「バーバー」人気の理由
今「バーバー」が人気の理由
近頃増えている、従来の理容室とは違う新しいタイプの「バーバー」は、なぜ多くの男性ファンを生んでいるのでしょうか?
ターゲティングやコンセプト、強みなどについて探っていきます。
BARRIQUAND【バリカン】(東京都世田谷区)
2時間だけ独占できる、特別な空間。
椅子1台のみという大人の男のバーバーとは?
三軒茶屋の住宅街で、ひっそりと営業するバーバー「BARRIQUAND」。目立った看板もなく、謎めいた雰囲気ですが、近隣の人だけでなく遠方からわざわざ通う常連客もいるそう。ターゲットは若者ではなく、ミドルエイジ。大人の男を惹きつけているのは、プライベートサロンという居心地の良さ。個室バーバーの開業に至る経緯やこだわりについて、オーナーの會田マコトさんに話を伺いました。
なぜ、個室バーバーという選択をしたのか?
外観からトータルでスタイリッシュに。
店の前に置かれているのは、古き良き時代を彷彿とさせるクラシカルな自転車。ドアのガラス窓から中を覗くと、レトロな革のソファが目に入る。壁の小さなガラスケースには年代物のバリカンが飾られ、その上で外灯のようなサインポールが回っているものの、多くの人はアンティークショップかと見紛うのではないか。バーバー「BARRIQUAND」は、外観がまず独創的。そして店内で待ち受けるのも、ほかではあまり見られない風景だろう。バーバーチェアはたった1台のみ。店主の會田マコトさんが、ひとりのお客さまだけに専念する、究極のプライベートサロンだ。
修業時代の思いや経験が個室を選ぶきっかけに。
會田さんは修業時代から、独立した時にはひとりのお客さまだけに対応する個室バーバーにしようと考えていたという。「何といっても気楽ですからね」と笑うが、もちろん、それなりの理由がある。例えば、あるバーバーで働いている時は、人数をこなすためスピードを求められることが多かった。もう少し時間をかけて、じっくり仕事をしたいという思いが膨らむ。決定的だったのは、左右に仕切りがあり、ほぼ個室のようなスペースでカットをした時のこと。「お客さんの肩の力が抜け、気分が解放されていくのが伝わってきたんです。これだ、と思いました」。そこから、どうすれば個室バーバーの良さを極められるか、アイデアを貯める日が続く。
大人のサロンとしての魅力が付加価値に。
アンティーク家具で粋な雰囲気に。
オープンしたのは2010年。開業場所は「人が多いから」と三軒茶屋の住宅街に決定。ターゲットはミドルエイジの男性に絞り込んだ。そんな“大人の男が集うサロン”にするため、外観だけでなく内装にも工夫をこらす。全体としてイメージしたのは、20世紀の初めを描いた欧米の映画に出てきそうな雰囲気。実際、お客さまの姿を映す鏡は、1920年代にイギリスで造られたもの。そのほかにも開業準備中にアンティークショップを巡り、コツコツと集めた骨董品がそこかしこに置かれている。大人のサロンとして、オーディオにもこだわっている。マランツのアンプに繋ぎ、バーバーチェアに向かって設置したスピーカーは、JBLのセンチュリーゴールド。1000枚以上のCDやレコードを用意するが、自分の好きな音楽を持ち込み、スタイリングの間に楽しむお客さまもいるという。
ひとり2時間枠でじっくりと対応。
メニューはカットとシェーブ、マッサージのみと実にシンプル。にもかかわらず、ひとり当たり2時間枠で設定し、じっくりと時間をかける。押し付けがましい空気になるのを避けるため、シャンプーやスタイリング剤などの店販は扱わない。あくまでもお客さまが心穏やかなひとときを過ごし、気分転換ができるような雰囲気づくりを徹底する。オープンして4年目に、5000円だったカット&シェーブを7000円に値上げした。「お客さんから言われたんですよ。この値段でいいの?って」と會田さん。大幅な値上げのため一部の常連は離れていったが、通い続ける人が多かったのは、それでも満足度が高いということ。最近は隣県からわざわざ通う人もいて、特に週末は早い段階で予約が埋まる状態が続く。個室バーバーという、密かな愉しみ。そんな付加価値のある店が、大人の男を魅了している。
オーナーインタビュー
Q.どのような営業スタイルですか?
A.完全予約制で、1日最大5名までです。
スタート時間は日によって少し違うのですが、お客さんひとりあたり2時間を確保し、1日最大5人まで予約を受けます。準備の時間もありますので、お客さんに対応するのは実質1時間半くらいでしょうか。空席状況は、ツイッターで常に更新しています。
Q.その他、お客さまにくつろいでいただくための工夫は?
A.例えば、動きを遅くします。
シェービングクロスをかけたり、何かを取るために移動したりする時、意識してゆっくり動きます。そうすると、全体の雰囲気がゆったりとして、お客さんの気持ちも自然にほぐれてきます。それから、店内の照明は一般のバーバーより暗いと思います。会話も、基本的にはこちらから話しかけることはありません。ずっと事務的な話しかせず、1年経った頃から世間話をするようになったお客さんもいますが、すべて相手次第です。
Salon Data