｜第３章｜ママスタッフがいるからこそ　生まれる発想やお客様目線

野嶋　ママ美容師さんが増えたことで、サロンには何か変化がありましたか？

坂巻　あります、あります。もう、いっぱいありますよ。例えば今までお客様にいろんな我慢をさせていたことにも気づきました。

野嶋　それはどんなことですか？

坂巻　出産後に「子どもを預けてきました」というママのお客様がいらしたとしても「そうですかー。大変ですねー」なんて口では言いながらも、こっちはカット１ミリにこだわって、仕上りが全てだろうって心の中では思っているんです。仕上りをめいっぱい美しくすることを優先して一刻も早くお返ししなくてはという意識が薄かったり……。

野嶋　そのあたりは、お子さんを持つ女性の気持ちがわかるスタッフさんがいてこその気づきでしょうね。

坂巻　そうなんです。それから、お客様のほうにも、ママ美容師さんがいることでちょっとした安心感が生まれるみたいですね。子連れのお客様も増えましたね。

　僕たちも「お子さんと一緒に来てください」「うちにはママ美容師もたくさんいますから大丈夫ですよ」「スタッフもみんな子ども好きですから」とお声がけしています。お子様連れでお見えになるお客様は来店サイクルが早くなったりしましたので、「ああ、今まで我慢させちゃっていたんだなあ」という気づきにもなりました。

野嶋　スタッフさんの中では、ママ美容師さんの存在はどのようにうつっているんでしょうか？

坂巻　先ほどここに案内した樋口いづみもママなのですが、あんなに小さな体で、本当に肝っ玉が座っているんです。子どもを生んだ女性には本当に僕らも頭があがりません（笑）。

　うちは、１年目のスタッフにシスター制度をとっています。先輩のスタッフがお兄ちゃん、お姉ちゃん役になり、密な関係を作っていくのですが、年齢の近いスタッフが面倒を見ると「自分もそこで苦労したよ」と親身に相談にのれる分、自分たちだけでは解決できない問題も出てくるんです。そんなときに、先ほどの樋口などが一段上のステージからアドバイスをすることで、スタッフがすっきりしていることが多いですね。ママ美容師たちは、このサロンでもみんなのお母さん役のような存在です。大家族のような感じですね。

野嶋　スタッフさんにとっても頼もしい存在なんでしょうね。