第3章美容業界でのミッション
「今の不安をなくしたい。さらには
未来の不安をどれだけなくせるか。」
シェアサロンが増えていますが、SALOWINの強みは何だと考えますか?
うーん、そこまで違いはないと思います。あるとしたら、小さい差。どこもかっこいいし、立地もいい、還元率も5%~10%違うくらいです。還元率については、今はうちが一番高水準、という自負はありますが…。2~3年後くらいに、各社の色がついてくるのかなと思っています。
でもシェアサロンが、ニューカテゴリーだとも、美容業界を変えるとも思っていません。あくまでも、働き方の「選択肢のひとつ」というだけ。
正社員でも開業でもフリーランスでも、どの選択でも個人的には良いと思っていますが、今自分たちは「シェアサロン」をやっているので、そこを磨き込むことに集中しています。
ちなみにSALOWINは、創業して最初の一年間、まったく広告を使いませんでした。自分たちが、いくらいいと思っても、美容師がいいと思わなかったらダメ。短期的に稼ごうと思ったら、バンバン広告を打てばいいのかもしれません。
実際、働く場所を変えるのって結構なパワーが必要なので、1回契約したら、もし仮に嫌でもすぐに変えるのは難しい。
だから大げさな広告などで、人を騙すようなことは絶対にしたくないし、そんなことをやるためにSALOWINを作ったわけではないので、美容師から良いと思ってもらえる環境を作れるまで広告は封印していました。
その際、重要な指標にしたのは、良い場所であれば、使ってくれている美容師が自分の知り合いを紹介したくなるだろうと思ったので、どうしたら良い口コミが生まれるのかをすごく意識していました。
シェアサロンは今後どうなると思いますか?
シンプルに店舗数は増加すると思いますが、正社員サロンや業務委託サロンと比較すると、想像以上の速さで淘汰も生まれると思っています。
なぜなら、シェアサロンのバリューは基本的に同じだからです。立地、内装、価格、使いやすさ、本部サポート、一緒に働く美容師…という具合に価値が固定化しやすく、差別化が難しい業態だからです。
差別化が難しいと価格競争が生まれやすいので、利益を削って美容師を集めようとします。こうなると、誰も儲からない。儲からなければ投資ができないので変化できずに自然淘汰される。
これが想像以上のスピードで起きると思っています。だからこそ、VC(ベンチャーキャピタル:高い成長が予想される未上場企業に対して出資を行う投資会社)など外部資金を調達し未来に向けた投資が重要になると考えています。
具体的には?
シェアサロン事業は、「今」の不安を所得面や労働環境面で、一定の価値提供ができていると思っていますが、「未来」の不安に対しては価値提供ができていないのでは。
この未来の不安を解消するためには、さまざまな選択肢を提供できないといけない。だからこそ、SALOWINという会社は、規模を拡大し提供価値を増やす必要があると思います。
外部資金を調達している理由は、「店舗数を増やす」というだけでなく、たくさん失敗ができる、というメリットがあります。
小さく実験的にトライして、伸びるものを探したり、テストしたり出来るので、明確な手段を大々的に掲げるというよりは、いろいろと試しているフェーズになります。
ただ、ブレてはいけないのが、ミッションにある「美容師の所得向上」「労働環境改善」「一生涯働ける場所の提供」の3つです。
特に、将来の不安を解消するためには、「一生涯働ける場所の提供」が鍵を握ります。美容師としてのキャリアが引退後も活用できるようにいくつかのサービスを仕込んでいます。
その具体的な部分は秘密にしたい。というよりは、これだけ変化の激しい時代において手段だけが一人歩きするのはリスクだなと思っていますし、掲げることで意地になってしまう。そうじゃなくて、「柔軟に失敗して学ぶ」これをどこよりも速く、多くやる。
それが、SALOWINの強みだと言いたいです。
「失敗の数だけは美容業界No.1です!」と胸を張って言えるように、2~3年後くらいには、しっかりと形にしてミッションに近づけたいと思っています。
でも阿部さんは、シェアサロンか、そうじゃないかは、どうでもよかった。
「美容師を、幸せにする」
シェアサロンは、そのミッションに到達するための、ひとつの形でしかありません。
IT業界での経験を活かして、さらに猛勉強もして、本部機能をたった2人でまわす。髪は切れないぶん、それ以外のありとあらゆることを自分でやり、利益を少しでも美容師にまわしたい、と語ります。
数えきれないシミュレーションを行い、道筋を考える。大口を叩いておいて、戦略変更になると騙すようになってしまうから…と、詳細は多く語ってくれませんでしたが、「近々あらたなリリースを出す予定」とのこと。今後も、その動向に注目していきたいです。