｜第３章｜問うのは「上手いか？」ではなく「おもしろいか？」

野嶋　若い人たちが興味を持つサロン作りという部分をもう少し具体的に伺えますか。

隈本　うちの場合は気品や質というよりは、おもしろみがあるサロンでありたいなと思っています。クオリティじゃなくておもしろみ。だから写真を撮る時でも、上手な写真を撮ろうっていうんじゃなくて、おもしろい写真を撮らなきゃいけないと考えています。言葉の表現にもおもしろさが必要だと思うし、スタッフに対しても「あの人上手い！」というよりは、「あの人おもしろい！」「おもしろい仕事をするなぁ」って思われるようじゃないと、惹き付けるのが難しいのかなって。

　スタッフには「おもしろくなくなってきたら解散するから」ってよく言っているんですよ。決まったことしかできなくなって、そこそこちゃんとしてて、成立してるねっていう感じになったら解散するからって言っているんです。毎日じゃなくても、定期的に「へぇ～、おもしろいわぁ」っていうことがないんだったら、もういいわって言っています。最近、そういう話をすごくしていますね。

野嶋　スタッフのみなさんはそれをどう捉えているのでしょうか。

隈本　うーん、どうでしょう。例えば、ときどき「あいつ困ります！」とスタッフから言われるような子がでてくるんですよね。何考えているかわからないし、言ったことは聞かないし。管理する人はみんな「困ります！」って言う。「でもあいつのスタイル見てるとおもしろくない？」って聞くと「いやぁ、おもしろいんですよ」って言うんです（笑）。「いなくなったら寂しくない？」って聞くと、「そりゃ、寂しいですね」ってなる。

　美容師って接客業ではあるけども、僕はあまり接客業とは思っていなくて、やっぱり職人さんたちの集まり的な要素を強くしたいんですよね。そう考えると、ひとつのことをずっとトレーニングできる人も必要かもしれないけど、いろんな発想ができるということもすごく大事なのかなって考えるんです。

野嶋　伺っていてよくわかりました。誰かが決めた型やルールに沿っているんじゃなくて、常におもしろさや変化を意識していらっしゃる部分が、swirchさんの勢いにつながっているんだなって。

隈本　といいながらも、実は先日、スタッフとめずらしくミーティングを夜中までしたんです。今のうちのイメージってキレイでまとまっているから、１回崩さないと根本的なパワーみたいなものは出ないよねっていう話です。そこを崩しておもしろいものを考えていけなければ１店舗でやっている意味ないですからね。限られた人数でやっている自由さもうちょっと活かそうっていう話をしていたんですよね。「最近お店の中がおもしろくないわ～、みんなちゃんとし過ぎ！」って（笑）。

野嶋　隈本さんのそういう話を、スタッフさんは理解されていますか？

隈本　していると思います。それぞれが見てきたものがそうだったから。「そうでしたよね！　先輩たち、もっとめちゃめちゃでしたよね」という話になるんですよね。 　時代も変わって、情報の流れも早くなって、みんなが頭でっかちになっている。その中で興味を持たれることを作ったり、発想していくっていうのは簡単じゃないから、何か１回ちょっと崩したいって。じゃなかったら、解散でもいいよ俺はって。解散したら俺はもっとおもしろいことするけどねって言って（笑）。

野嶋　完成形はないですよね。

隈本　ないですね。どこまでやれるかな、と思ってやっている感じです。