Vol.1/美容業界の常識は社会のヒジョーシキ!?
- サロンの労務知識
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サロンオーナー必見!
vol.12
〜産休・育休について正しく知ろう編〜
今回から、スタッフが出産や育児をする際に、オーナーはどうすればよいかについてお伝えします。まずは休みに関わる産休・育休について基本事項を正しく知っておきましょう。
※青文字・下線が付いた箇所をクリックすると、その言葉の説明が見られます。
須多井 リスオ(スタイ リスオ)
小尾奈 サロヒコ(オオナ サロヒコ)
赤出 ミーコ(アカデ ミーコ)
秋田センセイ
ビューティー
一般的に言われる「産休」は、正しくは「産前産後休業」と言います(以下、まとめて呼ぶ場合は「産休」とします)。妊婦になった女性スタッフをいつから休ませ、産後はいつまで休ませなければならないかは、労働基準法で決められています。産前は出産予定日から6週間前から(出産予定日を含め)、産後は出産の翌日から8週間が該当し、以下の図のようになります。
ここでポイントとなるのが、ABCの期間でそれぞれ要件が異なることです。
A:産前休業
・本人から「休みたい」と請求があったら働かせてはならない。
・本人が請求した場合、軽易な業務に転換させなければならない。
・保健指導又は健康診査(健診)を受診するために必要な時間を確保しなければならない。
※詳しくは、厚生労働省HP「働く女性の母性健康管理措置、母性保護規定について」をご覧ください。
B:産後休業(出産後8週間を経過しない場合)
・本人が「働きたい」と言っても働かせてはいけない。
C:産後休業(産後6週間を経過した場合)
・本人が請求し、医師が支障がないと認めた業務に限り、働かせてもいい。
つまり、産前6週間以内に出産予定の女性が休業を請求した場合には働かせてはいけません。また産後については、原則として産後8週間を経過しない女性は働かせてはいけません(B)。ただし、例外措置として「産後6週間を経過した女性が請求した場合で、医師が支障がないと認めた業務については働かせることができる(C)」ということです。
産前産後の休業期間は、母体である女性の体と健康を守るための制度。スタッフからの請求の有無にかかわらず、なるべくどちらの期間も休ませることが望ましいです。経済的な理由などで本人が「出産ギリギリまで働きたい」と言った場合は、きちんと話し合って、主治医の診断証明書を持ってきてもらうなど、本人の気持ちに体が追いついているか確認するようにしましょう。
産休はすべての女性労働者に該当するものなので、正社員、パートの違いは関係なく、誰でも取得できる休業です。パートのスタッフでも上記の要件と同様に休ませなければなりません。
いわゆる「育休」は正しくは「育児休業」といいます(以下「育休」)。育児休業は、原則として1歳未満の子どもを養育するスタッフが申し出をしてきた場合に、休ませなければならない制度で、育児・介護休業法という法律で定められています。
期間については、以下の図のようになります。
※出産したスタッフが夫婦ともに育児休業を取得する場合は、子どもが1歳2か月になるまで取得可能な制度もあります(パパ・ママ育休プラス)。ただし、その場合、夫婦ひとりずつが取得できる期間の上限は、父親は1年間、母親は出産日・産後休業期間を含む1年間と決められています。
女性スタッフや配偶者が妊娠して出産し、本人から申請があれば、最長で子が1歳までの期間または特別な場合には子が1年6カ月になるまでの間、さらに一定の事由があれば子が2歳になる間までそのスタッフは休むことになります。この育児休業の期間は、1年間まとめて休む必要はなく、原則2回(男性は出生時育児休業を合わせると4回)まで分割してお休みをする事が出来ます。おめでたいことですが、オーナーにとっては貴重な戦力が一時的に欠員する期間。スタッフや配偶者の妊娠が分かった時点で本人の意向を確認し、引き継ぎなどサロンの運営をどうするかをきちんと話し合って検討することが大事です。本人を含め、サロンのスタッフ全員が心理的にも肉体的にも負担にならないように、早めに計画を立ててサロン全体で協力できる体制をつくるとよいでしょう。
また、育休中も雇用形態は育休前(産休前)の状態が続きます。本人の希望で妊娠・出産の際に一度退職し、その後また再雇用された場合の働いていない期間を「育休」と思っている人も少なくないようですが、それは個人的な「育児で仕事を休んでいた期間」であり、法律上の育休ではありません。
※2歳まで育児休業を延長する場合には、子どもが2歳になるまで労働契約の期間が満了しており、かつ契約が更新されないことが明らかでないこと
※上記は2022年4月1日より改正された内容です。
また労使協定がある場合には、以下要件に該当すると、正社員であっても育休を取得できません。
①雇用された期間が1年未満
②1年以内(1歳6か月までおよび2歳までの育児休業をする場合には、6か月以内)に雇用関係が終了することが明らか(育休の申し出時点)
③週の所定労働日数が2日以下
その他、日々雇用される方も育休を取得できません。
パートスタッフの産休・育休の要件について、詳しくは下記をご参照ください。
契約社員でも、産前・産後休業や育児休業は取れる?(厚生労働省委託 母性健康管理サイト)「あなたも取れる!産休&育休」(厚生労働省)>>
産休や育休以外にも、女性スタッフから申請があった場合に休ませなければならない制度がいくつかあります。
そのひとつが「生理休暇」。生理中に働くことが困難な女性スタッフが申請した場合、オーナーは休暇を取らせなければなりません。
また、妊娠中の女性スタッフに対して、産休になる前に休ませなければならない場合があります。女性スタッフは出産までに定期的に産婦人科などで健診を受けることになりますが、男女雇用機会均等法で、その通院時間を確保することが雇用主に義務づけられています。たとえば、妊娠23週までは4週間に1回など、スタッフの妊娠週数によって確保させるべき回数が異なります。
ほかにも女性スタッフの母性健康管理に関わる規定がいくつかありますので、詳しくは下記を参照してください。
働く女性の母性健康管理措置、母性保護規定について(厚生労働省)「女性労働者の母性健康管理のために」(厚生労働省)>>
生理休暇や通院時間の確保のために女性スタッフが休んだ場合、有給にするか無給にするかはサロンの自由です。就業規則できちんと決めておきましょう。また、産休や育休中も同様ですが、産休・育休中にサロンから賃金が支払われない間は、スタッフはさまざまな手当を受け取ることができます。それについては次号以降で詳しくお伝えします。
次号では、スタッフの出産・育児に関わるお金についてお伝えします。
監修
特定社会保険労務士
秋田繁樹さん
プロフィール:
社会保険労務士法人 秋田国際人事総研代表。東京都社会保険労務士会所属。国内大手生命保険会社、大手企業のシステムインテグレーターなどを経て、独立開業。人事労務のスペシャリストとして、多店舗展開の美容室の労務管理や就業規則・社内規定などにも詳しく、多数の美容室の指導相談に当たっている。http://www.akita-sr.com/
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