のときに次男を出産、半年後に復職。現在、週4日&息子さんたちが小学生に通う時間帯に働いています。
訪問先に到着。指定場所に車を停め、希望のメニューに必要な道具を降ろします。「個人宅の場合、お風呂場や玄関先で施術させていただく場合もあります。施術時などの邪魔にならないよう、必要最低限の道具をコンパクトにまとめて持参することがオススメです」と園田さん。ご家族にご挨拶後、持参したスリッパをはき、施術場所となるお客さまのお部屋までご案内いただきます。
※必要な道具一式は、vol.2でご紹介しています。
お部屋へ案内されたら、施術の準備を行います。切った髪の毛などで床を汚さないよう、レジャーシートを広げ、お借りした椅子を設置。持参したキャリーカートと鏡を使って、ドレッサーを作ります。施術スペースは、畳約2畳分あればOK。施設時同様、ハサミやレザーなどの道具類は、美容師がしっかり管理します。
借りられるものであれば、現場でご家族や施設スタッフに謝罪してお借りします。借りられない物でどうしても必要なものの場合は、サロンに連絡して届けてもらうか、自身で取りに戻りましょう。現場を離れる際は、付き添いの方に一声掛けることを忘れずに。
お客さまの川村ひさ子さんは、今回カットがご希望。医療用ウィッグからはみ出る襟足が気になっているご様子でした。実際にトップピースを確認しながら、ご本人&ご家族と一緒に髪の長さを決定。同時に、体の調子や地肌、毛髪の状態もチェックします。
訪問美容の予約にキャンセルはつきもの。現場で突然、キャンセルされたら、必ずご家族や施設スタッフに確認を取り、無理強いはせず、出直しましょう。体調不良が理由の場合は、回復後に気軽に予約していただけるよう、メッセージや連絡先を添えた名刺を置いてくることがオススメです。
ご家族に手伝っていただきながらお客さまを椅子へご案内。補聴器をはずしていただき、首元にタオルを巻き、カットクロスを掛けて施術を始めます。「メガネや杖などを預かるときは、お客さまの見える場所に丁寧に保管。置く場所を必ずお伝えするようにしています」と園田さん。動作ごとに声を掛けながら、手早く丁寧に作業を進めます。
今回の取材にご協力いただいた「ふくりび」のメニュー&料金は以下のとおり。
・カット/2500円
・ヘアカラー/3000円
・パーマ/4000円
・ポイントパーマ/2500円
・シャンプー/1000円
・出張料金/1500円(近隣エリア片道1時間以内、それ以上の場合は別途相談)
※消費税別
「よかった。ばっちり!」とひさ子さん。「動くことが困難な義母を美容室に連れて行くのは大変だったので、来てもらえるようになって本当に助かっています。義母はとってもおしゃれ好き。すっきりきれいになって喜んでいる姿が見られて幸せです」と、享子さんもうれしそうに語ってくれました。
なお、享子さんは福祉センターにあったパンフレットで「ふくりび」の訪問美容を知り、昨年から月1度のペースでお願いするようになったそう。
持参したローラー式粘着クリーナーやお借りした掃除機などを使って、部屋を念入りに掃除。床だけでなく、ベッドの上や洋服にも髪の毛が落ちていないか確認します。施術で出たゴミはすべて持ち帰ります。
後片付けを終えたら、ご家族にお声掛けして会計を。この日、享子さんは、日進市から発行される「訪問理美容券(通称:理美容チケット)で代金の一部をお支払いされていました。施術代金を受け取ったら、領収書を発行。次回の予約希望をお聞きします。その後、丁寧にご挨拶して退出。退出後は受け取った代金を事務所へ届け、園田さんの一日が終了!
自宅で生活している要介護高齢者を対象に、「理美容チケット」を発行し、出張費用や理美容費用を補助している市町村があります。ただし、制度の内容や金額は自治体ごとでさまざま。訪問先の地域が該当するか、お客さまはチケット発行の条件に当てはまるかなど、気になる点は市町村の担当窓口に問い合わせましょう。
個人宅のお客さまに訪問美容をご利用いただく場合は、事前にFAXなどで申し込んでもらうようにするとスムーズです。
「『ありがとう』という言葉がこんなにうれしい言葉だということを、訪問美容で初めて知りました。学ぶことも多く、やりがいもいっぱい。訪問美容師になって本当によかったです」と園田さん。お客さまや付き添いの方々、そして美容師。「訪問美容」はお客さま本人だけでなく、その周りの人たちまで笑顔にできる、素敵なサービスです。
次号から、経営・マネジメント編がスタート。訪問美容を始めるために必要なノウハウをご紹介します!
「誰もがその人らしく美しく過ごせる社会の実現」を目指し、全国の「訪問理美容サービス」の質の向上、理美容師の育成や高齢者・介護者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)向上などに尽力する同協会を2007年に設立、理事長に就任。2008年社会貢献支援財団社会貢献賞受賞。著書に、「技術からマネジメントまで 訪問理美容スタートBOOK(女性モード社)」など。
同協会の事務局長。ヘルパー2級取得、美容師国家資格取得。2009年内閣府青年社会活動コアリーダー育成プログラム英国派遣団員。2010年東アジア地域国際シンポジウム招聘者。2012年内閣府女性のチャレンジ賞受賞。2013年シアトルiLeap SIFJ招聘者、第27回人間力大賞厚生労働大臣奨励賞受賞。2012年より愛知学院大学経営学部非常勤講師。
参考文献
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