第4章美容職の不安を払しょくするために
「THE SALONSを利用して、
幸せな美容人生を歩んでほしい。」
「THE SALONS」の運営だけで収益を上げるつもりはなく、これを基盤に他の事業を展開していくとのことですが?
まずは今春にアプリをリリースします。これは美容師の教育に関するもので、「体験型」のアプリです。アプリを通じて申し込むと月3時間まで「THE SALONS」のサロン空間を無料で使えるようにします。
子どもが職業体験できる「キッザニア」ってあるでしょう?あんなイメージで、「自分のサロンを持っているオーナー美容師」の気分を体験できる。シェアサロンとは違う、自分だけのパーソナルスペースでお客さまを迎える体験をしてほしいんです。
自分自身が美容師じゃないのでピンと来ないのですが、そんなに違うものですか?
全然違いますよ。だってシェアサロンだと隣には自分の顧客とはまったく違う客層の人がいるし、「THE SALONS」だったら好きな音楽をかけたり、自分の思い通りになる個室空間でお客さまと向き合えるんです。「自分の店を構えるってこういうことなんだ」というのをまず体験してもらいたい。
利用料は無料で、アプリ内の課金もない?
アプリの課金制は無理があると思っているので、これだけで利益は考えていません。このアプリは今後、体験コンテンツの他に美容技術や経営に関する教育コンテンツなども組み込んでいき、美容師さん、美容職の人たちの不安を払しょくするために必要な勉強ができるものにしていきます。アプリのもっと具体的な情報に関しては2月に広報予定なので、お待ちください(笑)。
いまは準備段階として将来的に大きく利益を上げていこうと?
はい、2店舗の経営を通して、さまざまなノウハウが溜まりました。そうしたノウハウを生かし、美容師ファーストで店舗をしっかりと拡大していきたいと思っています。そのうえで、家賃収入だけでは限界があるので、さまざまな周辺ビジネスを事業化していきたいと考えています。将来は上場を目指しているので、のんびりやっていくつもりはありません。
ほかに今後の予定は?
美容職の独立支援プラットフォーム「THE SALONS Lab」も立ち上げていて。人気美容師がこれまでの失敗や成功談を話す「美容師しくじり先生」というセミナーを3月に開催します。登壇するのは「THE SALONS」を利用しているオーナー美容師である「sai」のモタイハヤトさんと、「i.」の山内大成さん。これを企画したのは、彼らの話が独立を目指すセミナー受講者さんたちの役に立つはずだという気持ち、そして「THE SALONS」として彼らの名前を業界に売り込みたいという思惑もあります。
なるほど。ほかに「THE SALONS」を利用するメリットは?
彼らのようにお客さまからの支持を集めていても小規模のサロンは通常、メーカーやディーラーに対する影響力が大手サロンに比べると弱い。だけどサロンの集合体である「THE SALONS」として僕から交渉すれば、たとえば材料もまとめて仕入れるから値下げも可能に。そういうスケールメリットもあります。
お話を聞いていると美容師の社会的地位を上げたい、チャンスを与えたいという気持ちも?
もちろんです。今の美容業界を変えたいという気持ちがなければ、このビジネスはやっていません。
僕は、美容業界にある古臭くて不要な考え方が嫌いなんですよ。美容室から独立したら、近くには店を出すなとか、あそことは取引をするなって圧力をかけたりとか、よくあるでしょう?そんなの法的根拠はないけど、美容師はみんな言いなりにならざるを得なくなっている。
本来ならスタッフの独立を応援したほうが「自分も将来はああなれるんだ」と思ってスタッフが集まってくるし、疲弊した美容師がいる店よりも、みんながいきいきと働いているほうがお客さまだって集まってくるのに。現状は、5年後・10年後の将来像を提示することもなく、経営の勉強をさせることもない。なぜなら勉強させたら独立しちゃうし、それは自店にとってマイナスだと考えるオーナーが多いから。
なるほど。
そんな環境で独立しても、失敗してしまう美容師がたくさんいます。「だったら俺のところに来いよ!」っていう気持ちですね。
うちの企業理念は「美容師やビューティシャンの夢と未来を応援したい」。江戸時代の教育施設で、寺子屋ってあるでしょう?「THE SALONS」は、開業を目指す美容師にとって「寺子屋」的な存在になりたい。ここで経営の勉強をして、一生涯、幸せな美容人生を歩んでほしいと思うんです。
私が数年通っているリラクゼーションサロンが銀座に越したと聞き訪ねると、なんと「THE SALONS」の中にありました。サロン紹介や道案内のどこにも「THE SALONS」の名前はなく。これも清水さんが「入れなくていい」と各サロンに伝えているのだとか。“THE SALONS”ではなく、“それぞれのサロン名”が有名になってほしい。それが、ここから次のステージに行く際に大切だと考えているからです。
サロンの新しい形「美容モール」。カスタマーにとってだけではなく、美容師、そしてビューティシャンにとっても、確実に新しい風となりそうです。