第2章店長をおかない理由
「働く仲間は“上下”ではなく
ひとつのコミュニティ」
「プロダクション型経営」について、どのようなものか、教えてください。
スタッフ全員を「タレント」と考え、一人ひとりの個性を最大限に活かす。それを「プロダクション型経営」と呼んでいます。
僕は芸能人の方と関わることが多いのですが、みなさん、自分の個性を活かしているから輝いています。美容師・エステティシャンも同じではないかと。みんなそれぞれ、違う色を持っています。その一人ひとりの色を活かす=カラフルな企業でありたい。
自分の個性に気づいていない子には、話しながら魅力を教えてあげます。それがハマると、どんどんイキイキしてきて、主体性が上がり、さらに成長していきます。
本業である美容師をやりつつ、「花屋」「アクセサリー製作販売」「グラフィックデザイナー」として活躍しているスタッフもいますよ。
美容師以外の「場」を用意するのは、大変では?
それをやるのが好き(笑)。まつエクやりたいという子には、サロン内にスペースをつくったり。ボディジュエリーをやりたいと言われたら、教えてくれる先生を呼んだり。
「挑戦する風土」をつくることが大事です。この業界を去る人が多い理由って、やりたいことを叶えられないから。だから、「居場所づくり」が大切だと思っています。
「美容室」というプラットフォームが、“人の縁”をつくり、異業種を含めた出店につながる。そこから、また“人の縁”が増えていきます。全力でギブして、相手に勝ってもらう。すぐに収益化しなくてもいいと思っています。僕は自分でオンラインサロンを主宰したり、コンサル業・商品開発などもやっているので、そこでの収益を美容業への投資にまわすことができるので。まずは、スタッフがやりたいことをできる環境をつくる。それが離職防止にもつながります。
あと「複業」の部分をある程度任せることは、経営の勉強にもなります。日頃スタッフには「全員、社長になろう」と言っているのですが、小さい事業をたくさん経験することで、集客やプロモーションの重要性、会社を存続させることの難しさにも気づく。経営者の立場を理解できるスタッフが集まると、間違いなく、強い組織になります。
「CHAINON」さんでは、各店舗に店長をおいていないとか?
店長をおくと、タテ社会ができてしまう。僕が出会ってきた素晴らしい経営者の方って、大体フラットなんですよね。働く仲間は、「上下」ではなく、ひとつのコミュニティ。だから「コミュニティマネージャー」を、店舗ごとにおいています。言ってみれば、ファシリテーターというか。みんなの意見を言いやすくしたり、個々の魅力を引き出してあげる役割です。
そうすると、例外なく、売上があがります。この業界ではよく「感覚ではなく、数字で語ろうよ」と言われます。でも、僕はスタッフに数字の話はしない。シンプルに、お客さんが喜んでくれたら、売上はあがる。だから、「どうすれば喜こんでもらえるか?」を考えてもらいます。
スタッフに求めるのは、「みんなイキイキしてる?」ということだけ。イキイキ働くことができれば、どんどん成長してくれる。だから、いまはある程度、スタッフに任せられる状態なんです。
Instagramからも、スタッフの方との楽しそうな雰囲気が伝わってきます。
Instagramのストーリーズに、スタッフとの動画をアップしています。スタッフには、「僕と遊んでいるときはメンション入れてね」と。そうすれば、外部の方にも、うちの雰囲気が伝わる。まわりの美容師さんたちにも認知が上がって、DMで「面接お願いします」というメッセージがきます。求人には1円もかけていませんが、たくさん応募がくるので、優秀な人材が入ってくる、という好循環が生まれています。