第2章「のれん分け」と多様なブランド展開で拡大
「スタッフが活躍できる場を用意することが
企業として長く続いていくために重要です。」
小さな1店舗目の開業から31年経ち、現在はグループ全体で約300店舗を展開しています。業務提携・子会社化して傘下の店舗を増やしたほか、「のれん分けシステム」によるフランチャイズ(FC)化が特徴的ですね。
美容師に必要とされるのは、技術力やそれを磨く意欲、人間的な魅力です。一方で経営者には経理や総務、経営戦略といった能力が必要であり、美容師として優れていても経営業務は苦手という人も少なくありません。その問題を解決する方法が「のれん分けシステム」です。
店長にそれまで働いていた店舗を転貸ししてFC店経営者として独立してもらい、技術や接客の教育を任せる。スタッフやお客さまもそのままに、繁盛店を引き継げるので、独立開業時の負担を減らすことができます。そして本部が管理業務やマーケティングを担当して、そのぶんのロイヤリティを受け取る。こうして双方が役割分担をして互いに発展を目指すのです。
冒頭に「業界の問題点」としてお話されていた、「美容師は独立したい、一方で経営者は独立されると困る」という問題も、このシステムだと解決できるというわけですね。
そうなんです。美容師としては独立して経営者になる夢を叶えられ、同時にグループ全体としても規模を拡大できる。「WIN-WIN」の関係を築くことができます。
現在は首都圏を中心に展開する「Ash」、関西中心の「NYNY(ニューヨーク・ニューヨーク)」のほか、カットとカラー専門の「ChokiPeta(チョキペタ)」など、価格帯もコンセプトもさまざまなブランドを展開されています。これは意識的にされているものでしょうか。
企業体として成長していくには、ひとつのブランドよりもポジションの異なるブランドが複数あったほうがいい。また、スタッフがそれぞれの力を発揮できる環境を用意するためにも、ブランドの多様性は必要です。
美容師はずっと最高レベルの能力を発揮できるわけではなく、35歳~40歳がピークという人が多い。その後も成長を続けられるなら一流と呼べますが、ごく少数でしょう。だから美容師って店長やオーナーになった人を除くと、30代で辞めてしまう人も多いんですよね。でもさまざまなタイプのブランドがグループ内にあれば、そうした人たちにも活躍の場を与えることができます。
多様なブランドを展開することが、それぞれに違った能力や希望を持つスタッフの受け皿になっているんですね。
お客さまだけでなく、スタッフの満足度をも高めることが長く継続する企業としてはとても重要です。また、「ChokiPeta」のような低価格帯のサロンは、全国に50万人いるといわれている休眠美容師の受け皿としても有効だと考えています。たとえば出産・育児で一度美容師を離れてしまった人が、デザイン性の高いサロンで復職するのは難しい。でも日常性の高いサロンなら戻りやすく、能力を発揮することができます。
※「ChokiPeta」の取り組みを紹介している「女性スタッフが辞めないサロンの秘訣」記事はコチラ
http://hba.beauty.hotpepper.jp/check/12784/