ヘアサロン領域
2012.12.28
名古屋と青山を拠点に、全国から通ってくるファンを持つMISS ESSENCEのMAYUMIさん。53歳でばりばりのトッププレイヤー。月400人以上の顧客を担当し、再来率は100%に限りなく近いそのサロンワークは、業界でも話題の的です。「バツイチで28歳の息子ありというプロフィールが、いちばんみなさんを勇気づけるのでは?」と、女性美容師の活躍を心から願っているのもMAYUMIさん。そんなMAYUMIさんに、今日は、ご自身が考えるヘアデザイン、ヘアサロンについてお話を伺いました。
PROFILE
MAYUMI
有限会社 美容室ミスエッセンス代表。名古屋 ・ 東京青山の 2 拠点でサロンワークを行う。ツヤカット・特許取得「頭蓋骨修正カット」を考案し、手グシでブローするだけでキマるヘアスタイルを得意とし、美しい女性を世に送り出し続けている。MAYUMI単独サロンワーク売上は年間1億円、月400人以上の顧客を担当し、大人の女性から圧倒的な信頼を得ており、リピート率95%以上を保っている。 1998年TV東京 『TVチャンピオン全国美容選手権』の番組に2度優勝以来、各TV業界、一般誌、業界誌に注目を浴び、多数出演。 全国ヴィダルサスーン杯、 JHA等数々のカットコンテストに受賞。また、ファッションにも精通しており、トータルアドバイスを求めて通う顧客が、国内外問わず多い。2000年よりセミナー講習活動を精力的に行い、MAYUMIism (マユミイズム) を 継承し、年間50本以上をこなし続け、数十人から500人以上の大きなセミナーを日本全国で行っている。著書に、『綺麗をかなえる法則』(髪書房)。 「“バツいち子持ち”が、いちばんのプロフィール!」とご本人。
|第5章|9500円のカット料金で20年間。 技術とデザインの価値を知ってほしい
野嶋 先ほど「使命」という言葉をお聞きしましたが、MAYUMIさんのお話を伺っていると、使命感を強く持って美容に向き合っていらっしゃると感じます。そのモチベーションはどこからくるのでしょうか。
MAYUMI これは誤解を生じることを百も承知でお話するのですが、私が講習でいつもお話することはカット料金をもっと上げていってほしいということです。
それは、目先のお金がほしいというわけではなくてね。デザイナーだというのに、カットの料金は低すぎると思うのです。エステの客単価にも負け、ネイルにもさっさと負け、アイラッシュにも負け、どこまで負ける?と。
一人のデザイナーが一人前になるには、5、6年かかります。それなのに、ネイルやアイラッシュよりも低いカット料金。それを承知で、経営者は長い年月がかかる教育にお金をつぎ込むわけですよね。悲しい業界です。
私は24年前からこのことと戦っているわけですよ。最初は4,500円のカット料金からスタートしてきて、3年間で9,500円にいたしました。これも私の表現ですね。自分なりの表現です。
野嶋 業界にとっても本当に大事なことですね。これから日本でカット料金を上げていくのは大変なことだと思うんですけれど。
MAYUMI そうですね。私の場合はお客様に「このコンテストに出ます。このコンテストで私がいい結果だったら、カット料金を4,500円から6,500円にしたいと思っています。その半年後には、こんなコンテストに出たいと思っています。そのつもりでおりますので、よろしくお願いします!」と言い続けてきました。もちろん「ヤダ!」っておっしゃる方もいます。そういう方には「ごめんなさい!」って。「その場合は部下が担当させていただきますので紹介します!」とお話して。
とにかく「私はカット料金を上げたいんです! それだけの価値をわかってください! 努力しています!」と、お客様には伝え続けていました。そして3年間で9,500円まであげてストップしたんです。それが20年前。それから20年間はずっと9,500円です。
それから、20年経ったときにはボーダーラインを引こうと最初から計画していました。20年の間に来てくださったお客様たちは永遠に9,500円でいこう、と。そして20年たってから以降の新しいお客様たちは1万5,000円にしようという計画です。その20年の節目が4年前でした。
1万5000円のカット料金をちょうだいするには、技術だけではなく、それにふさわしい環境が要る、空気感が要る、と思ったんです。ですから名古屋はこの物件に移店しました。本当はこのスタッフ数(15人)でこの100坪のお店は無謀ですね(笑)。相当余裕のあるスペース感覚で作っていますので。
このお店になってからのお客様は1万5,000円。それまでのお客様は9,500円、そして、そのお客様の紹介の方も、9,500円です。「私、先日カットの本も出させていただきましたし、そこに1万5,000円の価値を認めてください」という想いです。もちろん1万5,000円で高いと思ったらいらっしゃいません。でも、ふたを開けてみると、結局1万5,000円でいらっしゃる方も多いですね。もちろんリピートも。
野嶋 ご自身が確固たるブランドになっているからこそ、このやり方なんでしょうね。
MAYUMI そうだと思います。そして、これからはもっとうちの子たちを育てていかなくてはいけないですね。うちの子たちも戦っています。私がいつも「自分で自分の価値を上げてちょうだい」って言っていますから。書籍ではMAYUMI流ライオンの子育てって書かれたんですよ(笑)。ひどいですよね(笑)。
うちは月間200万円の売り上げを上げたとき、強制的にカット料金の5,500円から7,500円にあがるんです。でも、それは何も辛くはないんですよ。例えば、3年で200万円になりました。3年間に来てくださった5,500円のお客様は、ずーっと5,500円のままなんです。そこから新規の人たちが7,500円になる。
私の理想は9,500円のお客様を店長とチーフに譲っていく。どうですか?って。私だと9,500円のお客様が7,500円になると、2,000円安くなるじゃないですか。嬉しくないですか? だから推薦しています。私がいないときも、「いいよ、MAYUMIさんじゃなくても」という人をどんどん増やして。そのことでうちの売り上げは2,000円分下がるかもしれないけど、それはどうにかなるから。
さらに、その店長とチーフは、私から9,500円のお客様をもらっているわけですから下の子たちに顧客を分け与えられますよね。そして、部下はそのお客様を5,500円でカットするんです。
これは理想ですよ。簡単にできるものじゃないし、徐々に、です。
野嶋 極めて現実的で、人間的なやり方ですよね。
MAYUMI そうかもしれませんね。
野嶋 それぞれが個人で立っていらっしゃっていて、目の前にお客様がいて、関係があって。周りに若いメンバーがいる中で、現実的に価格を上げていくのがすごくわかりやすい。
MAYUMI 自分の技術の鍛錬が、カット料金を上げるための連鎖になっていくわけです。
野嶋 何となく今のお話でわかりました。このお店の規模がどうして必要なのかとか、こういう形で経営されている理由とか。
MAYUMI それはもう、大変ですけれど(笑)。頑張っています。
野嶋 今日はとても素敵なお話を伺いました。外側から見ているだけではわからないこともたくさんお聞きできました。大ドラマを伺っているような1時間でした。ありがとうございました。
MAYUMI 本当ですか(笑)! ありがとうございます。そんな風に言っていただけて光栄です。
(写真/中野愛子 文/増田ゆみ)