｜第４章｜フォトで表現したいのは「リアルな中にちょっと夢」

野嶋　最後にyellow ［girls］についてお伺いさせてください。switchといえばyellowというくらい有名ですよね。サロン発信フリーペーパーの先駆けだったと聞いています。

隈本　これ、お客様だけに渡しているものなんです。カフェに置いたり、街で配ったりということは一切していないんですね。もともと、スタッフがときどき依頼される撮影のときに「せっかくおもしろいスタイルをつくっているんだから残しておきたいな」と思ったのが始まりです。

　最初は、撮影させてもらったお客様が次回来店されるときにプリントアウトして、アルバムの台紙に貼ってお渡ししていたんです。お父さんが「この写真好きだって言ってた」と言われたら、もう１枚引き延ばしたりして（笑）。それがだんだんたまってきて、１冊にまとめたいなあと思うようになったのがきっかけです。だから、集客のためにとかそういうことではなく、お客様に喜んでもらいたくて作っただけなんです。

　１冊目は、それによってどういう反響があるかわからなかったから、自腹でやってみました（笑）。そしたら、この冊子をきっかけにいろんな会話がお客様とスタッフの間でされるようになったんですよね。スタッフももっと可愛い写真が撮りたいと言うようになった。お客様とのコミュニケーションツール的にも、スタッフのデザイン教育的にもいい影響があるだろうということで、２号めからはサロンとして予算をとって作りました。

野嶋　かなりしっかりした作りですよね。厚みもあって。

隈本　気軽にぽいっと捨てられない厚みというのは意識しました（笑）。お客様が家にとっておきたくなるような厚み。１号めの反響が良かったので、２号めはすぐに出しました。「連続して出るものなんだ」と思ってもらうことで、期待感をもってもらおうと思いまして。

野嶋　撮影に取り組むことでどんな変化がありましたか。

隈本　一番はお客様が喜んでくれるという部分ですよね。モデルは全員顧客ですので、リアリティがある。でも、リアルなだけじゃなくて、ちょっと夢がある。「私もこんなふうに可愛くなれるのかな？」とイメージしやすいのかもしれないです。

野嶋　スタッフさんもモデルとして登場するのが特徴的ですよね。

隈本　そうなんです。あるとき、そういえば、うちのスタッフもswitchのお客様って言えるよなあって思ったんです。スタッフが登場することで、よりお客様との会話やコミュニケーションが深まっているように思いますね。

野嶋　今、フォトがとても盛り上がっていて、いろんなサロンさんがフォトに取り組まれてますが、switchが大事にしていることは何ですか？

隈本　switchの顧客やファンのお客様を撮影することにこだわっているので、１度しかきたことのない方や、他のサロンさんのビジュアルイメージにもよく登場される人には撮影をお願いしません。あくまでお客様なので、担当者以外が髪に触ることもしません。

　お客様って、意外とそこをシビアに見てるんですよね。「yellowに出ている女の子は、他のサロンのホームページでは見かけない人たちばかりですね」とよく言われるので、お客様もいろんなサロンでモデルを掛け持ちをしている子がいることをよく知っているようです。そんななかで「switchでは、実際にこのサロンに通っている子しか出ない」ということが、ある種の信頼感になっていることを強く感じます。

　これからも、福岡の女の子たちの等身大を撮っていきたいと思います。

野嶋　話は尽きないのですが、今日はありがとうございました。switchの本質的な部分のお話を聞けてよかったです。

隈本　こちらこそ、ありがとうございました。