サロンオーナー必見!

人を雇ったら知っておきたい
労務のキホン

スタッフを雇ってサロンを経営していく上で必要な、労務関連の制度や法律の基本知識について解説していきます。

vol.14

〜育休後のスタッフについて知ろう編〜

育児で早く帰るスタッフは、パートにしてもいいってホント?

 Vol.12Vol.13では、女性スタッフが妊娠・出産した場合の休みや、その期間にかかわるお金についてお伝えしました。今回は産休や育休から復帰したスタッフの働き方について解説していきます。
※青文字・下線が付いた箇所をクリックすると、その言葉の説明が見られます。

連載ショートストーリー

「サロンRの日常」14
  • 須多井 リスオ

    須多井 リスオ(スタイ リスオ)

    アシスタントを2年経験し、スタイリストデビューをしたばかりの23歳。「サロンR」勤務。デビューして意気揚々。オーナーも店も基本大好きで、サロンとともに成長したいとはりきっている。
  • 小尾奈 サロヒコ

    小尾奈 サロヒコ(オオナ サロヒコ)

    「サロンR」オーナー。スタイリストとして7年間別のサロンに勤務した後独立。「サロンR」を開業して3年目の33歳。スタッフを大事にしてサロンを成長させたいが、経営の知識はない。
  • 赤出 ミーコ

    赤出 ミーコ(アカデ ミーコ)

    「サロンR」に勤務するスタイリスト歴5年の須多井リスオの先輩。27歳。指名が多く、新婚で公私ともに絶好調。同僚からの信頼も厚いが、結婚を機に子どもがほしいと考え始めている。
  • 秋田センセイ

    秋田センセイ

    社会保険労務士。多数のサロンの労務管理相談を受けている、この企画の監修を担当。美容業界を他業界に負けないくらい、オーナー、スタッフともに働きやすい環境にしたいと考えている。
  • ビューティー

    ビューティー

    秋田センセイの名アシスタントの猫。先生の言いたいことを伝言するために、ここそこに現れるこの企画の陰のキーマン。サロンオーナーたちがいい経営者になることを心から願っている。
短い労働時間でも正社員なのでしょうか?
POINT1

復職後の働き方は、事前に話し合いが必要。

原則は原職復帰です

 産前産後休業育児休業からスタッフが復帰する場合、原則として職務や雇用形態、労働時間、賃金などは、休業に入る前の原職に復帰させることを法で促しているように思われます。ただし、原職以外に復帰させたとしても本人が同意し、一般的労働者が同意する合理的理由が客観的に存在すれば不利益な取り扱いにはなりません。注意する点としては、サロン側から変更を強要してはいけないということです。
 出産後の生活のイメージは、子どもを産んだ後でないとなかなかできないものです。出産前は以前と同じように働くことを本人が希望していても、いざ子育てが始まると思うようにいかないのはよくあることです。また、保育園に入園できずに復帰時期が延びることも珍しくありません。
 オーナーの準備としては、まず、復職するスタッフの働き方に関する規定を整備しておきます。次に、出産したスタッフの復帰のメドがついた頃に話し合いをして、本人の希望を聞きます。そして、希望を反映した復帰後の条件を提示し、本人の合意を得られたら復職後の「雇用形態」「労働時間」「賃金」などを書面にしましょう。しっかりと手順を踏むことで、無用なトラブルが回避できます。

本人だけでなく他のスタッフへのフォローも大事!

 休んでいたスタッフの復職時は、本人のフォローとともに、その間サロンを守ってきた他のスタッフのフォローも大切です。もともと仲間だったスタッフの復帰とはいえ、ママとなったスタッフが以前と全く同じように働けるとは限りません。子どもの発熱によって早退を余儀なくされることは最もよくあることです。そうした起こりえる事態などを周囲のスタッフにもあらかじめ説明するなど、お互いに気持ちよく働ける雰囲気づくりをオーナーが率先して心がけたいものです。

POINT2

短時間勤務制度を設定しなければならない。

本人の希望で時短も可能だよ

 産休や育休から復職したスタッフや、3歳未満の子どもを育てているスタッフについては、育児・介護休業法短時間勤務制度が義務付けられました。短時間勤務制度は実は法的な解釈が非常に難しい制度です。ひとつの考え方としてご説明すると、利用するスタッフの1日の所定労働時間は、原則として6時間とします。また就業規則にも「1日の所定労働時間は、原則として6時間とする」と規定します。就業規則でそのように明記しておけば、本人から6時間以外で働きたいと希望があった場合、6時間以外の労働時間を予め就業規則で設定することも可能です。実際の運用が難しいと思ったら、社会保険労務士に相談することが無難です。
 また、法律上では子どもが3歳未満の場合となっていますが、サロンとスタッフの話し合いによって、3歳を超えて短時間勤務をすることも可能です。
 短時間勤務であっても雇用形態はもとのままです。短時間勤務になるからといって本人の希望がないのに正社員をパートに替えてはいけません。
 また、本人の合意のもとで決められた時間以上に勤務した日は、超えた分の残業代を支払わなくてはいけません。

「短時間勤務制度」はパートも適用される?

 パートでも法律により、日々雇用される者や1週間の所定労働時間が1日6時間以下の者は除外されます。つまり、短時間勤務制度の対象者にはなりませんので注意してください。
 また、労働者の過半数を代表する者との書面による労使協定がある場合には、次の者も短時間勤務制度の対象者から除かれます。
 ・当該事業主に引き続き雇用された期間が1年に満たない従業員
 ・1週間の所定労働日数が2日以下の従業員
 ・業務の性質又は業務の実施体制に照らして、短時間勤務制度を講ずることが困難と認められる業務に従事する従業員

POINT3

育児中のスタッフはさまざまな制度で守られている。

就学前の育児中にはいろいろあるよ

 ポイント2の「短時間勤務」以外にも、子育て中のスタッフは育児・介護休業法により、さまざまな制度で守られています。その例をご紹介します。以下の例はいずれも、女性だけでなく男性スタッフにも適用されます。

●所定労働時間の制限
 事業主は、3歳未満の子どもを養育するスタッフから請求があった場合は、所定外労働をさせてはいけません。

●子の看護休暇
 小学校入学前の子どもを養育するスタッフは、会社に申し出ることにより、年次有給休暇とは別に1年につき子どもが1人なら5日まで、子が2人以上なら10日まで、病気やけがをした子どもの看護、予防接種及び健康診断のために休暇を取得することができます。また申し出があれば半日単位での取得が可能になりました(1日の所定労働時間が4時間以下の労働者は半日単位での取得はできません)。有給にするか無給にするかは各サロンの規定によります。

●時間外労働、深夜業の制限
 小学校入学前の子どもを養育するスタッフから請求があった場合は、事業の正常な運営を妨げる場合を除いて、1カ月に24時間、1年に150時間を超える時間外労働をさせてはいけません。
 また、スタッフから請求があった場合は、事業の正常な運営を妨げる場合を除いて、深夜(午後10時から午前5時まで)に労働させてはいけません。

本人から請求や申し出がなければ時間外労働などをさせてもいいの?

上記の制度はいずれも「子育てをするスタッフから請求または申し出があった場合」などとなっていますので、スタッフから請求または申し出がない場合は、他のスタッフと同様に勤務することができます。ただし、労働基準法で決められた労働時間内であることが大前提です。

今回のポイント

スタッフの育児と仕事の両立を無理なくさせるため、法律でさまざまな決まりごとがあります。しかし、法律がなくともスタッフが心理的な負担なく子どもの都合で早退や休暇を取れるような、サロンの風土づくりも大切です。

次号では、介護などの事情を抱えるスタッフの働き方についてお伝えします。

秋田繁樹さん

監修

特定社会保険労務士

秋田繁樹さん

プロフィール:

社会保険労務士法人 秋田国際人事総研代表。東京都社会保険労務士会所属。国内大手生命保険会社、大手企業のシステムインテグレーターなどを経て、独立開業。人事労務のスペシャリストとして、多店舗展開の美容室の労務管理や就業規則・社内規定などにも詳しく、多数の美容室の指導相談に当たっている。http://www.akita-sr.com/

編集・取材・文
長島佳子
イラスト
木村𠮷見

※掲載されている情報は2016年06月06日現在のものです

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