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第2章顧客深度の先にある、ノンブローカットとは

「ブローをしないお客さんがほとんどなのに、
美容室でブローをする“当たり前”に疑問を感じた。」

6月にオープンした「Cocoon銀座店」。中心メンバーの泰斗さんとSHUNさんは、ともにCocoon創立時からのスタッフ。店長となった泰斗さんの希望もあり、銀座の地を選んだ

VANさん考案の「ノンブローカット」は時短にもつながります。そういったところもコロナ禍で支持されているのでしょうか?

よく「時短メニューや時短カラーがコロナ対策」というけれど、それって美容室都合の“集客文句”なんじゃないかな、って。時短でできるなら、コロナに関係なく、お客さんは時間が短いほうがいいに決まっている。「ノンブローカット」を12年前から試行錯誤してきたのは、そんな“お客さん目線”からです。

時短は、たまたまコロナ禍にフィットしただけですね(笑)。積み重ねてきたこの技術が、顕在化しただけというか。流行りではなくスタンダードなので、来年になったらダメということはない。今年はコロナの影響で、ノンブローカットのセミナー講習がほとんどなくなってしまいました。でも美容師さんが、美容師さんとして長くやっていくために、この技術を「ニュースタンダード」にしていきたいですね。モノは一瞬で消えるけど、培ってきた技術は、時代がどうなろうと、誰にもとられないから。

「ノンブローカット」は削ぐのではなく、いわば重ねていく作業。毛流通りに切っていくから、余計な削ぎが不要で、髪のキューティクルが多く残りツヤがでる。美容室での会話で「クセがあるからストレートに」「量が多いからたくさん梳きましょう」など、元々のコンディションを“否定”することから入る場合がありますよね。そうではなくて、お客さんごとに髪は違うので「この髪をどう活かしましょうか」ということが「ノンブローカット」の基本的な考え方なんです。

時短にばかり目がいってしまいましたが、「ノンブローカット」は、お客さんにとっていいことがたくさんあるんですね。この技術が生まれた、きっかけは?

僕は8年アシスタントをして、27歳でスタイリストデビューしました。でも月200万円の売上でビターッと止まってしまって、そこから4年半まったく伸びませんでした。服装を変えたり、喋り方を変えたりと、ずっと模索していました。すると5回目、6回目のお客さまが来ていないということに気づいたんです。結局、自分のカットがヘタなんだと。自分のカットの質を変えないと、次に来たとき、お客さんの髪がパサパサになってしまう。あと、お客さんのほとんどは、家ではドライヤーで乾かすだけでスタイリングのときにはブローをしていないのに、美容室ではほとんどブローで仕上げをしている。それはおかしいのではないかと、矛盾を感じ出したのも、この頃からでした。

お客さんが家でやらないことに、技術を使っても仕方がない。それで、ブローをしないためにはどうしたらいいのか…と考えるようになって、行きついたのが「ノンブローカット」でした。「感覚で切ってるの?」と言われることもありますが、むしろ逆。感覚がない自分に劣等感があったくらいなので。この前はこう切ってこうだったから…というのを、12年間、何パターンも試行錯誤してきました。「ノンブローカット」は、いまもまだまだ進化中です(笑)。

長い年月を積み重ねて、生まれた技術なのですね。

お客さんの言う通りのことをやると、ベストではない場合もある。言いなりになるのではなく、何割どこで落ち合うかは、その都度違う。それを僕は「間感(まかん)」と呼んでいます。間の感覚です。お客さんとの間、空間としての間、人としての間…、“人” 対 “人”だから、感じ方は人それぞれ。だから難しい。スタッフには、美容師として「間を鍛えること」を重視しています。

美容室のカウンセリングで、お客さんと美容師さんが一緒にヘアカタ(ヘアカタログ)を見ている光景がありますよね。うちでは、お客さんとのやりとりに極力、そのやり方は使わないんです。ご飯屋さんでたとえるなら、それって「仕込み」をしていないようなもの。お客さんが来てから、メニューを考えている状態だと思うから。

一緒にヘアスタイルを探して、「これどう?」って言われても、お客さんには専門知識がない。そのモデルが好みの顔だとか、写真のムードとか、そういったもので判断してしまいがちです。このすれ違いが、お客さんと美容師のモノサシの違いであり、深度のズレ。このズレがなくなっていくほど、「顧客深度が深い」ということです。お客さんが求めているものを、「間感」で理解し、チューニングしていくことが大事なんです。

あとは、たとえお客さんの希望であっても、傷んでいる髪にパーマをかけない、とか。このあとも続くお客さんとの関係を見越して、長い目で見て、最良の提案をする。「その場だけ」の提案はしません。

  • 「ノンブローカット」は仕上げのブローが不要&カットの工程も徹底してムダを省いているので時間短縮に。なにより、お客さまが家でもスタイルを再現しやすいのが魅力

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