第3章時流をつかんだ勝ち筋とは?
「時代に合わせて柔軟に変化することで
スタッフ最高年収は3,000万円」
スタッフに向き合う経営をされています。給与も手厚いとのことですが?
幅はありますが、いちばん高いスタッフで年収3,000万円。その彼は、入社時は月30万円くらいの売上だったので、そう考えるとうれしい限りです。
ちなみにスタイリスト7名の平均月収は88万円、2023年12月はみんなのがんばりもあって、平均118万円超でした。どのスタイリストも2枠とか3枠を同時に受け持つことを前提にしているので、売上で月間200万円くらいは出せるようにしています。そこまで到達していないスタッフは、そういう働き方を選んでいるというだけで。
何枠も同時に抱えることは、アシスタントにとっても利点があります。同時進行だとアシスタントがお客さまに接する時間が増える。すると、その子がデビューしたときには、すでに顔なじみになったお客さまから指名をいただけるんです。
また、アシスタントにも、働きに応じたリターンがあるようにしています。たとえば1,000万円の売上に対してアシスタントを含めて10人のスタッフがかかわっていたら、ひとりあたりの生産性は100万円。その生産性に対する賞与を毎月の全体ミーティングの場で発表して、アシスタントにも分配しています。
働くスタッフすべての人が、モチベーションが上がる仕組みがあるのですね。
それ以外に、REDEALの強みはどこにあると思いますか?
時代に合わせて、柔軟に変化しているところでしょうか。今は、TikTokにすごい力を入れています。TikTokって100人のうち95人が見続けてくれるようなコンテンツに仕上げないと、再生回数が伸びないんですね。あと「おしゃれじゃないこと」が大事。僕も恥ずかしさを捨てて、がんばっています(笑)。うまいこと伸びると、道を歩いていても声をかけられるくらい、一般の方からの認知度がすごく高くなるんです。
現状、ヘアサロンだとInstagramに注力しているところが多いですよね。Instagramは狙った情報を検索して見にいく感じなので、特定の層の中では有名だけど、それ以外の層からは認知されない。
今後、InstagramとTikTok、どちらのフォロワーが多いと、イケているサロンだと認識されるか?僕はTikTokだと思います。どんどん新しいコンテンツが出てきて、勝ち筋は変化していきます。そこを嗅ぎとって「いまはTikTokだ」と舵を切るか切らないかは、のちのち大きな差になるのでは?
店舗展開については、どのように考えていますか?
近いうちに、渋谷か原宿にもう1店舗出したいですね。でも、拡大路線というよりも「血の濃さ」重視で、スタッフがしっかり育ったら、受け皿としてのお店を出す方針です。
REDEALの経営理念は「お客さまの理想の仕上がりを叶える」。そしてお客さまをはじめ、かかわったすべての方の夢と理想を叶えることを目指しています。理念にある「理想」というのは、他店ではできなかった仕上がりのこと。それを叶えることが、高単価・高い売上という結果につながります。
僕は駆け出しの頃、SNSを活用して新規のお客さまを呼び込むのは得意でしたが、リピートに結びつかなかったんです。それは、中身=技術が追いついていなかったから。それが徐々に技術を伴ってくると、お客さまに満足していただけるようになり、新規よりもリピーターの比率が高くなりました。だから、技術は大前提として大事です。
ほかの美容師よりも技術がすぐれていないと本人も自信を持って働けないし、アシスタントもスタイリストのことをリスペクトできません。お客さまが「満足」ではなく「大満足」してこそ、従業員満足度も上がり、お客さまもまた喜んでくださるという好循環が起きる。これが、かつてSNSで表面上は活躍しながらも失客して…ということを経験した僕が、たどり着いた答えです。
『そこを狙っているのでうれしいですが、天狗になれなくて困っています(笑)』との返答が。
スタッフも、また同様。『ズバ抜けて高い売上を出すと、まわりがその人に遠慮するから、天狗を生んでしまう。でもREDEALでは、月間売上500万円に到達してもケロっとしています。“それができたら、次はこのステップ”と、常に追い続けるものがあるから』とのこと。
成功体験に甘んじることなく、常にアップデート。『スタッフに教える側の僕も変化して、自分を磨き続ける必要がある。その過程で、実は“僕自身も育っちゃう”って感じなんです』と、中村さんは笑った。