先輩女性インタビュー
サロンで働く先輩女性たち
長く活躍しているさまざまな女性スタッフに、どんなキャリアを歩んできたのかインタビューしていきます。
自分なりの「なりたい私」を見つけてください!
vol.109
原宿の人気サロン初のママ美容師。
産休失客がほぼゼロだった理由とは?
モデルなど有名人からの支持も厚い、原宿の人気サロン「grico」。オーナーの人柄に魅かれ、6年前に中途入社したTOMOMIさんは、軽快なトークと磨き上げた技術が評判のベテランスタイリストです。コツコツとキャリアを積み、店長となった昨年に妊娠が判明。サロンで初めてのママスタッフになりました。現在10カ月のお子さんを育てながら、「美容師だけどママ」の自分をイキイキと楽しむ日々。「ママであることを強みにしていきたい」と力強く語るTOMOMIさんに、仕事への思いを伺いました。
Staff Data
TOMOMIさん 33歳
スタイリスト。grico(東京都渋谷区)勤務。
スタイリスト歴12年。既婚。10カ月の女の子のママ。
週5~6日、10:00~18:00のフルタイム勤務。
TOMOMIさんのLife History
★…ターニングポイント
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18歳
小学生時代から「美容師になりたい」と考えていたが、両親は大反対。高校の先生にも大学進学を勧められたが、押し切って地元・茨城の美容学校へ入学する。
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20歳
美容学校の先輩が働いていた東京・吉祥寺のサロンに入社。モデルハントや接客の能力が評価され、「期待の星」と呼ばれるように。
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21歳
「美容師になりたいなら、ちゃんと練習をしたら?」という先輩の一言で奮起。誰よりも早く出社し、誰よりも遅くまで残って練習に励むように。努力の甲斐あって、サロン最短記録でスタイリストデビューを果たす。
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26歳
自分と同い年の美容師がオーナーをしている人気サロン「grico」の噂を聞き、興味を持つ。サロンを訪れてみたところ、オーナー・エザキさんの懐の広さに感銘。「こういう人と一緒に働きたい」と、転職を決意する。
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27歳
★「grico」へ入社。エザキさんのつくるヘアスタイルを見て勉強し、技術向上のために練習を重ねる日々。
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30歳
店長に就任。
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31歳
近くのサロンで美容師をしている彼と結婚。
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32歳
妊娠が判明。9カ月目で産休に入るまでは、体調を見ながら通常通りのサロンワークを続けた。
出産して2カ月後に復帰し、週3~4日出勤、11時~18時までの時短勤務に。 -
33歳~
子どもが保育園に入園したタイミングで、フルタイム勤務に変更。店内にキッズスペースを設置し、日曜は子どもを連れて出勤している。
TOMOMIさんへのインタビュー
Q. 前のサロンでも活躍されていたようですが、「grico」に転職したきっかけは?
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A. エザキさんのように、スタッフやお客さんを大事にする人と一緒に働きたいと思ったからです。
前のサロンを辞めたいと思っていたわけではないのですが、疑問に感じることはいろいろありました。妊娠すると、女性スタッフは辞めるしかなかったこと。先輩たちのお客さまに対する接し方など。「ここに骨を埋めたいとは思えないな」と考えていた時、エザキさんの話を耳にしたんです。私と同い年なのにオーナーをやっていて、お店はオープンして1年ほどながら、雑誌で頻繁に紹介されていると。どんな人なのだろうと会いに行ったら、スタッフやお客さまを家族のように大事にしているオーナーでした。そういう思いをエザキさんから直接聞いて、「こういう人と一緒に働きたい」と思ったんです。
いざ入社する時にも「TOMOMIさんがgricoに入ったら家族として迎えるし、結婚したり子どもができたりしたら、旦那さんも子どもも家族」と言ってもらえて。転職して本当によかったと思います。
Q. ターニングポイントが「grico」への転職ということですが、入社されてからどんな変化がありましたか?
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A. 自分の技術を磨き直し、活躍の場を広げられるようになりました。
前のサロンからついてきてくださったお客さまも多くいたのですが、転職してすぐの頃に、その中のおひとりからエザキさん宛てに電話がきたんです。「TOMOMIさんをすごく好きだけれど、1回も髪型に満足したことがない。エザキさんがTOMOMIさんをうまくしてあげて」と。4年ほど通ってくださっている男性のお客さまだったのですが、その本音にショックを受けました。自分の技術を過信していたことに気が付き、初心に戻って練習することに。そこからはエザキさんの技術をひたすら見て学び、真似して、がむしゃらに努力を重ねました。そのうちに雑誌やセミナーの仕事も舞い込むようになり、2015年の「Men’s PREPPY メンズトレンド大賞」で大賞を受賞するなど、結果を出せるようになってきたんです。きっかけをくれたお客さまに受賞の報告をしたら、「俺は見る目があるね」って喜んでくださって。お客さまにずっと通い続けてもらうことが目標なので、これからも努力をし続けたいと思っています。
Q. 産休に入る前には、会社とどんな話し合いをしましたか?
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A. 夫と協力して復帰するように、アドバイスをもらいました。
パパ美容師でもあるエザキさんから、スムーズな復帰に向けてのアドバイスをいただきました。「復帰のタイミングではご主人に有休を取ってもらって、2~3週間くらい交互に子どもを見る時間をやりくりした方がいいんじゃない?」とか「早く復帰したいなら、保育園に入れるように事前に動いておく必要があるよ」など。
お客さまの引き継ぎについては、とてもスムーズだったんです。アシスタントたちには、「私たちスタイリストが妊娠して休む時が必ずくるから、その時にお客さまを担当するのはあなたたちだよ」と常日頃から伝えています。なので彼らは「スタイリストのお客さまは自分のお客さま」という意識で接客していて、お客さまからアシスタントへの信頼も厚いんです。産休・育休で3カ月間休みましたが、失客はほとんどありませんでした。
Q. 復帰後に苦労したこと、大変だったことは何ですか?
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A. 責任のある仕事ができなくなり、モチベーションの低下に悩みました。
やはり育児があると、こちらの都合で迷惑をかけたくないので、責任のある仕事ができなくなります。以前は店長でしたが妊娠後はその職も降り、売上の数字もキャリアも止まった状態に。お店に貢献できることも少ないし、モチベーションが保てずに悩んだ時期はありました。「ママ美容師は限界があり過ぎる。どうやって結果を出していけばいいのかわからない」とエザキさんに相談したら、「子どもを産み育てながら復職していることは、それだけで何にも代えがたいブランディング。働いていること自体がすごいのだから、悩まなくてもいいんじゃない?」と言ってもらえて。そこから視野が開け、「もっと活躍の場を広げて行こう」と前向きに考えられるように。ママであることを強みにして、やりたいことをどんどんやっていきたいです。
若手女性スタッフへ、メッセージをお願いします!
女性の美容師さんってお客さまにすごく求められているのに、30歳を過ぎると減ってしまうんです。だからこそ、そこにチャンスがあります。働き続けていくことで自分の価値は上がっていくし、お客さまに選んでいただく機会も増えていくはず。そう考えれば、子どもを産んでからも美容師は続けた方がいい。他の業界と比べてみると融通が利くことも多いし、自分の頑張り次第ではあるけれど、女性が働きやすい職業ではないかと思います。もちろん、勤務する会社の姿勢にもよりますが、働きやすさって自分でつくるものなので。特に美容師は自分でアピールできなければ務まりません。自分の強みを考えて、お客さまに対しても会社に対してもしっかりアピールしながら、道を切り開いていってほしいです。
Salon Data
grico(グリコ)
- アクセス
- JR原宿駅から徒歩8分
- 創業年
- 2009年
- 店舗数
- 3店舗
- 設備
- セット面8席
- スタッフ数
- 12名(スタイリスト5名、アシスタント7名) ※都内2店舗合計