第3章美容業界の未来のために始動
「業界の未来のために。メーカーやディーラー、
他店とタッグを組んだ取り組みを始めました。」
「MINX」さんは海外セミナーも開催されているんですよね。それは技術面のセミナーですか、経営面?
どちらもやっています。「MINX」全体としては技術セミナーがほとんどですが、僕の場合は経営セミナーの依頼がとても多いですね。主催は日本の美容系メーカーで、我々は講師として招かれる形です。一番多いのは中国、ほかに韓国、台湾、シンガポール、タイ、マレーシアなど。アジア各国でもまだまだヨーロッパの美容メーカーが主流なので、日本の美容文化を世界へ広げること、そしてアジアの美容文化を発展させたいという想いでやっています。また、日本を代表するサロンとして、「MINX」を認知してもらえたらとも思っています。
今日は銀座店におじゃましていますが、先ほど中国の美容師さんが団体で見学に来ていましたね。
彼らはうちの朝礼を見学に来たんです。そういう人たちが月に50人~100人くらいは来ます。中国で経営セミナーを開くと、1回に1000人くらい受講者が集まるんですよ。ヘアサロンのセミナーで、これだけ集客できるのは稀だと思います。ありがたいことに、チケットが取れないくらい。中国でも美容サロンが増え、若い経営者を中心に生き残るために危機感を覚える人が増えているようです。
日本の美容業界も転換期に入っています。今後の業界について、どうお考えですか。
この先は一気に変化が起こりそうですよね。美容は技術職だから他業界の参入が難しいなんて言われてきましたけど、経営に他業界の企業が参入する動きも出ています。他業界の成功事例もどんどん入ってきて仕組みが変化し、集客方法も変わっていくでしょう。
たとえばいまはサロンという「箱」にお客さまがついていますが、今後はもっと「人」にお客さまがつく流れになると思います。SNSをはじめ、個人の発信力の高まりがそうした流れを生んでいる。だから個性を活かすこと、各人に何ができるのかを大事にして、発信していく必要があります。
この変動の時代をどのように生き抜くか、流されるのか、変わらないのか。これから10年間をどう進むかが生き残りの分かれ目になるでしょう。そのためにアンテナを常に張りめぐらせて、トライ&エラーを繰り返さなければと思っています。
菅野さん個人として、この先に計画していることはありますか。
僕が業界のためにいま何ができるだろう?と考えたとき、思い浮かんだのは「パーマを盛りあげたい!」ということ。近年は業界的にもカラー押しの流れが続いています。一方、ここ20年くらいのパーマ率は業界全体で10%台くらいと言われています。ここの需要を掘り起こさないままでいるのは、業界全体にとってもデメリットだと思うんです。
僕のお客さまは、3人に一人がパーマをされています。それはお客さまの髪質、骨格に合わせて希望のイメージを再現するのに、適宜パーマが不可欠であると考えているからです。パーマセミナーのオファーも、たくさんいただきます。
ではなぜ一般的にパーマが流行らないかというと、店側から提案していないからというのも大きいと思う。パーマってカラーに比べて技術的にも髪が傷まないようにするのも、難しいんですよね。だからパーマを得意とするスタイリストも少ないし、積極的には押し出さない。代わりにヘアアイロンを使った巻き髪の提案をしている。もちろんそれも悪いことではありません。でも、この先の人口比としても大きい40代以上の層は、年齢的に髪質が弱っていて「アイロンで巻くのは難しい」という問題もあります。
こうしたネックを解消するため、髪を傷めないパーマ液や技術を、メーカーやディーラーとも協力して作り出していきたいと考えています。パーマが得意なサロンにも20社ほどすでに声をかけて一緒に動き出しているんですよ。形になるのはまだ先ですが、パーマの新しい価値、新しい形を生み出して、広めていきたい。そしてお客さまにも、真のパーマの良さを伝えていきたい。その未来のために、「MINX」だけではなく、業界全体で変わっていけたらと思うんです。
ベクトルは自分ではなく、常に「組織、業界、社会、世界に貢献するには?」・・・そんな広い視野で物事を考えていることが、会話の端々から伝わってきます。
一方で、スタッフ一人ひとりを気にかけて密にコミュニケーションをとる。
時に、嫌われ役も買って出る。
「美容を通して、人間力を学ぶ。」
菅野さんが大切にしている想いです。
リーダー自らが持つ圧倒的な人間力もまた、
スタッフ約200名の心を動かしているのでしょう。