サロンオーナー必見!

人を雇ったら知っておきたい
労務のキホン

スタッフを雇ってサロンを経営していく上で必要な、労務関連の制度や法律の基本知識について解説していきます。

vol.12

〜産休・育休について正しく知ろう編〜

正確な「産休」「育休」のルール、知ってる?

 今回から、女性スタッフが出産や育児をする際に、オーナーはどうすればよいかについてお伝えします。まずは休みに関わる産休・育休について基本事項を正しく知っておきましょう。
※青文字・下線が付いた箇所をクリックすると、その言葉の説明が見られます。

連載ショートストーリー

「サロンRの日常」12
  • 須多井 リスオ

    須多井 リスオ(スタイ リスオ)

    アシスタントを2年経験し、スタイリストデビューをしたばかりの23歳。「サロンR」勤務。デビューして意気揚々。オーナーも店も基本大好きで、サロンとともに成長したいとはりきっている。
  • 小尾奈 サロヒコ

    小尾奈 サロヒコ(オオナ サロヒコ)

    「サロンR」オーナー。スタイリストとして7年間別のサロンに勤務した後独立。「サロンR」を開業して3年目の33歳。スタッフを大事にしてサロンを成長させたいが、経営の知識はない。
  • 赤出 ミーコ

    赤出 ミーコ(アカデ ミーコ)

    「サロンR」に勤務するスタイリスト歴5年の須多井リスオの先輩。27歳。指名が多く、新婚で公私ともに絶好調。同僚からの信頼も厚いが、結婚を機に子どもがほしいと考え始めている。
  • 秋田センセイ

    秋田センセイ

    社会保険労務士。多数のサロンの労務管理相談を受けている、この企画の監修を担当。美容業界を他業界に負けないくらい、オーナー、スタッフともに働きやすい環境にしたいと考えている。
  • ビューティー

    ビューティー

    秋田センセイの名アシスタントの猫。先生の言いたいことを伝言するために、ここそこに現れるこの企画の陰のキーマン。サロンオーナーたちがいい経営者になることを心から願っている。
ミーコ先輩は最低どれくらい休まなければならないのでしょう?
POINT1

産休は、「産前は請求があれば」、「産後は必ず」休ませなければならない。

産前と産後では要件が異なります

 一般的に言われる「産休」は、正しくは「産前産後休業」と言います(以下、まとめて呼ぶ場合は「産休」とします)。妊婦になった女性スタッフをいつから休ませ、産後はいつまで休ませなければならないかは、労働基準法で決められています。産前は出産予定日から6週間前から(出産予定日を含め)、産後は出産の翌日から8週間が該当し、以下の図のようになります。

VOL12_01

 ここでポイントとなるのが、ABCの期間でそれぞれ要件が異なることです。

A:産前休業
 ・本人から「休みたい」と請求があったら働かせてはならない。
 ・本人が請求した場合、軽易な業務に転換させなければならない。
 ・保健指導又は健康診査(健診)を受診するために必要な時間を確保しなければならない。
  ※詳しくは、厚生労働省HP「働く女性の母性健康管理措置、母性保護規定について」をご覧ください。

B:産後休業(出産後8週間を経過しない場合)
 ・本人が「働きたい」と言っても働かせてはいけない。

C:産後休業(産後6週間を経過した場合)
 ・本人が請求し、医師が支障がないと認めた業務に限り、働かせてもいい。

 つまり、産前6週間以内に出産予定の女性が休業を請求した場合には働かせてはいけません。また産後については、原則として産後8週間を経過しない女性は働かせてはいけません(B)。ただし、例外措置として「産後6週間を経過した女性が請求した場合で、医師が支障がないと認めた業務については働かせることができる(C)」ということです。
 産前産後の休業期間は、母体である女性の体と健康を守るための制度。スタッフからの請求の有無にかかわらず、なるべくどちらの期間も休ませることが望ましいです。経済的な理由などで本人が「出産ギリギリまで働きたい」と言った場合は、きちんと話し合って、主治医の診断証明書を持ってきてもらうなど、本人の気持ちに体が追いついているか確認するようにしましょう。

産休はパートのスタッフでも取れるの?

 産休はすべての女性労働者に該当するものなので、正社員、パートの違いは関係なく、誰でも取得できる休業です。パートのスタッフでも上記の要件と同様に休ませなければなりません。

POINT2

育休は申請があったら休ませる休業。

育休の期間のことも考えておこう!

 いわゆる「育休」は正しくは「育児休業」といいます(以下「育休」)。育児休業は、1歳未満の子どもを養育するスタッフが申し出をしてきた場合に、休ませなければならない制度で、育児・介護休業法という法律で定められています。
 期間については、以下の図のようになります。

VOL12_02

 ※出産したスタッフが夫婦ともに育児休業を取得する場合は、子どもが1歳2か月になるまで取得可能な制度もあります(パパ・ママ育休プラス)。ただし、その場合、夫婦ひとりずつが取得できる期間の上限は、父親は1年間、母親は出産日・産後休業期間を含む1年間と決められています。
 
 女性スタッフが妊娠して出産し、本人から申請があれば、最長で1年または特別な場合には1年6カ月の間そのスタッフは休むことになります。おめでたいことですが、オーナーにとっては貴重な戦力が一時的に欠員する期間。スタッフの妊娠がわかった時点で本人の意向を確認し、引き継ぎなどサロンの運営をどうするかをきちんと話し合って検討することが大事です。本人を含め、サロンのスタッフ全員が心理的にも肉体的にも負担にならないように、早めに計画を立ててサロン全体で協力できる体制をつくるとよいでしょう。
 また、育休中も雇用形態は育休前(産休前)の状態が続きます。本人の希望で妊娠・出産の際に一度退職し、その後また再雇用された場合の働いていない期間を「育休」と思っている人も少なくないようですが、それは個人的な「育児で仕事を休んでいた期間」であり、法律上の育休ではありません。

育休はパートでも取れるの?

産休とは異なり、労働契約期間を定めて雇用しているパートスタッフには育休を取れる条件があり、申し出時点で以下の要件を満たすパートスタッフは育休を申請し取得することができます。
①同一の事業主に過去1年以上継続して雇用されていること。
②子どもが1歳6カ月になるまでの間に労働契約期間が満了し、かつ、労働契約の更新がないことが明らかである者を除く。

※上記は2017年1月1日より改正された内容です。

 また労使協定がある場合には、以下要件に該当すると、正社員であっても育休を取得できません。
①雇用された期間が1年未満
②1年以内に雇用関係が終了することが明らか(育休の申し出時点)
③週の所定労働日数が2日以下
その他、日々雇用される方も育休を取得できません。

パートスタッフの産休・育休の要件について、詳しくは下記をご参照ください。
「あなたも取れる!産休&育休」(厚生労働省)>>

POINT3

産休、育休以外にも女性を休ませるべき決まりがある。

女性固有の休暇はほかにもある!

 産休や育休以外にも、女性スタッフから申請があった場合に休ませなければならない制度がいくつかあります。
 そのひとつが「生理休暇」。生理中に働くことが困難な女性スタッフが申請した場合、オーナーは休暇を取らせなければなりません。
 また、妊娠中の女性スタッフに対して、産休になる前に休ませなければならない場合があります。女性スタッフは出産までに定期的に産婦人科などで健診を受けることになりますが、男女雇用機会均等法で、その通院時間を確保することが雇用主に義務づけられています。たとえば、妊娠23週までは4週間に1回など、スタッフの妊娠週数によって確保させるべき回数が異なります。
 ほかにも女性スタッフの母性健康管理に関わる規定がいくつかありますので、詳しくは下記を参照してください。
「女性労働者の母性健康管理のために」(厚生労働省)>>

女性スタッフを休ませたときは有給?無給?

生理休暇や通院時間の確保のために女性スタッフが休んだ場合、有給にするか無給にするかはサロンの自由です。就業規則できちんと決めておきましょう。また、産休や育休中も同様ですが、産休・育休中にサロンから賃金が支払われない間は、女性スタッフはさまざまな手当を受け取ることができます。それについては次号以降で詳しくお伝えします。

今回のポイント

サロンにとって女性スタッフは大切な戦力。一方で一人ひとりの女性として妊娠や出産、育児は貴重な人生経験であり、母体にとっては大変な時期です。スタッフの健康を守り、出産や育児を経ても無理なく仕事を続けてもらうためにも、必要な休業や休暇についてオーナーも正しく理解しておきましょう。

次号では、女性スタッフの出産・育児に関わるお金についてお伝えします。

秋田繁樹さん

監修

特定社会保険労務士

秋田繁樹さん

プロフィール:

社会保険労務士法人 秋田国際人事総研代表。東京都社会保険労務士会所属。国内大手生命保険会社、大手企業のシステムインテグレーターなどを経て、独立開業。人事労務のスペシャリストとして、多店舗展開の美容室の労務管理や就業規則・社内規定などにも詳しく、多数の美容室の指導相談に当たっている。http://www.akita-sr.com/

編集・取材・文
長島佳子
イラスト
木村𠮷見

※掲載されている情報は2017年01月04日現在のものです

全ての記事の一覧へ