女性が活躍するサロン
女性スタッフが辞めない
サロンの秘訣
結婚・出産を経ても女性スタッフが長く活躍している、さまざまなサロンの取り組みや職場づくりを紹介していきます。
vol.99週1日、1日3時間~勤務OK。無料講習あり。
休眠美容師の活躍を促す復帰環境とは?
ChokiPeta
東京都板橋区
株式会社スタイルデザイナーが運営する「ChokiPeta」は、カット&カラー専門のヘアメンテナンスサロン。予約不要で思い立ったらすぐ行ける手軽さとリーズナブルな料金設定が、主婦層の人気を集めています。24店舗合わせて208名いるスタッフのうち、9割が女性。休眠美容師を積極的に採用しており、スタッフの年齢は40代~60代が中心。中学生以下の子どもを育てるママスタッフも60名在籍しています。「ゆくゆくは70代まで、一生涯美容師として活躍してもらいたい」と語るのは、代表取締役社長の置塩圭太さん。ブランクのあるママ美容師たちを復帰に導いた秘策と、その実績について教えていただきました。
1取り組み
ブランクがあっても復帰しやすい、
カットとカラーに特化したメニュー。
どんな取り組み?
「ChokiPeta」はカット&カラー専門店として、2011年7月に第1号店がオープン。のびてきた毛先のカットや白髪のリタッチなど、メンテナンスを主体にしたサービスを提供し、デザイン系サロンとは一線を画している。「手軽な料金でキレイなヘアスタイルをキープできる」と、特に40~60代の主婦層のお客さまからの支持が厚い。
背景とメリットは?
美容業界は流行がめまぐるしく変化する。特にパーマやストレートパーマはトレンドの変化が著しく、休眠美容師にとって高いハードルに。「その不安を払拭するべく、カットとカラーにメニューを限定しました。のびたところを切る、白髪染めをする、という作業ならば、ブランクがあってもすぐに勘が戻りますから」と置塩さん。さらに、現金管理によるパートスタッフの精神的負担を軽減するために、自動券売機を導入。中高年スタッフの身体的負担を考えて、オートシャンプーも取り入れた。当時はまだ珍しい営業形態だったこともあり、「ChokiPeta」第1号店と第2号店の求人には、それぞれ50人を超える応募が集まったという。
2取り組み
ブランクフォローとスキルアップのための、技術サポート講習。
どんな取り組み?
月に2~3回、希望者を対象にカットとカラーの無料講習を実施。子育て中のスタッフも参加しやすい平日の日中に開催しており、会場までの交通費は会社が負担している。時間は10時~13時と14時~18時の二部制。講習1回につき30名ほどが集まり、午前の部と午後の部に通しで参加するスタッフも多い。
背景とメリットは?
ブランクが長くて勘が戻りにくいスタッフや、スキルアップに前向きなスタッフから要望を受けて始めた取り組み。専属コーチから指導を受けて改めて技術を磨くことで、スタッフたちは自信を持って店に立てるように。また従業員の技術が底上げされていくことは、「ChokiPeta」のブランドイメージにも好影響を及ぼす。
「『ChokiPeta』の採用職種は、スタイリストとカラーリストの2種類です。ブランクがあってカット技術に自信のない方には、白髪染めのみを担当するカラーリストとして活躍してもらっています。中にはカラーリストで入社した後に、スタイリストへの復帰を目指すスタッフも。皆さん積極的に技術サポート講習に参加して、ステップアップを実現しています」(置塩さん)。
3取り組み
スタッフのライフスタイルを尊重した
フレキシブルな勤務体制。
どんな取り組み?
中学生以下の子どもを持つママスタッフは現在60名おり、全員がパートで勤務している。パートは毎月希望日を提出する自由シフト制で、出勤は週1日、1日3時間~OK。扶養控除の範囲内で働くスタッフもいれば、フルタイムで勤務するスタッフもいる。子どもの発熱などで急な欠勤が起きた場合には、本部スタッフが調整。店舗内で代理のスタッフが見つからない場合は、他店舗に応援を頼むなどして回している。
背景とメリットは?
「ChokiPeta」で積極的に採用している休眠美容師のほとんどが、家事や育児を担う主婦たちだ。その人たちがそれぞれの生活スケジュールに合わせて働けるようにと、自由シフト制を採用した。「毎月のシフト調整はなかなか大変です。そこで近場からスタッフを補充できるように、同じ路線の近隣に分店を出すなどの対策をとっています」(置塩さん)。
またパートで入社したスタッフでも、本人の希望次第で正社員になることが可能。「『ChokiPeta』ではステップアップ方式をとっています。カラーリストで入ってその後、スタイリストになり、チーフ、店長に昇格し、さらにはエリアマネージャーも目指せる。頑張れば頑張った分だけポジションが上がって、お給料も上がる。それがスタッフたちのモチベーションになっていると思います」(置塩さん)。
4取り組み
店全体の生産性を評価する制度で
助け合いの風土を醸成。
どんな取り組み?
生産性を上げるために、全店舗で共通の作業工程表を作成。ひとりのお客さまに対して、カウンセリングで何分、カットで何分、カラーで何分という細かな目標時間を掲げ、それを意識して動くように呼びかけている。その上で、店全体の人時生産性(従業員1人の1時間当たりの粗利益)を評価基準に設定。売上高の上昇に応じて、その店のスタッフ全員の時給がアップする制度を導入した。
背景とメリットは?
「最初はスタッフ一人ひとりの人時生産性を計算していましたが、競争に乗り遅れてしまう人もいて、いい空気にはなりませんでした。そこで店全体の生産性を評価する方法に変えたところ、チームワークが格段によくなったのです。日々家事や育児をこなしているパートスタッフさんは、フットワークが抜群。時間の使い方が非常に上手いんです。店全体の人時生産性を見るようにしたことで、協調性が増して、好循環が生まれました」と置塩さん。
助け合いの風土が醸成されたことで、各作業をスタッフ間で分担する動きも出てきた。ひとりのお客さまを最後まで担当しなくてもよいので、退勤時間をオーバーすることがなくなる。子どものお迎えなど、退社後も忙しいママスタッフに特に喜ばれているようだ。
代表取締役社長インタビュー
- Q. 休眠美容師の積極的な採用を始めたきっかけは?
-
A. 人材不足が問題になる中、多数いる休眠美容師さんにぜひ活躍してほしいと考えたからです。
美容学生の人数が減って、美容業界ではここ10数年ほど求人難が続いています。しかし詳しく調べてみると、美容師免許を持ちながらも働けていない休眠美容師さんが、全国に約75万人もいるのです。その方たちの働ける場所がないことが、求人難につながっていると考えました。
結婚・出産で一時家庭に入った美容師さんは、なかなか復帰がしづらくなります。一番の問題は年齢のギャップです。美容師の平均年齢は29.4歳ですが、子育てがひと段落した休眠美容師さんは30代後半~40代くらい。自分と歳の離れた若いスタッフばかりの現場には戻りにくいものです。お客さまの層もスタッフの年齢層とイコールになっている店がほとんどなので、より尻込みしてしまう。そこで私たちは、休眠美容師さんの働きやすい環境を整える取り組みを始めたのです。その第一歩が、主婦層をターゲットにしたカット&カラー専門のブランド「ChokiPeta」のオープンでした。
- Q. 取り組みを進めてきて、どんな成果がありましたか?
-
A. グループ内の別サロンでも、休眠美容師の雇用を前向きに考えるようになりました。
当社はデザイナーズサロンやファミリーサロンなども展開していますが、「休眠美容師さんをパートとして積極的に採用して行こう」と決めた当初は、「ChokiPeta」以外のサロンにその方針を持ちこむことは難しいと思っていました。「40代~60代のパートの美容師さんたちが、本当に現場で実績を残せるのか?」という不安があったからです。しかし、それから6年で「ChokiPeta」は24店舗に増え、1店舗につき1カ月平均1100人ほどのお客さまが来店される人気サロンになりました。その中心で頑張ってくれているのが、40代~60代のパート美容師さんたちです。この成果を見て、「デザイナーズサロンやファミリーサロンにも、休眠美容師さんを採用して行こう」という動きが新たに生まれています。
また将来的には、スタッフの年齢に合わせて、グループ内のサロンを異動できるような取り組みができればと。例えば50歳くらいでデザイナーズサロンを卒業して「ChokiPeta」へ異動し、カットとカラーを専門にしながら70代くらいまで活躍していただくこともできるように。「一生涯美容師を続けてほしい」という思いがありますので、それが実現できる環境づくりに力を注いでいきたいと思います。
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