第3章真の「女性の働き方改革」を目指して
「小さなことで悩む女性が、いとおしい。
彼女たちがイキイキできる“働き方改革”が目標。」
ここまでの人気サロンになったのは、金田さんの力が大きいと感じます。たとえばもっと会社が大きくなったとき、金田さんの役割を担える人材を育てるのは難しいのでは?
そんなことはありません。いまだって私がやっていることは雑用みたいなもの。大きな方向性は私が決めているけれど、予約方法や技術研修の仕組みをどうするかなど、小さなことは任せています。いま私は採用面接にすらかかわっていなくて、手を挙げた子に任せます。入社3カ月とかでも「私がやりたい」って子たちがいっぱいいて、そういう女性の好奇心の強さってすごいと思う。でも普通の会社では手を挙げられないんですよね、責任が重くなるのが嫌だから。
みんなが勝手にやって、責任は私がとります。細かく管理してもミスはするし、締め付けると人は怖がり、辞めるだけ。実際に最初のころはそうでした。任せるようになってからはほぼ辞める人はいません。そんなわけでみんなのおかげで成り立っているから、私なんていなくていいんじゃないかと思うくらい(笑)。
いまニューヨーク店の出店準備を進めているそうですね。新たなチャレンジは、国内店舗がある程度はもう任せられる形になったためでしょうか。
そうですね、日本では私が手をかけなくてもきれいに稼働するところまで来た。そういう土壌がまったくないニューヨークで、イチから作っていくことがいまは楽しみです。正解がわからないところに出て行って、答えを探したい。
その先に、金田さんが目指す未来とは?
私が求めているのは「女性を楽しくする」こと。女性が何を楽しいと感じるか?楽だとか自由とかじゃなくて、もっと大事にしているものがあるんです。それは「好かれたい」という想い。たくさんのお金とか仕事の成果ではない。お金がほしいとしても、その心理の奥にある「かわいい服を着て好きな人にほめられたい」「インスタに上げて見てもらいたい」という気持ちまで迫らなければ、女性を喜ばせることはできません。
世の中の男性は、女性の表面的な声に左右されがちです。「そんなの私にはムリです、やりたくない」と言われても、実際にやらせないと怒ってしまう場合がある。最初は私も振り回されました(笑)。女性が発する言葉の「真」の部分をきちんとキャッチしないと、男性化したこの社会ではうまくいかないんです。
なるほど、難しいですね(笑)。言葉の意味そのままではなく、「真」の部分を探る。
最近は「女性の働き方改革」なんてよく言われていますが、目を向けるべきところが間違っている気がして。女性は男性からしたら小さな、取るに足らないことで悩んでいるんです。みんな真面目でがんばり屋さん。そこが私にはかわいくて仕方がないし、いとおしい。だから私は、彼女たちの気持ちが理解できると思っています。
現状でもほぼ離職はないですし、お客さまのリピート率は9割以上、店舗稼働率は100%。満足してもらえているから働いてくれているのであって、女性のための経営スタイルの正解を私たちは知っている。だから今後も「これが女性の働き方だ」というものを追求して、圧倒的結果を出して、みんなに認めさせたい。経営者として「女性が働く答え」を出したいと思っています。
取材だけでなく、会食のお誘いなども、ほとんど断るという徹底ぶり。
聞けば、自分の時間は可能な限り、女性スタッフのために使いたいからだそう。
彼女たちが10年後も20年後も、楽しく働けるように。そのことばかりを考えているように見えました。
真の「女性の働き方改革」とは?
そのヒントが、金田さんのお話を通して少し見えた気がします。