女性が活躍するサロン
女性スタッフが辞めない
サロンの秘訣
結婚・出産を経ても女性スタッフが長く活躍している、さまざまなサロンの取り組みや職場づくりを紹介していきます。
vol.113子連れ出勤、ブランク対策…
ママ美容室が必要とされるワケ。
ONEone 二子玉川
東京都世田谷区
二子玉川駅のそばにある「ONEone 二子玉川」は、ママによるママのためのヘアサロン。4名いる美容師は全員が子育て中のママで、レセプションスタッフも今夏に出産を控えるプレママです。お客さまもスタッフも子ども連れOKの店内は、玄関で靴を脱いであがる住宅のようなスタイル。美容室デビューするお子さまがリラックスできるようにとさまざまな工夫が凝らされ、スタッフの子どもたちにも好評です。「ママ美容師が活躍できるサロンがもっと増えてくれたらいい」と語る代表の中山雄太さんに、これまでの取り組みを伺いました。
1取り組み
スタッフの希望を第一にした自由シフト制。
どんな取り組み?
スタッフは全員パートで、出勤日も勤務時間も基本的には自由。週2日出勤で1日4~6時間働くスタッフもいれば、週5日で1日7時間勤務のスタッフも。シフト希望日の提出期限は前月の半ばなので、家族の用事に合わせて仕事の予定を組むことができる。
その背景は?
スタッフの各家庭の子どもの人数はさまざまで、幼児から小学生までと年齢も幅広い。同じママ美容師であっても生活スタイルはそれぞれ異なるため、個々の希望に対応できる自由シフト制を採用した。「店の営業時間が10時~17時までなので、夜の人員に困ることはありません。土日に関しては両方出勤OKというスタッフが1名いるので、基本的には彼女と誰かもう1名というスタイル。場合によっては1名体制になることもあります。でもうちは各時間帯につきお客さま1組のみのプライベートサロンなので、よいバランスで回っていると思います」(中山さん)。
2取り組み
急な欠勤にも対応できる、余裕ある人員配置。
どんな取り組み?
営業時間中、店には美容師2名とレセプションスタッフ1名、中山さんの計4名が常駐。お客さまは、各予約時間帯につき1組のみの受付となっている。多くの場合、お客さまは子どもを連れて来店されるので、ママに1名、お子さまに1名の美容師がつく。もし美容師が1名欠勤になっても、美容師免許を持っている中山さんがシャンプーなどアシスタント業務に入ることで、なんとか乗り切れるような体制をとっている。
背景とメリットは?
子どもの熱などで、ママスタッフが急な休みを余儀なくされることはしばしば。前日までに分かれば他のスタッフに交代を頼めるが、当日の場合は調整がつかないことも多い。それを見越して普段から、余裕のある人員体制で営業している。「休みになった美容師に指名をいただいていた場合は、ご説明して日程を変更してもらっています。お客さまもママさんなので、すぐに理解してくださる方ばかりです」と中山さん。
この人員配置は、スタッフが産休・育休に入る際にもメリットが見込める。「スタッフが産休に入る時、お客さまのお子さまを担当していた美容師に引き継ぐことができます。すでに信頼関係ができていると思うので、まったく知らない美容師にバトンタッチするよりも失客のリスクは低いはずです」(中山さん)。
3取り組み
子ども連れで安心して出勤できる環境。
どんな取り組み?
保育園が休みの日など、子どもの預け先がない時はいつでも、子どもを連れて出勤できる。店はアパートの1室を改装した住宅のような空間で、おもちゃがいっぱいの遊び場やおむつ替え台、授乳スペースなど、ママと子どものための設備が充実。子どもは店内を自由に動き回れる上に、接客中は中山さんとその妻であるレセプションスタッフが一緒に遊んでくれるため、楽しみながら一日を過ごせる。
背景とメリットは?
子ども連れのお客さまがリラックスして過ごせるように工夫を凝らした環境が、ママスタッフにも喜ばれる結果に。店内はお客さま親子1組とスタッフのみの空間なので、周囲への気兼ねも不要。「子どもがこの店にいることで、安心して仕事ができる」とスタッフは口を揃える。「土日・祝日は子連れ出勤が基本です。お客さまの子どもとスタッフの子どもが一緒に遊んで、それがお客さまの満足につながることもあります。『こんなにリラックスできるサロンはここだけです』とおっしゃっていただけたり。店に子どもがいるというのは、いいことだらけですよ」(中山さん)。
4取り組み
定休日の店を、ブランクのある美容師の練習の場に。
どんな取り組み?
定休日の火曜は、スタッフたちに店を開放している。自主練習に励むもよし、自分のお客さまを連れてきて、実際に施術してもよい。その場合は時給の代わりに施術料を支払い、スタッフの技術向上をサポートしている。
その背景は?
「最近入ったママスタッフが、約8年間のブランクがある休眠美容師さんだったんです」と中山さん。ブランク克服のために練習を積ませてあげたいけれど、営業時間が10時~17時と短いため、店が開いている間は難しい。家事と育児があるので、営業前と後にも時間がとれない。そのため、定休日の店を利用してもらうことにした。「営業中でも、お子さまのカットを終えた後、ママのお客さまを別の美容師が施術している間などに、裏で練習してもらうこともあります。ただ、もう少しフォローできるようにしたいので、そこが今後の課題です」(中山さん)。
代表インタビュー
- Q. ママ美容師だけのサロンを開業したきっかけを教えてください。
-
A. 友人の妻であるママ美容師が、育児と仕事の両立で苦労していることを知ったのがきっかけです。
僕はもともとファッション誌のライターをしていたのですが、ある時、美容師の友人から「美容師をしている妻が、育児と両立できる職場環境がなくて困っている」という話を聞きました。しかもそれは彼女に限っての話ではなく、女性美容師が子育てしながら働き続けられる場所が一般的に少ないことを知り、何かできないだろうかと考えるように。ちょうど同じ頃、「子育て中の女性はなかなか美容室に行けない」という話も耳に入って来たので、「ママ美容師による、ママのための美容室」を作ることを思い立ちました。
- Q. お店を立ち上げる際に工夫されたこと、大変だったことは?
-
A. 無料出張カットで方々へ出向き、ママさんたちの希望をリサーチしました。
オープン前にまず取り掛かったのは、店のPRを兼ねての無料出張カットです。友人の妻であるママ美容師と共に、子育て中のママさんの家を半年かけて50件以上訪問しました。そこで「どんな美容室なら子ども連れでも利用しやすいか」をリサーチして、必要なものをぎゅっと詰め込んだのが『ONEone 二子玉川』です。家のように寛げる空間を叶えるため、アパートを店舗にして自分でリノベーションを施しています。遊び場や授乳スペースなどいろいろ設けましたが、ママさんの気持ちが一番よくわかるのは、やはり同じ立場のママさん。ママ美容師が接客することで、お客さまによりリラックスしていただけていると思います。
- Q. 今後さらに取り組みたいと思われていることはありますか?
-
A. ここと同じ、「子育て中の女性が通いやすい美容室」が増えてくれたら嬉しいです。
この店をつくってみて分かったのが、「ママ美容師による、ママのための美容室」にはたくさんのニーズがあるということ。営業時間は短いですし、プライベートサロンのため1日の予約数も限られますが、経営はちゃんとできています。僕らも生活できるし、お客さまもリピートしてくれています。話が大きくなってしまいますが、こういうことから地域が活性化されて、少子化を止められたらいいなと思うんです。多店舗展開は考えていないので、うちと同じコンセプトの美容室が、もっと世の中に増えて行ってくれたらいいなと思います。
Salon Data
ONEone 二子玉川 【ワンワン フタコタマガワ】
- アクセス
- 東急線二子玉川駅東口から徒歩3分
- 創業年
- 2017年
- 店舗数
- 1店舗
- 設備
- セット面2席
- スタッフ数
- 5名(スタイリスト4名、レセプション1名)