第3章何年たっても現場に立ち続ける、その想い
「やっぱりサロンワークも大切にしたい。
“リアルな美容師”であり続けたいから。」
今後、美容業界で生き抜くために大切なものは何だとお考えですか。
よい美容師になることとは、人間的魅力を高めること。人間教育ができてこそ、稼げるスタッフが育てられると思います。ですから教育期間を短くすることを、僕は重視してはいないんです。
「美容師はつぶしがきかない」なんてよく言われますし、確かにそうだなと感じることもあります。でも、人間力を磨いたスタッフならば、たとえ美容師を辞めても生きていけるはず。そこまで育てようとしたら、時間がかかって当然だと思うんです。
同時に、今は美容師のなり手が少ないので、費用面のハードルや学ぶ期間など、美容学校の仕組みも変えていく必要があると感じています。
松谷さんご自身の、この先の夢は?
僕はあんまり夢を掲げないようにしているんです。僕が言うとみんなが気を遣って、「その実現に向けてがんばらなきゃ」ってなるのは申し訳ないし。それよりも、スタッフたちの夢を聞いて、それを叶えてあげたい。みんなが思い描く「好きなことができる環境を整える」ことが、僕の希望かな。
今後、店舗を増やしたいという希望はありますか。
スタッフの給料をもっと上げたいし、スタッフの夢を叶えるためにも利益を上げ続ける必要がある。そのために出店することもあるでしょうが、あくまでも出店は「手段」であって「何店出店」という目標ではないですね。
「FLEAR」の25年で直営3店舗というのは決して多くはないし、自分が社長だったらもっと出店していたかもしれない。せっかちに突き進む僕に対して、社長は慎重派。だからこそバランスが取れているし、これでいいと思っていて。慎重な社長をどうやって「うん」と言わせるか、説得方法を考えることを楽しんでいます。
現在はセミナー講師としてもひっぱりだこです。それでも、これからもサロンワークは続けていきますか?
もちろん続けていきたい。ただの「講習屋」にはなりたくないですからね。実際に髪を切り続けていなきゃ、講師としてもリアルじゃないでしょう。サロンに来るお客さまと一緒で、セミナーの参加者もわざわざ僕のために来てくれるお客さま。その人たちから「学びたい、マネしたい」と思ってもらえることを伝えていきたいです。
そのためにもサロンワークは必要です。たとえば店舗売上が落ちてしまったとしても、そこから立て直したらセミナーでノウハウを伝えられるし。やっぱり現場に出ているからこそ気づけることってあると思うんです。それに何よりも僕は、働くことが大好きで、髪を切るのが大好きなんです。
「“FLEAR”とは別軸で考えたら、夢がひとつありました!」と松谷さん。
美容師として「FLEAR」で一緒に働いている弟さん2人、
男3兄弟みんなが定年を迎えたら、
老人ホームに行ってボランティアで髪を切りたい、とのこと。
すごい人なのに、まったく偉ぶらない。
そんな松谷さんの姿勢からも、スタッフは学んでいるのでしょう。
「FLEAR」の強さ。それは単なるスキル教育に終わらない
真の“人間教育”にあることを知りました。