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自分ができない人間だから相手のいい部分を探す。
千葉
瀬戸さんは若くして起業されて、社員を抱える立場になりました。その点で難しさは?
瀬戸
特にありませんでしたよ。僕は自分が「できない」ことを理解しているし、自信満々で強いトップであるべきと考えるタイプじゃない。人に頼ることに抵抗はないんです。
これは僕の持って生まれた性質で、何が正解かは人によって違うでしょうけど。
千葉
こうしてお話していても瀬戸さんは物腰が柔らかくて、頼まれた方も快く引き受けたくなるのがわかります。上手に「お願い」をするにはどうしたらいいでしょう。
瀬戸
コツを変に勉強するのも違うというか…、そうすると理屈っぽくなる。マニュアルで「謝罪の仕方」とかを作ってもうまくいくわけではないですよね。言葉を取り繕うよりも「気持ち」「精神」を伝えることが大切。
だから、子どもから親に頼みごとをするような感じというのかな。たとえばアイスを買ってほしいとき、気温や購入頻度とかを根拠にして理詰めで「買ってくれ」と言われても、親としては何かムカつくじゃないですか(笑)。それよりは、日頃の感謝を伝えたりしつつ素直に自分の気持ちを伝えた方が、頼まれた側もいいでしょう?知ったかぶりをしないで、等身大で接するんです。
千葉
等身大の自分を出すのは、なかなか難しい。つい優秀に見られたくなっちゃいますからね。
瀬戸
そうなんです。でも結局は見抜かれてしまいますから。ヘタに自分を大きく見せるよりも、等身大のほうがいい。たとえ足りない部分があっても、「勉強不足ですみません、教えてください」と聞いてきた人に対して、評価を下げる人っていないと思います。
千葉
先ほど「持って生まれた性質」とおっしゃっていましたが、そうしたコミュニケーション術は昔から自然と?
瀬戸
がんばって体得したものではないですね、防衛本能的な(笑)。自分に合った方法をやってきたのかな。僕は本当に気が利かないんですよ、気を利かせようとしても空回りしちゃう。だからもう、弱い自分を隠さない。とはいえ開き直っているわけではありませんよ、気が利かないなりに一所懸命に取り組みます。
食事会をしても、お酌をしたり配膳に気を遣ったりとかが全くできない。その代わり、相手が心地よく過ごせるように、きちんと向き合って興味を持って話を聞きながら、「相手のいい部分を探す」ことが習慣になっています。