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インバウンド対応

2020年の東京オリンピック開催に向け、外国人旅行者は今後ますます増加が期待されています。インバウンドと呼ばれる外国人旅行者がお客さまとなる可能性を視野に入れ、美容サロンができることを考えましょう。

インバウンドイメージ

第8回 マーケットは約16億人!
千葉市で始動したムスリム対応サロン
【前編】

千葉市美容事業協同組合は千葉市と協力して、2015年春からイスラム教徒=「ムスリム」を受け入れ可能なヘアサロン対応をスタート。世界人口の4分の1にあたるというムスリムへ向け、どんな取り組みを行っているのでしょう。現地の様子を2回にわたりお届けします。

Q

そもそも「ムスリム」ってなんのこと?

A

「ムスリム」とはイスラム教徒のこと。世界には約16億人が存在し、訪日外国人旅行者にも多くのムスリムが含まれています。

世界でイスラム教徒は約16億人!巨大市場はいま注目の的。

イスラム教を信仰する日本人はさほど多くはありませんが、世界に目を向けるとイスラム教はメジャーな存在。イスラム教徒(ムスリム※)は世界で約16億人ともいわれ、世界人口の4人中1人はムスリムといえます。今後もムスリム人口は増加が予測されており、将来的には現在最大勢力であるキリスト教徒を抜いて世界の宗教人口第一位になるとの調査結果も。これほど大きなムスリム市場を相手にした取り組みは、いま世界的にも注目されているのです。  ムスリムの6割超はアジア圏に住んでいるといわれます。世界最大のイスラム教国はインドネシアで、ムスリム人口は約2億人。イスラム教を国教とするマレーシアには約2000万人いるほか、ミャンマーやフィリピン、シンガポール、タイといった東南アジア各国にも多くのムスリムがいるようです。

    ※イスラム教徒のうち女性のみを指す場合は「ムスリマ」と呼ばれます(本記事では混同を避けて「ムスリム」と記載します)

ムスリムが多く住む東南アジア各国からの、訪日外国人は200万人を突破。

日本政府観光局(JNTO)の発表によると、2015年の訪日外国人旅行者の数は過去最高を記録。東南アジア6カ国(インドネシア、マレーシア、タイ、シンガポール、フィリピン、ベトナム)からの旅行者も6カ国すべてで過去最高の数となり、初めて合計200万人を超えました。この6カ国にはムスリムが多い国も含まれています。つまり、すでに多くのムスリムが日本へ旅行に訪れているといえるのです。さらに、経済発展にともなって今後も東南アジアからの海外旅行者数は増加すると考えられ、日本におけるムスリム対応はますます重要性が高まっていきます

Q

ムスリム向けのインバウンド対応に求められることとは?

A

イスラム教では日常生活で厳守しなくてはならない戒律が定められており、旅行先でも戒律に従った行動ができるような設備・おもてなしが求められます。

食事をはじめ、イスラム教ではさまざまな戒律が存在。

「豚肉やアルコールを含む飲食物はNG」というムスリムの決まりごとを、聞いたことがある人も多いでしょう。イスラム教の戒律は食べ物に関するものが有名ですが、ほかにも「1日5回の礼拝」「女性は夫や家族以外の男性に髪を見せるのはタブー」といったものも。宗派・学派により内容に差があるものの、ムスリムは戒律に従って日々の生活を送っています。

イスラム教の戒律に準じたおもてなしでムスリム集客へ。

戒律に従った生活は旅行中も例外ではありません。すでに日本でも、ムスリム旅行者へ向けたサービスは導入され始めています。2013年に関西国際空港にて男女別の礼拝室を設置されたのをはじめ、同様に礼拝室を設置したアウトレットモール、ムスリム対応メニューを用意するホテルなど、さまざまな業界がムスリム対応を始めています。  美容業界も、うかうかしてはいられません。「女性が男性に髪を見せるのはタブー」であるなら、男性スタイリストも多い日本の一般的なヘアサロンは利用できないでしょう。考えようによっては、これはビジネスチャンス!先ほど記したように訪日ムスリム旅行者は増加傾向にあります。ムスリムも不自由せずに利用できるサロンを準備して、新たな集客を狙うことも可能なのです。

Q

ムスリム対応のサロンって日本にあるの?

A

ほぼない状況でしたが、2015年春から千葉市美容事業協同組合で取り組みをスタート。現在は市内11のヘアサロンがムスリム受け入れ態勢を整えています。

2020東京五輪へ向けて取り組みスタート。

日本国内のムスリム対応のヘアサロンは都内に1店舗見つかる程度で、これまではほぼありませんでした。そんな状況で立ち上がったのが千葉市美容事業協同組合です。2015年春から市と協力して、市内の参画サロンでムスリム対応を始めたのです。  でもそもそも、なぜムスリム向けのサービスにしたのでしょう。同組合代表の安保祐次さんにうかがいました。 「きっかけは2020年の東京五輪。五輪観戦を楽しむ海外のお客さまは、千葉県の成田空港から来日して東京へ向かう方が多いでしょう。成田と東京の間に位置する私たち千葉市のサロンにも、立ち寄ってもらえるサービスはないかと考えていました。そんなとき、インバウンドに力を入れている千葉市から『ムスリム対応のサービスをしないか』と提案をいただいたんです。  外国人の中でも、ムスリムは戒律があり日本のサロンを利用するには高いハードルがある。そんなムスリムの人たちの役に立てたら…、という思いで取り組みを始めました」

ムスリムが快適に過ごせるサービスや商品の情報発信の場である「ジャパンハラールエキスポ2015」に出展した千葉市のブースで、ムスリム対応サロンについても紹介した

イチから情報収集を始めて現在11サロンが受け入れ可能に。

安保代表によると、ご自身も取り組みを始める前は、特にムスリムの戒律について詳しかったわけではないそうです。調べていくうちに、2013年からムスリムを受け入れている東京都のヘアサロンの存在を知って協力を依頼。男性の視線を避ける間仕切りといったサロンに必要な設備や接客応対の勉強会を開き、準備を進めたんだとか。 「インドネシアからの留学生の女性にも協力してもらい、どんな設備が必要か聞き取り調査もしました。そうして組合内で名乗りを上げたサロンに、必要な対応について指導。あとは私が各サロンを訪れて最終チェックをする…、という流れで進めました。現在は幕張駅周辺や千葉駅周辺など、11のサロンが受け入れ態勢を整えています」

今回お話をうかがった、千葉市美容事業協同組合の代表・安保祐次さん。ご自身が経営するヘアサロンもムスリム対応サロンとして態勢を整えた

いよいよ次回は、ムスリム受け入れ態勢を整えたサロンの様子をレポートします。

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