学ぶ。つながる。発信する。美容の未来を創る場所。
海外のお客様への取り組み
2020年の東京オリンピック開催に向け、外国人旅行者は今後ますます増加が期待されています。インバウンドと呼ばれる外国人旅行者がお客さまとなる可能性を視野に入れ、美容サロンができることを考えましょう。
前編に続き、千葉市美容事業協同組合と千葉市が2015年春から始めた、ムスリム対応ヘアサロンに関する取り組みをお届け。今回は実際のサロンの設備を見ていきます。あわせて、利用者の反応もご紹介。受け入れを始めて、ムスリムの人々から嬉しい声が届いているようです。
千葉市美容事業協同組合ではムスリム対応サロンをつくるにあたり、下記5つの項目を設定。各店舗はその項目に沿って受け入れ準備を進めました。
ムスリムといっても宗派・学派によって細かい戒律は違います。シャンプー剤に動物由来成分が入っていても、“食べ物ではないから問題ない”という人も。「ですが、できる限りの態勢を整えておけば、どんな方も受け入れられます」と同組合・安保代表。イスラム教の戒律をクリアした証である「ハラル認証」の植物性シャンプーを各サロンに用意したそうです。
英語表記のメニュー表や方位のわかるもの、ハラル認証のシャンプーを各サロンが用意している
対応サロンの一つ、「SAISON(セゾン)」の一角にある礼拝場所。入口に英語で「礼拝はこちらで」と表示したほか、礼拝時の敷き布としてヨガマットも用意した
カーテンや間仕切りは全店が同じものを使うわけではなく、サロンの造りに応じて各店が用意。シャンプー台とカット台が離れていて動線すべてを区切るのが難しいサロンでは、ムスリムの予約が入った時間帯は女性客限定にして、男性はスタッフを含めて店内にいない状態にするという対策をとっています。
左/道路側一面がガラス張りの「ヘアーマジックモガ千葉店」では、シャンプー台と、隣接する個室を囲うようにカーテンを設置した 右/壁に開口部がない「SAISON(セゾン)」では、入口のガラス窓をカーテンで覆うほか、店内はスタッフ・お客さまともに女性のみの状態に
ムスリム対応サロンの準備段階から協力していたという、インドネシア人留学生のアンギタ・ガサニ・ブトリさんにもお話をうかがいました。いよいよ準備が整ったサロンで、実際にカットを体験したそうです。
「日本の美容室はカットも対応も丁寧。私が行ったお店はシャンプーを選ぶことができましたが、インドネシアではそうしたサービスはなかったので、とても嬉しかったです」
千葉市内のムスリム対応サロンは現在11店舗で、今後も参画店舗は拡大予定。安保代表によると、東京や横浜、埼玉からの来店もあるといいます。これまで来店したムスリムの反応は「みなさん喜んでくれ、特に問題は起きていません」とのこと。「現在は週に1回、参画サロンで集まって英会話レッスンをしている」そうで、よりよいおもてなしを目指して改善を続けています。
「日本のヘアサロンのもてなしに満足」と話す千葉大学生のアンギタさん。日本にいるムスリムの友人にも、サロンの存在を話しているそう
2020年東京五輪を見据えて始めたというムスリム対応。五輪開催はまだ先ですが、「いまから準備することが大切」と安保代表は考えます。
「ムスリムの利用はいまのところ、お客さま全体の割合からいって多くはありません。しかし少子高齢化社会を迎え、美容サロン需要は減少傾向にあるのが現状。このまま何もせずにいるよりは、できることから始めたほうがいいでしょう。五輪開催時はたくさんのムスリムの人たちに来ていただけるよう、いまのうちから“ムスリム対応サロン=千葉市”という印象を根付かせていきたいですね」
「ジャパンハラールエキスポ2015」出展時、着物の布で作ったヒジャブ(頭にかぶる布)を展示したところ好評だったそう。「ゆくゆくはムスリム対応サロン内で販売したい」と安保代表
Salon Data
Salon Data
新規会員登録を頂くと、メルマガで最新記事や人気記事のお知らせをお届けします。また、セミナー・イベントの申し込みや、動画によるセミナーの視聴も無料で可能になります。