第2章新潟を、ローカルを、そして日本全体を盛り上げる
「世界で通用する美容を、新潟で実現する。
それこそが、僕たちができる社会貢献です。」
独立する際、本田先生からあった「新潟を盛り上げろ」とのお言葉。4店舗を展開され、だいぶ実現されたのでは?
新潟を盛り上げる=自分のサロンだけが発展すればいい、とは考えていません。僕が小さい頃、両親の理容院ではいわゆる徒弟制度が残っていて、スタッフは住み込みで働いていました。そうして僕の親世代は、次世代の人たちに住まいや食事を提供し、免許をとって稼げるようになるまで面倒をみていたんですね。じゃあ、そこから時代背景も変わり「僕ら世代の務めは何だろう?」と考えた時、次の世代に「豊かな美容業界を残すこと」が使命だと思いました。つまり、新潟という地域全体の美容業界が発展してはじめて、盛り上がるってことになるんです。
今の美容業界は都市集中型で、東京や大阪で働くことが成功のような風潮があります。田舎から東京に出て就職して、都会の方が給料はいいかもしれない。でも家賃は高くて生活も厳しい。親元を離れていると結婚・出産した場合、育児の手助けも得られず、結果として美容師を続けるのが難しくなる人もいる。都会の方が華やかなようですが、こんな実情では豊かな生活とは言えないと思うんです。
由藤さんが考える「豊かな生活」とは?
田舎で働くことも、豊かな人生ではないかと僕自身は思います。だから「地元で働くのもいいな」と思える環境をつくって、「後輩たちに働き方の選択肢を増やしてあげること」が僕らの役割だと考えています。ここで大切なのは、「新潟で働く=美容師のレベルが下がる」というのは意味がない。東京で、そして世界で通用するレベルの美容を新潟で実現してこそ、僕らの存在価値があると言えます。
僕が新潟で独立した時、「地元に帰ったんだ?お前のキャリアも終わったな」なんて風潮がありました。ヘアの全国大会コンテストで「新潟のサロン」と言うと、出場者から小バカにした態度をとられたことも。その悔しさをバネにして、「新潟の美容業界はレベルが高い。憧れだと言わせてやる!」という想いで活動してきました。
ご自身のサロンだけでなく地域全体でとなると、周囲の協力も必要ですね。
新潟へ戻って以来、周りのサロンオーナーやメーカーに「一緒に盛り上げていきましょう」と声がけをしました。でも最初はなかなか大変でしたよ。「それ利益になるの?」とか「地域のための活動って、うさんくさい」とか。だから警戒心をなくしてもらうために、他店スタッフも参加できる無料の講習会や勉強会を開いたりして。そうして少しずつ信頼を得ていい風が吹き始めると、協力してくれる人が増えてきました。今では「よその地域も盛り上げよう!」と、呼ばれてもいないのに他県へ出かけて行ったりしてます(笑)。
全国各地のサロンで情報を共有して学び合う「ローカルサミット」という活動も始められるそうですね。
はい。「ローカルサミット」はまだ準備段階ですが、2016年度中には形にしたいですね。高知と熊本にあるサロン経営者とたたき台をつくっているところです。活動としてはみんなで集まって「お国自慢」をしたいなと。たとえば、仲間が東京などで集まってセミナーを開催したりとか。サロンの運営や育成、雇用の成功事例や、地域での活動、スタッフのライフスタイルとかを紹介してもらって、お互いに「それいいね!」って共感し合うイメージ。働き方や生き方のリアルなモデルを発信して、給料だけでは表せない、ローカルならではの豊かさを「見える化」したいんです。そうして情報を共有して磨き合い、ローカルで働く美容師が誇りを持てる環境をつくっていきたいと考えています。
「新潟を盛り上げる」という活動はだいぶ形になってきました。これからは地方を、そして最終的には日本を盛り上げたいと思っています。