イノベーターが
見ている未来
vol.98
その取り組みと背景、そして未来についての展望をうかがいます。
アルテ サロン ホールディングス/吉原 直樹さん、髪書房/中尾 信一さん、ノートラック/野嶋 朗さん、リクルート/千葉 智之
美容サロンオーナーを、もっとも悩ませるもの。それは、採用といっても過言ではないだろう。業界の現状を知り尽くしたお三方をゲストに、採用のリアルと課題解決のヒントを探る座談会。Z世代の志向や離職理由、そして採用・定着に成功しているサロンの特徴とは?
吉原 直樹さん/株式会社アルテ サロン ホールディングス 代表取締役会長 CEO
「Ash(アッシュ)」をはじめ、「NYNY(ニューヨーク・ニューヨーク)」「Choki Peta(チョキペタ)」など6ブランド・計346店舗を展開(海外を除く/2023年7月末時点)。
(写真右から2番目)
中尾 信一さん/株式会社髪書房 代表取締役社長
2011年、「髪書房」入社。同社は美容専門誌『NEXT LEADER』、『BOB』、美容師向けメディア『ボブログ』などを手がける。2023年より、代表取締役社長に就任。
(写真左)
野嶋 朗さん/株式会社ノートラック 代表取締役社長
株式会社リクルートでキャリア開発事業などに携わったのち、ビューティ総研 センター長に。2015年、美容領域を中心とした組織活性・人材強化支援を行う「ノートラック」創業。
(写真右)※進行
千葉 智之/株式会社リクルート ホットペッパービューティーアカデミー・アカデミー長
第1章老舗ブランドが通用しない!?
「歴史がある会社ほど
現場はオタオタしている」
(ホットペッパービューティーアカデミー/千葉)
アルテさんでは、新卒採用の状況はいかがですか?
吉原●いままでは毎年200名ほど採用していましたが、昨年の2022年は少し落ちて約150名。以前は、採用担当者が全国の美容学校を150校くらいまわっていましたが、それだけでは弱くなってきた。SNSによる「個人集客」同様、「個人採用」の流れも感じます。
中尾●SNSでの採用が加速したのは、間違いないですね。インスタがあって、TikTokが出てきて。言葉がひとり歩きしている感もありますが、最近は「リファラル採用(自社の社員からの紹介)」も。
採用がうまくいっているサロンは、どんな特徴があると思いますか?
野嶋●待遇・労働環境など「条件面」は、そこまで差がつかなくなっています。サロンの特色、サロンワークでのちょっとした事柄、先輩たちの顔つきといった細かいところまで見られている。「自分が入ったら、こんなことができるんだ!」と、求職者が想像できる見せ方が大切です。
吉原●昭和・平成とこの業界に関わってきましたが、令和に入って、新卒世代の特徴がガラッと変わった感じがします。歴史がある会社ほど、現場はオタオタしている。特に50代以上の経営者は、苦労しているのではないでしょうか。僕は60歳をとうに超えているので、もっとわからない(笑)。
新卒スタッフも、若い世代がいるところで働きたい。IT企業だって、社長や上司が若くて起業からたった数年でこんなに大きくなりました、というほうが魅力を感じますよね?
美容サロンも一緒。老舗だから人が入ってきてくれるかと思ったら、違うんだよね。青山の一流サロンが第2志望で、第1志望はとんがった若い社長がいるサロンとか。
野嶋●老舗ブランドが通用しないというか、“それだけ”では通用しなくなってきましたね。
また、FCオーナーも40代後半~50代の方が多くなってきています。昔の育て方が染みついたままだと、いまのスタッフとは感覚が違うのでうまくいかない、というケースはよく聞きます。
時代の変化を感じますね。
吉原●昔は採用される側が、「雇用していただく」という感じで面接に来ていましたが、いまは逆。サロンにとって、求職者は完全に「お客さま」感覚です。
現場では「今日、◎◎美容学校の生徒さんが◎時にいらっしゃるので、ボードを立ててお迎えしましょう」「店長は歳が離れているから、あまり話さないでください。去年入ったスタッフが積極的に話してください」という会話がされていたりする。
中尾●美容専門学校も生徒を集められない状況なので、生徒が「お客さま」という感覚ですよね。そうなると、生徒の後ろにいる保護者の影もチラつき、自信を持って「このサロンに入社しなさい」と、言いにくい状況に。推薦してもすぐに辞めてしまったら、学校側が保護者に怒られることもあるそうです。
Z世代は、何を求める?
美容業界「採用」最前線!