女性が活躍するサロン
女性スタッフが辞めない
サロンの秘訣
結婚・出産を経ても女性スタッフが長く活躍している、さまざまなサロンの取り組みや職場づくりを紹介していきます。
vol.120弱みを強みに変える!全員活躍のしくみ。
&L
長野県長野市
高い技術力とアットホームな雰囲気で人気の長野のサロン「Loput」。その3号店として一昨年オープンした「&L」。全スタッフ11名のうち、オーナーの原田祐一さん以外はすべて女性スタッフです。育児中のママや、産休・育休中のスタッフも続出しながら、サロンも成長を続けています。「大事なのはスタッフが幸せなこと」と語る、原田さんの経営理念について伺いました。
1取り組み
スタッフのライフスタイルに合わせた勤務時間が選べる。
どんな取り組み?
「Loput」グループは全スタッフ11名のうち、ママスタイリスト3名、現在妊娠中のスタイリスト1名が在籍中。保育園のお迎えなど個々の事情に合わせ、スタッフの退勤時間を選べるようにしている。勤務時間が長いスタッフほど、基本給が高くなる仕組みだ。スタッフそれぞれが大事にしていることによって、働き方が選べるのだ。
なぜそうした?メリットは?
原田さんが自分のサロンをもち、1人目のスタッフを採用したときから、スタッフの働きやすさを常に優先してきた。オーナー以外は女性スタッフであることから、結婚や出産・育児によって人生のなかで仕事に制約がかかる時期がある。人によって人生で大事にしたいものは異なるうえ、子どもが成長していくにつれて優先順位が変わることもある。そのため、朝の出勤時間は固定で、個々の事情に合わせて、退勤時間を自由に選べる仕組みにした。それによって誰もが長く仕事を続けられる環境になる。
2取り組み
就業規則はスタッフとともにつくった。
どんな取り組み?
「Loput」の最初のスタッフであるYukaさんが9年前に妊娠したことをきっかけに、産休手当などの給付金を受け取れるよう、サロンを法人化して社会保険を完備した。法人化する際に就業規則をつくり、今までにも何度か作り直しているが、根本にあるのは「スタッフの幸せ」だ。そのため、就業規則の中にある「Loputらしさ」や「行動指針」は、スタッフたちに考えてもらった。
なぜそうした?ねらいは?
原田さんが提示している経営理念は「【どこまでもひと】ひとを感じる、ひとを想う、ひとと笑う」。お客さまはもちろん、スタッフが笑顔でいられるサロンにすることが経営の根幹にある。
「会社=スタッフの集まりです。『Loputらしさ』とはスタッフたち自身が『こうありたい』という姿のこと。みんなのなりたい姿を集めると、1+1が3にも4にもなっていきます。経営者がトップダウンで『こうしろ』と言っても実際に会社を動かすのはスタッフたち。スタッフ自身に考えてもらった方がみんなにとってハッピーになると思っています」(原田さん)。
3取り組み
スタッフの特性ややりたいことを事業にしていく。
どんな取り組み?
「Loput」にはアイラッシュサロンの「Loput siro」や、訪問美容のブランド「Loput sina」がある。いずれもスタッフの中から「やりたい」という声が出て始めた事業だ。今後も「スタッフにやりたいことがあれば、それを事業化していく」と原田さんは語る。
背景とメリットは?
アイラッシュサロンを作った背景は、スタッフとの月1回の個人ミーティングから始まった。
「売上などの話もしますが、スタッフの本音が出てくるような世間話を大事にしてます。その中で『自分にはヘアスタイリストの仕事は向いてない、でも美容の仕事は続けたい』と言うスタッフがいたのです。それで、一緒にどうしたらいいか考えたのがアイラッシュサロンだったのです。また、訪問美容もママスタイリストからの発案で『育児でサロンに行くのが大変な人のところに行ってあげたい』という想いを実現するために始めました」(原田さん)。
スタッフの希望を叶えることで、スタッフが自分の弱みを強みに転換できたり、強みをさらに活かして新しい事業に発展している。スタッフの成長が会社の成長につながっているのだ。
4取り組み
売上以外の会社への貢献度を、給与に反映させる計画。
どんな取り組み?
現在検討しているのが、就業規則の「行動指針」を基にした給与システムだ。従来のような売上を基準にするだけでなく、「いかにサロンの理念に適した人材であるか」も評価の対象にしようと考えている。
「育児中のスタッフは勤務時間が限られることから、売上という数値では独身の若手スタッフには叶いません。しかし売上以外のところで、後輩の教育や、新しいアイデアを出したり、ファンを増やすなどの貢献をしています。それを公平に評価して給与に反映できるようにしたいのです」(原田さん)。
なぜそうしようとしている?
女性スタイリストが最も仕事に時間を費やせたり、顧客数を伸ばしていけるのは妊娠・出産をする前の20-30代の若い時期だ。しかし、彼女たちの人生は40代以降もさらに続き、40-50代は子どもの教育費などお金が最も必要になる時期でもある。
「売上以外が給与に反映されることに対して、若いスタッフたちにも『あと30年働き続けるには?』と想像してもらっています。その頃のライフステージにフォーカスした給与体系があれば、みんなが安心して働けるようになるとと思うのです」(原田さん)。
オーナーインタビュー
- Q. 徹底的なスタッフ重視の経営をしている理由は?
-
A. スタッフが健全で楽しく働くことが会社の基本だと考えているからです。
極端に言えば、私は売上が上がることより、スタッフが楽しそうに仕事をしている姿を見ることがうれしいのです。「会社が売上を伸ばせばみんなもうれしいはず」と考えるのは経営者のひとりよがりのような気がしています。いくら売上が上がっても、楽しくないと思っているスタッフはいずれ辞めます。私は雇ったスタッフには生涯うちで働いてもらいたい。辞めてほしくないから、一人ひとりのスタッフの事情や気持ちをくみ取ろうとしています。
人は誰でも、命令されてやっていることより、自分がやりたいこと、楽しいことの方ががんばれるし、続けられますよね。だからスタッフ一人ひとりと話して、本人がやりたいことを聞いています。そこから新しい事業が広がるケースもあります。私自身には今後会社をこうしたいということはなくて、スタッフの誰かが新しくやりたいことができたときに、それを実現することが私の務めであり夢です。
- Q. 個々のスタッフのやりたいことを重視して、会社としてどうまとめているのですか?
-
A. 人はそれぞれやる気が入るスイッチが違うだけ。ここで働きたい気持ちは同じです。
例えばお給料がやる気のもとになるスタッフもいれば、家族との時間を十分にもてることが仕事のモチベーションになるスタッフもいます。スイッチのありかは人それぞれで、それを叶えているので全く問題ありません。基本はみんな美容が好きな人の集まりなので、「Loput」のセンスが好きでうちで働きたいと思ってくれることでまとまっているのだと思います。
- Q. 個々のスタッフのやりたいことを叶えるには、売上も大事なのでは?
-
A. スタッフが楽しそうなサロンには、お客さまも求人も集まるのです。
スタッフの勤務時間が選べるといっても、うちはすごく忙しく、売上は伸びているのです。増えるお客さまに対して、スタッフたちの生産効率が高いのが自慢でもあります。技術力だけでなく、スタッフが楽しそうに働いてるからこそお客さまに支持されるのだと思います。また、求人募集でもスタッフの雰囲気にひかれて人が集まってくれます。
スタッフが楽しんで仕事をすることで売上が上がり、そのことで、次にスタッフが新しいことをやりたいと思ったときに、実現させてあげられる会社としての体力がつきます。多店舗展開などの急成長ではないかもしれませんが、それぞれが幸せな好循環ができていると自負しています。
Salon Data
&L【アンドエル】
- アクセス
- JR長野駅から徒歩10分
- 創業年
- 2010年
- 店舗数
- 3店舗
- 設備
- 設備:セット面4席
- スタッフ数
- 11名(全店舗)