女性が活躍するサロン
女性スタッフが辞めない
サロンの秘訣
結婚・出産を経ても女性スタッフが長く活躍している、さまざまなサロンの取り組みや職場づくりを紹介していきます。
vol.116本部との緊密連携で、もっと「人が辞めないサロン」に。
MAQUIA
東京都新宿区
株式会社ミュゼプラチナムが運営し、全国に120店舗を展開するまつげエクステサロン「MAQUIA(マキア)」。2012年の創業から急成長を遂げ、わずか7年で業界屈指の規模に到達しました。現在約480名いるスタッフのうち、約60名がママスタッフ。産休・育休中のスタッフも25名在籍しています。多くの女性が活躍している職場ですが、意外にも数年前までは出産退職が当たり前だったとか。事業規模の拡大とあわせて行われた「スタッフが長く働ける環境づくり」について、MAQUIAグループ経営企画室 室長の久保莉奈さんにお話を伺いました。
1取り組み
パート勤務は自由シフト制。
全スタッフのシフトは本部が管理。
どんな取り組み?
雇用形態にはフルタイム正社員とパートの2種があり、スタッフ本人が希望する働き方を選べる。パートの場合はシフトが完全に自由で、最低勤務日数などの決まりもない。そのため中には、月1~4日ペースで出勤するスタッフも。正社員の場合は固定シフトとなるが、申請すればイレギュラーな曜日での休みも可能。さらに有給休暇とは別の扱いで、年6日間まで自由に利用できるリフレッシュ休暇も用意されている。現在はほとんどのママスタッフがパートを選択。オープンから15時頃まで、子どものお迎え時間に合わせて勤務している。
背景とメリットは?
「『MAQUIA』は、パートスタッフ1名からスタートしているんです」と久保さん。唯一の現場スタッフがシングルマザーだったことから、創業当時のサロンは日曜定休で営業時間は18時までだった。その後に6名の正社員が入り、営業時間が延びていくことに。
「勤務シフトは全店舗分、本部が管理しています。調整の労力はかかりますが、シフトが自由だからこそ働き続けてくれているスタッフも多いはず。それぞれの生活スタイルに合った働き方ができる環境を、これからも提供していきたいです」。
2取り組み
子どもの熱などによる急な休みには、本部スタッフが対応。
どんな取り組み?
予約はすべてコールセンターを兼ねた本部で管理しており、スタッフの急な休みによるお客さまへの連絡も本部が対応している。代わりに施術に入れるスタッフが現場にいれば手配するが、多くの場合は予約で埋まっているため、やむを得ずお客さまへお断りをすることがほとんど。「急な欠勤をフォローするために、休みのスタッフを呼び出すようなことはありません。現場のスタッフに負担がかからない対応を心がけています」と久保さん。
背景とメリットは?
子どもの体調不良などによる急な欠勤は、ママスタッフにとって避けられない状況。しかし、自分のお客さまへの連絡を同じ店舗のスタッフに押し付けるのは、気が引けるもの。久保さんいわく、「そこで罪悪感を募らせてしまったり、無理して出勤したりすれば、働きやすい職場ではなくなってしまいます。緊急事態を身近なスタッフではなく本部がサポートすることで、心の負担を減らせるのではないかと考えました。いつでも気軽に休めると思われてしまっては困りますが、本当に大変な時に安心して休める環境を整えていければと思います」。
3取り組み
頑張るほどに稼げる歩合給で
スタッフのモチベーションをアップ。
どんな取り組み?
正社員もパートも、給料に歩合制を取り入れている。段階的に定めた売上水準を超えるほどに、歩合給の割合が増えていくので、頑張れば頑張るほど収入アップが叶う。さらに、「エクセレントランキング」という評価制度も導入。売上、指名、入客、物販それぞれの成果をポイントに換算し、それらを合算した上位20名のスタッフに特別手当を支給している。このランキングは個人を対象にしたものと店舗対象のものがあり、ダブル受賞するスタッフも。入社1年以内のスタッフに向けては、別枠でランキング制度を用意している。
背景とメリットは?
「『エクセレントランキング』は、スタッフを競争させるために取り入れた制度ではありません。上位に入らないからといって、マイナスになることは一切ないですし、気にする必要はないですよ、というスタンスで行っています。ですが上を目指すスタッフたちには、モチベーションを上げるきっかけにしてもらいたいと思っています」と久保さん。実際に、入社初年度の年収額を、2年目には半年で稼いだスタッフもいる。ただし扶養範囲内での勤務を希望するパートスタッフに関しては、歩合給の適用はない。たくさん働いて稼ぎたいスタッフも、家族との時間を重視するスタッフも、それぞれの希望に合った働き方をこの制度によって実現できている。
4取り組み
社内専用SNSツールで
全社のコミュニケーションを促進。
どんな取り組み?
この春から、社内専用のSNSツールを導入。新商品や新たに始めるキャンペーンの内容、「エクセレントランキング」などの発表、本部から各店舗へのお願い事項などを、社内メールと並行して配信している。
背景とメリットは?
これまでは社内メールで各店舗への情報共有を行ってきたが、当日シフトに入っていないスタッフに連絡が行き届かない事態が多く発生していた。またメールを確認すると、他のスタッフへの伝達義務が生じてしまうため、パートスタッフにとっては社内メールを率先して開きにくい空気があった。「SNSツールを使ってスタッフ各自のスマートフォンで確認できるようにすれば、情報共有がスムーズになると思いました」と久保さん。
このツールにはメッセージ機能もついているため、個人情報は守られたまま、スタッフ同士がコミュニケーションをとることも可能。「例えば沖縄のスタッフが、エクセレントランキング上位の北海道のスタッフにチャットで連絡して、アドバイスをもらうこともできます。ぜひ便利に使ってもらえたら嬉しいですね」。
経営企画室 室長インタビュー
- Q. さまざまな取り組みが行われていますが、最近特に注力されていることは?
-
A. 新人も既存スタッフも学べる研修センターを設けました。
昨年9月、新宿に研修センターを設置しました。これまでは各店舗で研修を行ってきましたが、「2020年までに全国制覇、2年間で80店舗の出店」を目標に掲げたところ、新人育成のスピードが追いつかなくなってしまったのです。弊社は未経験からスタートするスタッフが8割以上を占めるので、研修は重要。地方在住のスタッフには新宿にマンスリーマンションを用意して、約2カ月間じっくりと技術習得に励んでもらっています。既存スタッフもここで新しい技術を習得できるため、仕事へのモチベーションが上がっているように思えます。この施設を活用して、全社で技術の底上げを図っていきたいですね。
- Q. 女性活躍の取り組みを進めてきて、成果を感じていることはありますか?
-
A. 店舗数が増える中、技術や売上も向上していることに成果を感じています。
弊社はスタート時の管理体制が比較的ゆるく、そこに居心地のよさを感じてくれるスタッフが多かったようで、もともと人が辞めない会社ではありました。一方で、出産後に戻ってくることが難しい環境だったと思います。2年前、全国制覇を目標に掲げるにあたり、「スタッフに長く働いてもらえる環境づくり」を意識するようになりました。そこで、本部での予約管理や研修センターの設置、売上に応じた歩合給制度などの取り組みを立て続けにスタートさせてきたのです。既存スタッフにしてみれば、この変革で以前より仕事量が増えた部分もあると思いますが、声を聴くと居心地のよさは変わらず評価してもらえているようです。その結果、80店舗の出店を達成し、ママスタッフも増えました。一連の取り組みの成果が現在、技術や売上の向上に表れているのだと思います。
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