第2章独自の教育&採用
「厳しいことも、正直に。
ウソをつかない採用面接。」
次に、OROの教育カリキュラムについて教えてください。
「技術指名売上で月100万円を達成する美容師になるため」の教育プログラムで、創業時から取り組んでいます。うちは新卒しか採らないので、イチから育てあげる形です。
「デビュー前カリキュラム」は週に1回。自由参加で、担当講師が勉強会を行います。デビューまでの平均期間は2年半、最短で1年11カ月だったスタッフもいます。
「デビュー後カリキュラム」は、年に8回・1年間の実践プログラムで、デビュー後の伸び悩みをサポート。美容師になった以上は、月に最低100万円は売り上げられるように育てるのが会社の責任。だから、今どき珍しいくらい厳しいかもしれません。
厳しい、というのは?
怒るわけではないですが、合格する基準が厳しいです。求めるレベルが高いというか。その基準に達するまで褒めないし、合格させません。
OROが目指すのは、「落ちこぼれは、誰一人つくらない会社」。このプログラムを受けて、一年以内に指名売上100万円に達しなかったスタッフは、創業して7年、一人もいません。
それは、すごいですね!
僕が、美容師人生の中で一番苦労したのは、コロナでも独立でも2店舗目でもない。ジュニアスタイリストのとき、「売上100万円を達成するまでの期間」でした。休みなく働いて、練習して、技術セミナーに行き、接客もがんばったけど、100万円にいかない。当時の店長に、自分に何が足りないか聞きましたが、「技術も接客もちゃんとしているから、わからない」と言われて…。「もっとがんばるしかない」と、僕はさらにがんばって達成したけれど、みんながみんな、できることではない。それが、「ジュニアスタイリスト100万円育成プログラム」のもとになっています。
まず、「なぜ指名がつかないか?」を分析しました。ベテランのトップスタイリストとジュニアスタイリストの違い、それは“技術の差”というシンプルな問題だけではありません。トップスタイリストはお客さま全員を「自分が思う最高の状態」で、帰すことができている。一方、ジュニアスタイリストは「自分でもどこか反省を残した状態」で、帰している。それだと、いつまでたっても売れない。
「担当したお客さま全員」を最高の仕上がりにできる。それが売れっ子になれるかどうか、ということですね。
人気のトップスタイリストを分析すると、メンズを3人切ったとしたら、結構同じ髪形になっていることが多いんです。つまり自分のおすすめスタイルを持っていて、それをもとにお客さまごとに合わせていくんです。結果、みんな似たスタイルになるのですが、お客さまは満足してくれて、自分にも自信がつく。
それにならって、「必殺のフォーマット」をつくりました。ショートならこれ、ボブならこれ、ミディアムならこれ、といったように、ある程度“鉄板”のスタイルを決めて、効率化する。それまではカウンセリングで、お客さまの希望からどの髪形にするかを無限にマッチングする必要があったのが、フォーマットの中からひっぱってくればいい。何回もやっているうちにマスターして、得意なスタイルになる。すると、そのスタイルのカウンセリング・カット・スタイリング、すべてが上手くなって、自信が生まれます。
「このフォーマットを理解すれば、絶対全員、指名売上100万円いっているから大丈夫」という、“未来の保証”があるので、カリキュラムもがんばれます。
スタイリストになったとたん練習しなくなる人も多いですが、うちはスタイリストになっても練習する文化。1年間のスケジュールで宿題を出しながら練習するうちに、決まったフォーマットだけではなく、さらなる“技術と心”が身についてくる。そうすると、自ら「練習したい」と思うようになります。
なるほど。だからでしょうか、OROは離職が少ないのも特長ですね。
美容室は、3年で8割辞める、と言われています。これは異常ですよね。今の時代は、福利厚生があり、初任給18万~19万円、長時間労働もない、というサロンが増えた。でも、離職率は下がらず、むしろ上がっている。これは、福利厚生や給与面など「条件」でサロンに入るから、ズレが起きるのでは。
うちはスタイリストになってからの歩合や給与水準はかなり高いですが、初任給が特別多かったり、休みが多く取れることをウリにはしていません。でも離職率は1ケタで、10%いったことはない。創業4年までは、結婚・妊娠の事情を除いてゼロでした。それは、「OROには未来への希望があるから」だと思います。
労働時間、手荒れ、人間関係…これらって、美容師になろうと思ったときに、みんな一度は想定しますよね?だから、その理由で辞めるのはおかしい。びっくり仰天!という理由で辞めている人なんていない。やっぱりそうだよな…っていうテンションです。
自分は根性があるので、勤めていたときも辞めようと思ったことは一度もない。夜中まで働いたとしても、休みがないとしても、嫌だと思ったことがなかった。だけど、他の人はどうして辞めてしまうのか?
みんな「独立する」とか、「人間関係」とか、いろいろ言って辞めていくけど、真の理由は、“未来への絶望”なんじゃないか、と。「自分のなりたい自分」になれるのなら続けられる。僕は、「やりたいことが叶う」と思っていたから、嫌じゃなかった。自分より手が荒れている人を見たことがなかったけど、手荒れの先に、こんなスタイリストになりたいと思う気持ちがあったからがんばれた。
だから、求人のイベントや説明会で、僕は正直に言うんです。「やる気のある子としか仕事したくない。なんとなくサラリーマン美容師を楽しみたいなら、うちよりいいサロンがある。OROは、美容師をガチでやっている本気のサロンやねん。そうじゃない人は、ジャマせんといてな」と。
迫力がありますね(笑)。
僕はこんな感じなので、話を聞いた10人中、7~8人は「この人ムリ!」って思うでしょう。でも求人で大事にしているのは、風呂敷を広げることではなく、自社に合う子しか採らないこと。だから入った時点で、OROのファンになってくれていると思います。
面接は、どのようにしていますか?
僕が全員とします。短時間で面接しているところもありますが、15分やそこらで、その子の人生は決められない。美容学生がサロン見学にきてくれたら、僕が直接、一人につき2時間は話します。おもにその子の聞きたいこと、質問に対して、時間を使います。年間60人くらいいるので、それだけで120時間。「自社に入ってもらうように口説く」とかではない。給料も労働時間も厳しさも、ぜんぶ正直に言って、あとは自分たちで判断してもらう。なので、うちでは入ってから「知らなかった、聞いてなかった」は通用しません。
できないことを、できるとも言わない。たとえば、都心や東京には店を出さないとか、きちんと伝える。ただし、できると言ったことは、必ず実現します。海外に店舗を出すと言ったら絶対出すし、2021年6月にはカフェの出店も予定しています。ウソをつかない、裏表がない。そうすれば、入社後ギャップを感じることなく、離職率の低下につながります。
サロン見学でじっくり話しているので、そのあと履歴書を送ってくる前の時点で、合否は大体決まっています。でも例外的に、不合格だと考えていたけど面接で号泣して「絶対ここに入りたい」と言った子は採ったり、逆に合格のつもりだったけど相違を感じて落とすことも、もちろんあります。
面接が15分だけだと、相手もウソがつける。大体、みんな言うことは同じです。「部活を中学・高校の6年がんばりました。キャプテンをやっていました」とか。世の中にキャプテンて、そんなに多い?って思う(笑)。その子の本質を知ろうと思ったら、2時間は必要。うちにマッチングする、本気の子だけを選びます。