「バーバー」人気の理由
今「バーバー」が人気の理由
近頃増えている、従来の理容室とは違う新しいタイプの「バーバー」は、なぜ多くの男性ファンを生んでいるのでしょうか?
ターゲティングやコンセプト、強みなどについて探っていきます。
Barber The GM 梅田店(大阪府大阪市)
予約不要で完全キャッシュレス。
業界の非常識に挑むバーバーとは?
大阪を代表するビジネス街・本町で2018年2月に1号店をオープン。1年後には近隣の肥後橋で2号店を、さらに半年後の2019年8月には梅田で3号店を開いた「Barber The GM」。オーナーの田中慎也さんは理容師ではなく、この業界に関連する仕事をしていたわけでもありません。にもかかわらず、お客さまの心をしっかりと掴み、順調に店舗を増やし続けられるのはなぜなのか。そこには、理容業界の外にいた人ならではの、客観的な視点がありました。
自分の理想を反映したバーバーをプロデュース。
大切にしたのはお客さまの視点。
大学卒業後、会社勤めを経て本町で起業した田中さん。仕事で理容業界との関わりはなく、髪が伸びたら客として散髪に行くだけ。しかも「しょうがなく行く感じ」だったという。「理容室や美容室、1000円カットなどいろいろな店舗を試しました。でも、どれも一長一短あって自分にはしっくりとこない。そのせいか散髪に行く楽しみは感じていませんでした」。例えば、切りたい!と思ったらすぐ行きたいのに、予約が必要な店舗は多い。一方、予約不要のチェーン店に行くと、カットが流れ作業のようで満足感が得られなかったり。気軽に利用できて、しかも行くからにはかっこいいヘアスタイルにしてくれる場所はないものか。「そう思っているのは自分だけではないはず。ならば、自分にとって理想的な店舗をつくろうと考えたんです」。行くときのハードルは低く、帰るときはかっこよく。しかも過ごす時間は快適に。それが「Barber The GM」のコンセプトだ。
ウェブを活用して予約不要制を実現。
髪の長さが急に気になったとき、ちょっと時間ができたときなど、お客さまの「今切りたい」に応えられるよう予約不要の先着順システムを導入。とはいえ、「行ってみたら混んでいて切ってもらえなかった」という状況は避けたい。そこで考えたのが、ホームページ上で各店舗のリアルタイム映像を流すこと。「そのときの混み具合がひと目でわかります。だから待つことになってもお客さまの不満は軽減される」と田中さん。また、店内の設計にあたり、大切にしたのが快適性だ。どの店舗も共通して、ブラウンを基調にした落ち着いた空間。バーバーチェアは左右を木の壁で仕切り、半個室にすることでプライバシーに配慮した。昔ながらの理容室とは異なるスタイリッシュな内装は、居心地がよいだけでなくカットへの期待感も高めてくれる。
お客さまだけでなく、スタッフにも愛されるバーバーに。
男性ビジネスパーソン狙いなら、早さも価値という考え方。
メインターゲットは30~40代の男性ビジネスパーソン。「忙しく働いている人にとって、スピード感も価値のひとつ。だから早さも売りになるはず」。カットの場合、シャンプーとセットを含めて目安にするのが30分程度。仕事中のすきま時間に髪を切りたいという需要も取り込める。接客に関しては、決して長くはない時間とはいえ、なかには散髪中の会話にストレスを感じるお客さまも。だからスタイリストからは必要以上に話しかけないのが基本スタンスだ。また、行くたびに違うスタイリストがカットしても、同じ髪型に仕上げてくれるのがお客さまにとって理想的なはず。「毎回、カット終了後に髪型の撮影をして、クラウドカルテでスタッフが共有することにしました」。タブレットでビジュアル化したカルテは、お客さまの安心にもつながっている。
斬新な報酬形態と業務の簡易化でスタッフを確保。
最初の店舗を立ち上げるにあたり、壁になりそうだったのは「スタッフが集まらないのではないか」ということ。「調べてみると、人手不足といわれる業界でした。要因のひとつは賃金に関すること。できるだけスタッフに還元できる報酬形態をつくり、明確に打ち出しました」。まず、毎月の報酬額として30万円を保証。歩合制を取り入れ、実績額の60%を還元する。月に100万円の売上があれば、60万円が支払われる計算だ。このシステムが受け入れられ、スタッフ募集の問題は解決。「いい人材だけ選べるほど応募がある」と田中さん。歩合制はスタイリストのモチベーションにもなるという。また会計を完全キャッシュレスにすることで、経理面でもスタッフの労力を軽減。理容のプロとして、できるだけ散髪に専念できるような体制を整える。お客さま、そして理容師からも熱い視線を浴びるこのバーバーは今春4店舗目をオープン予定。しばらく快進撃が続きそうだ。
オーナーインタビュー
Q.集客にはどのような手法を使ってますか?
A.ウェブでのプロモーションです。
Google検索で上位に来るよう基本的なSEO対策をしています。SNS広告など有料広告も利用していますが、売上の3%程度で、比率としてはさほど高くありません。路面店なので、通りがかりのお客さまも多い。スタッフに負担がかかり、効率的とも思えないチラシ配りはやっていません。
Q.今後の展望を教えてください。
A.着実に店舗数を増やしていきたいですね。
今は本町で4店舗目の準備をしていますが、大阪以外の地方都市、東京、海外なども視野に入れています。ただ、いつまでに何店舗つくる、というような数値目標は掲げていません。まずは「人を育てられる人」を育成するのが大事。すでに専用の研修施設も用意したので、焦らずに規模を拡大していければと考えています。
Salon Data