｜第２章｜「業界マップ」の作成で、ポジショニングを明確に

　パリゴという業態の手応えを感じ、東京への進出を考え始めたのは2008年頃です。しかしその挑戦へ乗り出す前に、集客力のない二等立地でのビジネス経験しか持っていない私たちは、一等立地でのオペレーションを学ぶ必要がありました。そこで2009年3月、「岡山一番街」というJR西日本が展開している駅ビルに出店しました。数々の大手セレクトショップが出店している激戦地で、彼らと私たちの感覚の違いや実力の差がどれくらいあるのかを肌で確めたかったのです。

　いざオープンしてみると、大手セレクトショップの100坪クラスの店舗に対して、39坪の「パリゴ岡山店」が互角以上に対抗し得ることが分かりました。JR駅ビルでのこの実績によって、「パリゴは販売力がある」「接客力が高い」「品揃えが良い」という評価を得ることができ、同じJRグループであるルミネ有楽町への出店の道が開けたのです。

　ところで、1991年と2008年の比較で現在のアパレル市況を簡単に紹介しますと、ショッピングセンター（SC）の売上げは7割増・百貨店は6割減と、百貨店の威信が失われつつある一方で、SCが大きく伸びています。そして、全国に4000以上存在しているSCの中でも、複数店がトップ10入りしている特異な商業施設が、ルミネなのです。

　ファッション業界において無敵のモンスターSCとも言えるルミネで、私たちは一体どういう業態でやっていけばうまくいくのだろうか。その問題を整理し、パリゴのポジショニングを見つめ直すために作成したのが、“ファション業界マップ”でした。

　例えば、ユナイテッドアローズ、シップス、アーバンリサーチなどは「小売店進化型セレクトショップ」。もともと小売店だったものが、セレクトショップとして大きく進化したタイプです。トゥモローランド、ベイクルーズなど、大手セレクトショップのOEM（外部製造委託）メーカーが独自の商品を作って販売するようになったタイプが「メーカー進化型セレクトショップ」。オペーク、アクアガールといったブランドは、百貨店系メーカーが独自にやっているセレクトショップの形態である「高感度バイイングSPA」に位置しています。

　ローリーズファームやアースミュージック＆エコロジーに代表されるのが「SPA業態（製造小売業態）」で、1つのメーカーが製造から小売まで一貫して行っています。そして、ハイクラスなインポートセレクトにオリジナリティを加えているタイプに、バーニーズ ニューヨーク、ドゥーズィーエム クラス、エストネーションなどが挙げられます。

　パリゴが狙っているのは、このハイクラスインポート型と小売店進化型のちょうど中間の業態で、両者のおいしいところを備えたポジションに目標を定めたのです。私たちの会社が着実に売上げを伸ばし続けることができた背景には、この明確なポジショニングをもとに、新規開店や既存店強化を推し進めたことが影響したのではないかと思っています。