Vol.1/美容業界の常識は社会のヒジョーシキ!?
- サロンの労務知識
美容の未来のために、学びと調査・研究を
サロンオーナー必見!
vol.9
〜労働時間を正しく知る編〜
今回から、サロン経営でとても重要な労働時間の基本についてお伝えします。まずは基本の「法定労働時間」について解説してきます。
※青文字・下線が付いた箇所をクリックすると、その言葉の説明が見られます。
須多井 リスオ(スタイ リスオ)
小尾奈 サロヒコ(オオナ サロヒコ)
赤出 ミーコ(アカデ ミーコ)
秋田センセイ
ビューティー
みなさんは「法定労働時間」という言葉を聞いたことがあるでしょうか? これは労働基準法で定められた労働時間の限度のことで、原則として、「1週間に40時間、1日に8時間を超えて労働させてはいけない」とされています。
ただし特例があり、10人未満の事業場で、商業、映画・演劇業、保健衛生業、接客娯楽業の業種は「1週間に44時間まで」とされています。サロンは商業に入るので、10人未満のサロンの場合はこちらの適用になります。
「事業場」とは、サロンの場合ひとつひとつの店舗のことを指します(ひとつの事業場として独立性がある場合に限ります)。例えば、3店舗展開しているサロンで、A店は7人、B店は9人、C店は15人のスタッフが勤務している場合、A店とB店の労働時間の上限は1週間で44時間ですが、C店は40時間ということになります。この場合のスタッフには、正社員だけでなく、常勤のパートも含まれます。
ポイント1を見て「うちは営業時間が10:00〜20:00だから無理!」と思った人もいるかもしれません。労働基準法では上記の通りに定められていますが、変形労働時間制という制度によって、労働時間を1カ月以内の一定の期間で調整することもできます。
例えば、1日の労働時間が8時間を超える日があっても、1カ月以内の一定期間を平均して1週当たりの労働時間がポイント1の範囲を超えていなければ労働基準法に違反していないということになります。シフト勤務や休日によって月単位で労働時間を調整できるということです。
例)1カ月が30日の月(4月、6月、9月、11月)の場合
★10人未満のサロンの例=「1週間に44時間」が法定労働時間
30日÷7日×44時間=188.5時間
★10人以上のサロンの例=「1週間に40時間」が法定労働時間
30日÷7日×40時間=171.4時間
それぞれ、その月で、マーカー部分の総労働時間を超えていなければ、1日に8時間を超える日を含んだシフトの調整ができることになります。
変形労働時間制を利用してもスタッフの勤務時間が上限の時間を超える場合は、時間外労働になります。時間外労働とはつまり残業のことで、時間外労働が発生した場合はその分の残業手当をスタッフに支払う必要があります。時間外労働については次回で詳しく解説します。
ここまで読んで気づいた人もいると思いますが、残業代を支払うか明確にするために、「月ごとの時間外労働の有無」や、「超えている場合は何時間残業したのか」など、スタッフの労働時間をきちんと把握している必要があります。
ひとつめの方法は、タイムカードやICカードなどで、個々のスタッフの始業と終業の時間を客観的に記録すること。または、オーナーや店長などが始業と終業を確認して記録する方法もありますが、その場合は、スタッフ本人に確認してもらうとよいでしょう。
スタッフの労働時間を把握しておらず、万が一スタッフから残業代の未払いで訴えられた場合、記録がないことで悪質と捉えられ、未払いの残業代以外にペナルティを科せられる場合があります。スタッフに残業代を支払うのは義務なので、きちんと計算できるように労働時間を把握する策を講じておきましょう。
次号では、時間外労働について解説する予定です。
監修
特定社会保険労務士
秋田繁樹さん
プロフィール:
社会保険労務士法人 秋田国際人事総研代表。東京都社会保険労務士会所属。国内大手生命保険会社、大手企業のシステムインテグレーターなどを経て、独立開業。人事労務のスペシャリストとして、多店舗展開の美容室の労務管理や就業規則・社内規定などにも詳しく、多数の美容室の指導相談に当たっている。http://www.akita-sr.com/
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