第2章美容モール「THE SALONS」とは?
「ローリスクで自分のサロンが持てる、
安心して独立できる仕組みを。」
さまざまなことをされてきた清水さんが、新たに始めたのが2019年5月にオープンした美容モール「THE SALONS」。美容モールとは、どういうものか教えてください。
ビル1フロアを僕の会社が借り上げ、各15平米ほどの区画に分けてから各部屋にシンクやシャンプー台、施術席を用意して、固定賃料で貸し出す仕組み。1号店の表参道店にはヘア、ヘッドスパ、エステティック、アイラッシュなどの美容サロンが入居しています。
美容師をはじめとする美容職の人にとっては、敷金・礼金や設備導入費などの初期費用なしで、毎月の家賃を払えば自分の個室サロンが構えられるんです。
このシステムの着想を得たきっかけは?
アメリカでは、こうしたサロンビジネスモデルを全米で展開する「ソーラ・サロンズ」が業績を伸ばしていました。最初に「こういうのをやりたい」と教えてくれたのは、いま「THE SALONS」の運営会社の取締役をしてくれている高原卓玄です。それで僕も興味を引かれ、アメリカへ何度か視察へ行きました。
賃貸借の契約や法制度などの環境がアメリカとは違うので、日本でもできる方法を探って、2019年のオープンに至りました。ビルオーナーからすれば「また貸し」になるわけですから、普通はNGですし、他社がマネしようとしても難しいと思います。うちは1年以上の準備期間に法的なものもすべてクリアにしたうえで開業し、現在はこのビジネスモデルの特許を申請中です。
なぜこのようなビジネスモデルに?
日本の美容業界は行き詰まり感があり、サロン出店はリスクが大きい。多くの美容師が夢を抱いて独立し、出店のために1000万円以上の大きな借金をして、だけど美容師の腕はあっても経営の勉強をしたことがないから失敗することも少なくない。僕はそれが嫌だから経営を勉強する学校へ行ったけど、そうではない人たちもローリスクで自分のサロンが持てる仕組みを作りたかったんです。
リスクを少なく独立する方法として、フリーランスとしてシェアサロンで働く人も増えています。そちらとの違いは?
シェアサロンとはまったく別ものだというのが僕の考え。まず社会的立場が違います。シェアサロンで働く人はフリーランスであり、シェアサロンの利用者というだけ。でも「THE SALONS」の入居者は自分の会社を設立・登記して、営業許可証も取得している「開業者」。決算書を毎年作成して営業実績を重ねていくことが信用につながり、銀行や公庫から低金利で融資を受けることもできるようになる。そうすれば、「THE SALONS」内ではなく、好きな場所に自分のサロンを開くこともできるようになります。
こちらをどんな場にしてほしいという考え方ですか。
「ステップアップの場」としてほしいですね。ずっとここにいるのではなく、独立開業の足掛かりにしてほしい。せっかく出店したのに潰れてしまっては夢がないので、潰れないようにサポートします。テナント料は月額固定の家賃のみで、売上の何割かを収める必要はありません。決算書の見方や作り方など経営に関する手ほどきもしています。
「THE SALONS」は不動産ビジネスでもあり、経営者育成の場でもあるんですね。
美容師に限りませんが、美容職の人たちのキャリアプランとしてまずここを目標にしてもらえたら、安心して独立ができるでしょう。
ここで働くことで開業資金と信用を積み重ね、経営の勉強もできる。それに個室空間でサロンを営業できるので、自分の世界観を創りあげることができる。するとどんどん自分らしい色を突きつめ、特化していく。いまは特化した人ほどファンが付いてくるので、顧客も増えていきます。フリーランスでいるのと、うちを活用して経営者として働くのとでは、3年後には大きな開きができているはずです。
僕はフリーランスやシェアサロンを働き方のチョイスとしてはいいと思いますが、美容師の将来像としては推奨できません。もちろん、しっかりとした考えや目標があるならいいですよ、でもなんとなくフリーランスでいるのでは将来性がない。いまはフリーランスを選ぶ人も増えていますが、なぜフリーランスになるかというと、勤めていたサロンの給与や人間関係が嫌だからというネガティブな理由の人が多い。でも「THE SALONS」に来る人はポジティブな理由です。自分のサロンを持ちたい、将来出店する足掛かりにしたい、そういう夢に近づくためにうちを選んでくれています。