第3章目指すは宿泊事業&上場
「拡大よりも、“深み”を。
美容と福祉には温度がある」
各事業の展開は、今後どのように考えていますか?
日本は、あるものが一巡して、社会全体で「“空き”を活用しよう」といった動きがありますよね。僕らの美容事業も、いまある既存の店舗の土台を、よりしっかりつくっていきたい。自分の会社だけではなく、美容業界全体として、既存店舗のために何ができるか?社会資源としてのヘアサロンを、どうにかできないか?と、僭越ながら思っています。
先ほどおっしゃっていた、他社への「Karen」の展開も、そうですね。
海外展開はありますか?
「Karen」の眉カット専門店は、海外、特にアジア圏にチャンスがあると考えているので、ベトナムなどで調査を開始しています。
福祉事業の勢いがあるので、美容事業以上に拡大する可能性は?
現在は、26拠点の運営をしています。「アトリエはるか」でチェーン展開のナレッジがあるので、可能ではあります。でも、拡大することよりも、「深みを出していこう」と決意しました。
それは、自ら命を絶ってしまった利用者さんがいたことが、きっかけです。持病の障がいで、常に希死念慮が消えない方もいます。福祉は、本質的に“命”を支える仕事。しっかり向き合っていく覚悟が必要です。
この春、僕も社会福祉士の資格をとりました。あらためて、世界中の「障がい支援」をイチから学んで、一つひとつの施設を、誠実につくっていきたいと思ったからです。
素晴らしいですね。
既存の事業以外で、視野に入っているものはありますか?
将来的には、宿泊事業も考えています。ホテルはホスピタリティの集合体だと思っているので。実はコロナ直後に、アフターコロナを見据えて箱根に物件を買っていたのですが、アイブロウ事業に集中するため、いったんリセットしました。
今後の日本の成長産業は「観光」と「食」。その中で「人」が中心にある宿泊事業も福祉同様、「アトリエはるか」の強みを活かせると思います。
これらの実現には、大きな資本力が必要になってきます。そこでもう一度(※)上場することも視野に入れて、内外ともに整えているところです。いまから3年後、2026年を目標に据えました。
(※「アトリエはるか」は2017年12月に上場予定だったが、その2日前に上場手続きの延期を決定した過去がある)
それは大きなニュースですね。
さまざまな事業に挑戦されるなか、あらためて「美容」の魅力は、どこにあると思いますか?
圧倒的に、「人」ですね。美容サロンでは一日中、人と向き合い、人の気持ちに触れる。福祉をやったからこそ、美容がいかに恵まれたものであるか、気づけました。「前向きになれる」「輝ける」「幸せになれる」…美容には、ありとあらゆる“陽”がある。3,000円、4,000円とかで一瞬でハッピーになれるのは、すごいことですよね。こんなに人の心を動かせる産業って、ほかにない。
時代はAI全盛ですが、美容・福祉といった、少しあたたかな温度を感じる領域…。それは、自分も含め、人間にとって、絶対に必要なものだと思うんです。
それだけでも、岩井さんの“本気”が伝わってきます。
『福祉の成り立ちを学ぶうちに、行動・意識が変わりました。
たとえば電車に乗るときも、優先席のすぐ近くにいくように。
困っている人、役に立てる確率が高いところに自分の身を置き、そこから選択肢を考える』と、岩井さん。
ハルカの社名に込められた想いは、「はるか彼方まで成長しよう」。
そこに「深さ」も加わって、無敵の強さになることでしょう。