美容の未来のために、学びと調査・研究を

美容サロン経営を学ぶならホットペッパービューティーアカデミー

イノベーターが
見ている未来

vol.55

確固たる世界観を持ち、新しい取り組みをしている「次世代リーダー」へのインタビュー。
その取り組みと背景、そして未来についての展望をうかがいます。

「Agu.」グループ 株式会社AB&Company
代表取締役

市瀬一浩さん (age.39)

スタイリストファーストで530店舗超!
業務委託サロン「Agu.」の次なる挑戦。

ヘアサロン「Agu.(アグ)」は2009年に創業。現在は国内47都道府県すべてに出店し、直営・フランチャイズを含め530店舗展開(2020年10月末時点予定)。「Agu.=低価格の業務委託サロン」そんなイメージを持っている人も多いでしょう。驚異的なスピード出店を可能にした理由は、無論それだけではありません。根底に、スタッフに対する市瀬さんの強い想いがありました。

市瀬 一浩(いちのせ かずひろ)さん/「Agu.」を全国に展開する株式会社AB&Company代表取締役。1981年・茨城県生まれ。青山の有名サロンに5年間勤めたのち、27歳の時「Agu.」の前身となる「hair salon alice」を池袋にオープン。

・「Agu.」HP
https://agu-hair.com/salon/

第1章業務委託のメリットとは

「ライフスタイルに合わせて、
一人ひとりのキャリアパスを。」

2020年10月にオープンした、沖縄「Agu hair kanasa 浦添店」

「Agu.」さんといえば業務委託で大規模チェーンに拡大した先駆けですが、業務委託のメリットを教えてください。

弊社で働くスタイリストの方々は、9割以上が業務委託になります。働く側からみたメリットで大きいものとしては「多様性」です。スタイリストのライフスタイルもさまざまなので、そのときどきで「働く環境を自分でカスタマイズできる」というのが非常に魅力だと思いますね。11年前の創業当初より現在は、さらに魅力が増しています。

スタイリストの中にはお子さんがいらっしゃる「ママさん美容師」も多いとうかがいました。

そうですね。特に地方では、たくさんのママさん美容師が活躍してくれています。いろんな働き方があります。たとえば、朝9時に出勤して午前だけ働いて帰る方、アクティブな方だと、9~15時まで働いてからお子さんを保育園に迎えに行く方も。さらには、保育園に迎えに行ったあと、またサロンに戻って働く方もいます。一度「Agu.」の籍を離れたとしても、戻ってきやすい環境があることが弊社の強みですね。一人ひとりに、いかにパーソナルなフォーマットを提供できるかだと考えていて、常に向き合い方を大切にしています。

今後さらに「働き方の多様性」を広げて、「休眠美容師(美容師免許を持っているけれど働けていない人)」の方に、どれだけ適した働ける環境・時短でのやりがいを提供できるか、というのが鍵になると思います。

逆に、業務委託で難しかった点はありますか?

業務委託契約ですと、どうしてもマネジメントが難しい部分があります。創業当初はスタイリストに関しては離職・離反といったことも、日常茶飯事でした。お客さまからも、ときに厳しい声をいただくことがありましたが、対応に不備があったり、そこに対してスタイリストにフォローやケアが間に合っていない状況でした。内部体制の未熟さから、たくさんご迷惑とご心配をかけてしまったと思っています。

うまくいくようになった転機は?

「問題は常に起きるもの。その都度、解決策は現場内部にヒントが落ちている」と思っています。フランチャイズオーナーやマネージャーには現場のスタイリストと同じ目線での対話を大切に、店長にはアンテナをはり店内の些細なサインも見逃さないように、スタイリストと常にリアルコミュニケーションを大切にしなさい、と指導するようにしました。結果、解決までのスピード感が上がったように感じています。

現場との対話、ないしは会社間を超えてのリアルディスカッションを重ねて、1~3年、3~5年といった中期計画や予算を一緒に考えます。10年後を見据えたとき、その通過点に向かってどのようにPDCAをまわしていくか。それはいまも続けていて、当たり前だと思うことをいかに精度を上げて継続できるかだと感じています。

現在、30名近いフランチャイズオーナーがいますが、多いときだと週に1回以上会うことも。ときにマネージャーにも同席してもらい、店舗マネジメントなど僕からアドバイスさせてもらったりしています。迷惑に思う人が大半だとは思いますが(笑)。

意図は2つあって、1つ目は現場のリアルボイスを常に耳にしておきたい、という私の信念。2つ目はフランチャイズオーナーとマネージャーや店長との距離感や関係性、もっと言えばフランチャイズオーナーが部下をどこまで把握しているのか?真剣なのか?部下は上司を信用できているか?を少しの時間でキャッチアップすることが可能です。この2つは会社運営にとって、とても重要だと感じています。

ちなみに業務委託の場合、完全な歩合制ですか?

はい。材料費などの諸経費を引きますが、歩合率は約65%で設計しています。指名やフリーで差はあるものの、大体それくらいのパーセンテージです。「Agu.」はおかげさまで新規集客が多いこともあって、ほかのサロンで指名があまりなく不安を抱えてきたスタイリストも、心配や不安なくお客さまを担当できるチャンスがあります。

かなり高い歩合率ですね。また「日払い制度」もユニークだなと思いました。

業務委託スタイリストの場合、基本的に「日払い」で報酬をお支払いしています。弊社はレジに高機能のPOSシステムを使用していて、スタイリストごとに、その日に仕事した金額がボタンひとつで自動的に計算されて出てきます。そのまま現金を受け取って帰れる。不正防止など含めて、マネジメントする側も管理しやすいシステムになっています。

なぜ「日払い」に?

美容師時代、青山のサロンで働いたあと、独立前に少し日払いのサロンで働いたことがあったんです。自分が働いた対価が、その日のうちに評価されることに、強烈なインパクトを受けました。モチベーションを毎日持続しやすいと感じて、「Agu.」でも日払いにすることにしたんです。

また、報酬に関して一部店舗で新たに運用しているものがあります。業務委託のスタイリストは毎年一回、確定申告をする必要がありますが、個人でその全ての作業をすることが苦でもあります。なのでシステムに登録すれば、全面的に申告プロセスをサポートできる仕組みをつくりました。

それはとても助かりますね。ちなみに正社員の採用状況は、いかがですか?

2018年4月入社から、新卒の正社員採用も始めました。その頃、特に地方のフランチャイズ店舗での採用がスムーズにいかない時期だった、というのがあり。フランチャイズオーナーと協議を重ねて、30年後、50年後のグループ全体での成長を考えたときに必要だろうと。それで正社員採用に踏み切りました。昨年はグループ全体で50名以上の新卒を採用しました。

採用の基準は?

新卒においても業務委託においても、求めるペルソナ(人物像)は変わりません。基本的には、清潔感があって、やる気があって、目標が高くて、夢があって、といったところです。

そのつながりで、印象深い話があります。弊社は入社式のときに、その年の採用者全員に檀上に立って決意表明をしていただいています。入社式に現フランチャイズオーナーもいたのですが、名指しで「この人たちを超えてみせる」と言った子がいて。非常にかっこよくインパクト大でした。

叶えられるかどうかはさておき、自分の夢・目標がしっかり言語化できる人は、壁にぶちあたったとしても回避できるパワーを持っていると思うんです。特に業務委託というのは、自分に厳しく、なおかつ自己分析・自己管理ができないと、成長していくのが難しい局面もあるのではないかと。なので、その成長のエネルギーになれるよう、弊社しかできない環境づくりに力を入れています。

  • 2019年度の入社式にて

123
業界TOPインタビューの記事一覧へ

おすすめの記事

注目の動画

連載記事ARTICLE

  • 新着
  • ランキング

動画ランキングMOVIE

ホットペッパービューティーアカデミーに
会員登録をして、
美容サロン経営に役立つ動画
を見よう!