第2章コロナ禍での、新しい挑戦
「やりたい、とかではない。
挑戦は“しなきゃいけない”。」
現在の店舗展開について、教えてください。
2017年、29歳のときに「siki」をオープンしました。2店舗目は、本当は違うエリアで検討していたのですが、「siki」の隣にある一軒家をリノベーションしたギャラリーの雰囲気がすごく気に入ってしまい。物件のオーナーを口説き落として、借りられることになりました。そこが2020年1月にオープンした「siki factory(シキ ファクトリー)」です。続いて4月に「type(タイプ)」を埼玉県・大宮に、という流れです。
なぜ大宮に?
僕のビジネスはすべて、人との巡り合わせで。「type」の代表を務める渡邊 涼は、もともと知り合いでした。彼は「埼玉の浦和近辺で独立したい」という想いがあり、僕も埼玉出身なので、いつかは大宮に店舗を出したいと思っていましたが、任せられる人がいなかった。お互いの希望が合致したんです。サロン名は「siki 大宮」でやるほうが、集客や採用は増えたかもしれない。でも表参道の「siki」で働きたいスタッフが、会社の事情で大宮に異動になると、本意でない場合もあります。なので別法人にして、「type」と名前も変え、みんなが満足できる形にしました。オープンは4月の緊急事態宣言直後。どうなることかと思いましたが、現在は集客も順調で、ずっと満席が続いています。
2020年12月には、静岡にも店舗を出されましたね。
名古屋の「LOREN(ローレン)」代表 菅谷 遼将さんと共同で、静岡にフリーランスの業務委託サロン「Laundry(ランドリー)」をオープンしました。菅谷さんとは2年半くらい前に、僕がセミナー講師として「LOREN」に呼ばれたことがきっかけで、仲良くなって。コロナによる自粛期間で考える時間ができたこともあり、4月か5月くらいに「一緒にやりませんか?」と誘いました。
静岡にしたのは、名古屋の菅谷さんと東京にいる僕が、お互いに行きやすいところで、間をとって。今までは、東京や名古屋といった“人が集まる場所”は魅力でしたが、コロナ禍ではリスクになる。その点、静岡はSNSやコンテストで活躍している美容師さんも多く、これからもっと盛り上がっていく街です。デザインも尖っているし、クリエイティブ面で、今は東京と地方の差はないですね。でも一方で、静岡は集客・ブランディングに悩んでいる人が多いと思います。僕たちがサロンをオープンすることで、エリア全体を盛り上げることができれば、という気持ちもありました。
業務委託サロンにしたのは、なぜですか?
コロナを経て、より一層、自由な働き方が求められています。今は、フリーランスという働き方に勢いがある。スタッフに対しても、働き方の選択肢を広げられるのは、いいことです。「Laundry」は、教育系サロンとフリーランスサロン、それぞれのメリット・デメリットを考えて、ミックスした感じです。業務委託だけど、「siki」や「LOREN」の技術を吸収できる環境や教育、独立支援サポートがある。ゆくゆくは、こういった形がベーシックになっていくのではないでしょうか。
店舗展開だけではなく、2020年8月から「オンラインサロン」もスタートされました。
「KIDS(キッズ)」という美容師さん向けのオンラインサロンを、名古屋のヘアサロン「jurk(ユルク)」代表 沢井 卓也さんと立ち上げました。4月の緊急事態宣言のとき、サロンを営業したり、発信することが不謹慎という向きもあり、ネガティブな雰囲気になっていた美容師さんもいたり…。そこで、SNS上で仲良くなった沢井さんとインスタを開設して、技術ライブを配信しようと。美容師さんに、クリエイションを楽しむ気持ちを、思い出してほしかったからです。
当初、収益化は考えていなかったのですが、やっているうちに「無料だとフェイドアウトしやすい」と感じて。そこで「質と量を上げて、学びたい環境の人に、きちんと学べるものを」と、月額2000円(税別)のオンラインサロンに形を変えました。
内容は、どういったものですか?
カット技術やトークなどのライブ動画が中心です。あとはオーナー目線でのブランディング・教育から、おすすめのカラー剤レシピまで幅広く。インスタでは見られない内容を意識していますね。コロナが落ち着いたら、オフラインイベントをしたいという構想も。
8月1日にスタートして、現在は500名弱のメンバーがいます。共同代表の伊藤は、別のオンラインサロン「七つ葉」をやっていて、こちらは写真や動画を通して美容を伝えていくもの。「KIDS×七つ葉」のコラボで、フォトコンテストも行いました。2000弱くらいの作品が集まって、すごく盛り上がりました。
スタッフも、僕や伊藤がやっているオンラインサロンに入っています。そこもひとつの「教育の場」になっていると思います。
コロナで大変だったかと思うのですが、次々に新しい挑戦ができるのは?
逆に、「なんでみんな新しい挑戦をしないの?」って思います。やりたいとかではなく、やらなきゃいけない。生き残るため、スタッフがずっと働ける環境をつくるために、何もしないで現状維持は、落ちるだけなので。僕はいつも、逆算して考えます。こういう世の中だから、これを仕掛けたらこうなる、というように。「type」や「Laundry」って新しい仕掛けに見えるかもしれませんが、未来を見据えた先行投資的なものです。
今は、サロンのブランド力を高めるために、いろんなことに挑戦しています。ブランドが強いことが、長く続けるために大事なことだと思うので。