第3章既存の姿を脱却した先にある「未来の美容サロン」
「いつかアーペの世界観で統一された
“ひとつの街”をつくりたいです。」
今後も出店を続けるご意向とうかがいましたが、やはり美容サロン単体ではなく複合店舗の形式をお考えですか?
そうですね。どういった内容にするかは時流に応じて判断しなくてはいけませんが、いわゆる普通の美容サロンにすることはないと思います。美容サロンはこれまでカリスマスタイリストのブームや店舗の大型化などを経て、現状では飽和状態にあります。もはや「新しいヘアサロンができる」と聞いたところで、地域の人はワクワクしてくれません。
こうした状況下で美容サロンが生き残っていくためには、何らかの付加価値が必要だと考えています。そして美容師もこれからの時代、ヘアメイク技術にプラスアルファの機能を持った「トータルライフコーディネーター」になることが求められるでしょう。アーペの美容師がモデルルームへご案内するのは、そうした姿の一端といえます。
鈴木さんにとって、理想の美容サロン像とは?
考えている理想の美容サロンのあり方はある種、僕がまだ小さかった頃によくあった「街の美容室」の形ですね。かつての美容室は、美容師の先生を中心としたコミュニティが築かれていました。カットが終わってからも先生おすすめのお茶菓子なんかを食べながら談笑して、お客さま同士の交流も生まれていた。
そうした「コミュニティのパッケージとして機能する美容サロン」をつくりたいです。美容サロンにいろんな機能を持たせることは、美容サロンの悩みである「利益率の低さ」を改善することにもつながります。
まさに本来の意味としての「サロン=交流の場」という機能を持った美容サロンを目指しているのですね。お話をうかがっていると次はどんな店舗ができるのか、早く見たくなりますね。今後の構想をお聞かせください。
お子さんのいる「ママさん美容師」が活躍できる場をつくりたいと考えています。弊社には、もともと自身やご家族がお客さまとしてアーペのファンだったことから入社したスタッフが多くいます。みんなアーペの理念に共感してくれているため、ありがたいことにスタッフの定着率がとても高いんです。入社後に結婚し、出産・育児休暇を経て働いてくれるママさん美容師も多くいます。
アーペはグループ企業なので、個々の都合に合わせて「美容師」「カフェ」「雑貨」など、働く選択肢も多く提示することができます。実際に「美容師から雑貨店員になって、また美容師に」と、生活の変化に応じて職種を変えたスタッフもいますよ。
彼女たちのライフスタイルはアーペの顧客層と非常に近く、お客さまの共感・信頼を得るにはうってつけの存在です。この強みを活かして、ママさん向けに特化した美容サロンをつくってもいいかもしれない。たとえばアーペによる住宅モデルルームの一角を美容サロンとして利用する一方、キッチンで料理教室、リビングではカルチャー教室イベントを開いたり・・・。これはあくまで一例にすぎなくて、美容サロンの可能性はまだまだいくらでもあると思います。
サロンとしてだけではなく、アーペグループ全体としての未来構想はありますか?
何年先になるかわかりませんが、いま最終目標にしているのは、アーペグループとして「ひとつの街をつくる」こと。美容サロンがあって、カフェや雑貨店・カルチャー教室があって、アーペが建てた住宅が並んでいる。その街並みには雰囲気のあるレンガの道と、たくさんの木々・・・街全体の世界観が統一されている、そんな空間です。
これこそグループだからできることですよね。現在、アーペの店舗はすべて茨城県に集まっていますが、この最終目標の実現に向けて今後も茨城県に地盤を固め、アーペのブランド力を高めていきたいと思っています。
鈴木さんご自身は都内サロンでの修業時代、がむしゃらに働いても待遇面では厳しい日々を送ったそう。「どうしたらいいかと先輩に聞いても『根性で乗り切れ』って(笑)。夢半ばで挫折する仲間も多く、これはもう、美容サロンの“企業としてのあり方”の問題だと感じました」。アーペグループの一員として美容業をスタートさせたのは、企業化されていないサロンがまだまだ多いなか、美容師がきちんと報われる仕組みづくりをするためでもあったとのこと。鈴木さんの「ライフコーディネート」を大切にする想いは、大事なスタッフのためにも発揮されている。そんな一面を垣間見ることができました。