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第3章描いている、美容師そして業界の未来

「誰から見ても“かっこいい職業”になる。
 そのために必要なことは2つあります。」

エザキさんが描くサロン、そして美容業界の未来は?

美容師が、誰から見ても「かっこいい」職業になっていることです。それを実現するために必要なことは、大きく分けて2つあると思っています。
ひとつは、「美容師の可能性=仕事の幅を広げること」です。僕は常に「鏡の前でできることはすべて美容業ととらえることができる」と思ってやってきました。美容師の職域を広げることで、外の業界から見ても「かっこいい職業」になる、そうすれば美容師になりたい人も増えるのではないかと思います。美容業界の人材不足は、少子高齢化によって今後ますます深刻になります。美容師になりたい人を増やしたい、優秀な人に集まってきて欲しい、だから美容師が素晴らしい職業であると発信していきたいんです。

美容師を2つの側面から「かっこいい職業にする」ということですが、「職域を広げる」以外にもうひとつは?

加えて、美容師の給料を上げることです。僕は長崎の進学校に進み、当時は「母親に負担をかけてまで大学に行くより、早く仕事をして楽をさせたい」と思い美容師の道を選びました。でも当時、まわりの大人からは反対されました。僕の場合は23歳くらいで月収200万円を超えましたが、この業界では特殊なことだと思います。もしかしたら給料が低いという理由で、親から「美容師になってはダメ」と言われている人もいるかもしれない。
給料を上げるということは、本人だけでなくその家族の幸せにもつながると思うんです。そういえば、少し前に石川県の金沢にあるとある有名なお寿司屋さんに行きました。80歳くらいの大将が握ってくれるんですが、遠かったけど「このお寿司を食べるためだけに金沢にまた来たい!」というくらいおいしかったんです。僕も同じ世界を目指したいと思いました。そうすることで、美容師の地位を向上させ、美容師が憧れの職業になることを望んでいます。
僕はもうすぐ子どもが生まれる予定ですが、自分の子どもに美容師になって欲しいか?と聞かれたら・・・今はそうは思えない。だから自分の会社だけ良くするのではなくて、どこのサロンでも自信を持って送り出せるような業界にしたいんです。

エザキさんが描く「かっこいい職業」である美容師という未来は、いつ頃実現しそうですか?

100年はかかるかもしれないですね。僕がこの世にいないとしても、「grico」「Multiverse」の仲間を始め、その意思を継いでくれる仲間がたくさんいます。
この間、たまたま見たTwitterで、ある2人がこんなやりとりをしていたんです。
「A:美容師って社会保険とか払ったら、給料少なくて生きていけないよ」「B:だから辞めた」「A:だけど僕、もう一回美容師やろうと思う」「B:え、なんで?」「A:だってエザキさんみたいな美容師いるじゃん」「B:そっかぁ。それなら応援するよ!」
そんな内容だったと思います。それを見て、すごくうれしかったですね。だから今、業界における次のあり方を僕が見せないと、って思います。そうやって道を開いていけば、きっと仲間が思いを引き継いで、未来にはその世界が実現すると信じています。

エザキさんご自身の、50年後くらいのイメージを教えてください。

例えば、自分のこめかみあたりをタッチしたら映像が目の前にパッと出るとか、そういう時代が絶対来ますよね。自分が60歳、70歳になった時、若い子たちに「知らねえよ、こんなオッサン」とか言われながら対談したいですね。今現在僕がやっていることに対して、その子たちに「もう古いよ」って言われたら、うれしいです。そんな未来であって欲しい。
もう6~7年、雑誌の表紙や巻頭をやり続けている僕が「若手」なんて呼ばれる業界は、おかしいですから。早く次の人たちが出てきて新陳代謝を起こしてくれることが、美容業界の成長につながると思っています。
 美容師という職業は、お客さまと数カ月に一回会えて、言葉のプレゼントをあげることができる。そして同時に、お客さまから幸せをもらえる素晴らしい仕事です。鏡の前から生まれる仕事をすべて美容業ととらえれば、僕たちにできることは、きっと無限にあるはずです。

  • 「お客さまとかかわれる最善の方法だから、生涯美容師でありたい」とエザキさん

 「grico」で働くスタッフのお一人にエザキさんについて聞いたところ、こんな答えが返ってきました。「こちらが心配になるくらい、いつも人のことばかり考えているんです。年は自分とそんなに変わらないけれど “お父さん”のような存在です」と。エザキさんご自身は父親のいない家庭に育ち、その環境の中で人に感謝することを学び、そして今「かかわる人すべてを幸せにしたい」と繰り返し言いました。
 その華奢な体からは想像がつかないほど大きな心で、“サロンとしての”だけではなく、“美容業界の未来”を支える大黒柱。今のエザキさんの存在を、そんな風に感じました。

エザキさんが「家族」と呼ぶ、スタッフの皆さんと

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