第2章勝つ手段として、「モテ髪師」が誕生
「“困ったこと”は、ビジネスチャンス。
誰もやっていないことにトライしたい。」
大悟さんといえば、ただの美容師ではなくモテる髪型をつくる「モテ髪師」として支持されています。この「モテ髪師」というのは、いつから名乗っているんですか。
「PEACE」の1号店をオープンするにあたって、普通じゃ他店に勝てないから何か特徴のある肩書を名乗ろうと考えて。資金集めのためにバイトしていた期間は、考える時間はいっぱいありましたからね。自分の強みは何だろうと考えたとき、そういえばこれまでのお客さまから、「髪を切ったら彼氏ができた」と報告されることが多かったなと気づいて。それで「モテ髪師」という肩書を思いつき、オープン当初から名乗ることにしました。
肩書だけではなく、「モテ髪師」としてカット前に診断をされているとか。
内容は少しずつ改訂しながら、骨格や人相学などから似合う髪型を探る「モテ髪診断」と、「恋愛カウンセリング」をしています。
女の子から信頼を得るためには「私のことをわかってくれている」と感じてもらうことが大事。長年通ってくれるお客さまも、「自分の髪質や好みをわかっているから」というのがリピートの理由ですよね。そして、最短で相手の心理を読む方法が「占い」であり、だから女の子は占い好きが多いのでしょう。その占いの要素を、データの裏付けをもとに体系的に整理したのが「モテ髪診断」というわけです。
カット後にアイロンで巻き髪のやり方などを教える「スタイリング指導」もメニューにありますね。
これはオープンから3年後くらいに始めました。友人に巻き髪を教えたのがきっかけです。僕たち美容師にとっては当たり前でも、一般の人にはアイロンの持ち方も、そのアイロンが何ミリのサイズかさえもわかりません。最初はできないだろうと思ったのですが、教えたらできたんですよ。
でも5分で教えられるものでもないし、お店でサービスとしてやるとしても、次に待っているお客さまがいたらそちらが優先になる。だったらメイクでもお金をいただくのは当たり前なんだから、同じように料金設定をしてひとつのメニューにすることに。1時間をかけて、最初は基礎から、回数を重ねるごとにレベルを上げて上級まで、しっかり教えることにしました。
そういう発想や、「モテ髪師」というキャッチーなネーミングとか、大悟さんは嗅覚がするどいですね。
「困ったこと」はビジネスチャンス。誰もやっていないことを見つけ出してトライするのが好きなんですよ。ビジネス書をよく読んでいる影響もあるかもしれません。街のショップでも流行していると、「なぜここはウケているんだろう?」と考えるクセがついています。常識を疑うというか、まぁ「ひねくれ者」なんです(笑)。
「他店にはない特徴」を打ち出して、オープンして間もなく地元・福岡のTVやラジオにも出演するほど評判になったんですね。
オープン前からいろんな人と出会いたくて、異業種交流会みたいなパーティーを開いていたんです。そのときに築いた人脈にTV関係の人がいたことが出演につながりました。あと集客のため、最初はお金がないので無料でできるブログに力を入れていて。まずは「大悟に会いに行きたい」と思ってもらえるように、ヘア情報に限らずパーティーの話題やモテるためのテクニックを書き込んでいたので、それもTVの出演に結び付いたと思います。
だから僕がTVに出るときは美容師としてというよりも、「恋愛の先生」として呼ばれていたんですよ。何度も出演しましたが、ハサミを持ったのは1~2回あったくらい(笑)。店のオープンから1年後にはラジオで「モテ髪師がモテテクを伝授」みたいな1コーナーも任せてもらいました。TVやラジオから声がかかって出演を決めたのは、無料の広告になるからです。TVの人が好きそうな、モテテクの手帳「モテ帳」を用意したりもしましたね。
福岡での知名度を上げて、それから2015年に東京へ進出したきっかけは?
弟がずっと東京の表参道で美容師をしていたのが、きっかけのひとつです。福岡で受け入れられたモテ髪師の手法を、東京でも広めたいと思って出店しました。最初はネットからじわじわと評判が広がり、東京進出から1年で全国区のTVに出演。TVを通じて東京でも知名度を上げたいと考えていたので、狙い通りです。…なんて、かっこつけて言ってみたけど、めっちゃ嬉しかったです!
お話を聞いていると、とても戦略的にメディアを活用されていますね。大悟さんがTVに出演するときの「ぐっちょりーす」という決めセリフ。この言葉はもともと使っていたんですか?
いえいえ、普段は言わないですよ。恥ずかしいじゃないですか(笑)。出演前からブログでは挨拶として書いてはいましたが、口には出していませんでした。TVに出ることになって打合せをしていたときに、ブログを見たスタッフの方が「これいいじゃないですか」というので、トレードマークになるならと思って使うことにしたんです。
ちなみに「ぐっちょりーす」の意味をよく聞かれるんですが、そんなに深い意味はないです(笑)。「グッドモーニング」とか「グッドアフタヌーン」の「グッ」に「ちょりーす」をつけただけで。