サロンで始める
訪問美容~実施マニュアル編~
vol.10
【経営・マネジメント編/個人宅への営業方法】
営業活動をしよう⑤
今回は、個人宅のお客さまへの営業方法についてご紹介。営業活動の前に決めておくべきことや知人の方からお客さまをご紹介いただいた際に注意すべき点、契約までの手順などをレクチャーします。
アドバイザー:
ふくりび 岩岡さん
個人宅のお客さまにも働きかけて、
地域一番店を目指しましょう!
「訪問美容」スタートまでの6ステップ
1
【営業活動の前に】「対象とするお客さまの条件」と
「その確認方法」を決めておきましょう。
訪問美容を利用できる方は、法律や地域の条例によって厳格に定められており、条件にあてはまらない方にはサービスを提供できません(vol.1参照)。そのため、①事前に条例などを確認し、自サロンが対象とする個人宅のお客さまの条件を決める、②条件にあてはまる方か、確認する方法を決めておくことが大切です。例えば、「ふくりび」の場合は以下の通り。
〈「ふくりび」の場合〉
①条件
高齢の方:要支援・要介護の方に限定。ケアマネジャーからの紹介を必須とする。
障がいのある方:障がい者手帳をお持ちの方に限定。
②確認方法
新規の個人宅のお客さまの場合、必ず担当のケアマネジャーを紹介いただき、ケアマネジャーにお客さまの情報(介護度など)を確認する。
「ケアマネジャーを通すことは、スタッフの安全確保や、認知症のお客さまが予約したことを忘れた際のトラブル回避にもつながります」と岩岡さん。「ふくりび」のケースを参考に、①②を決めておきましょう。
2
【個人宅への営業方法】チラシやウェブを使い、
できるだけ多くの人に宣伝しましょう。
個人宅のお客さまのご利用きっかけは、ご本人やご家族からの依頼・知人からのご紹介が主となります。そのため、訪問美容を行っているサロンであることを多くの方に知っていただくことが重要。まずはケアマネジャー事業所へのチラシの郵送、ウェブサイトやSNSを使った広報活動、サロンのお客さまへの働きかけなど、広く宣伝することが営業活動の第一歩となります(宣伝方法はvol.6を参照)。
【よくある質問】
ケアマネジャー事業所にも訪問営業した方がいい?
直接伺うことも可能ですが、ケアマネジャー事業所の数は介護施設と比べて多く、すべてに足を運ぶのは大変。施設に訪問営業する際に近くの事業所へ伺う、または、事前に電話を入れてチラシを郵送する方法などが効率的です。
3
【契約】お客さま情報を介護者に確認。
その後、日程を調整&訪問しましょう。
個人宅のお客さまの場合、サロンのお客さま同様、特に契約書は交わしません。下記の手順を参考に、日程を調整、訪問の約束を交わすことで契約となります。なお、知人の方からの紹介の場合、お客さまご本人は紹介を希望されていないことも。トラブルを避けるためにも、ご本人やご家族の意思確認の前に直接ご連絡するのは控えたほうが無難。vol.6で作成したチラシや名刺、下記のような申し込み用紙を、ご紹介者からご本人またはご家族などに渡していただくようお願いしましょう。
訪問後は、ケアマネジャーに訪問完了の報告をしましょう。継続的に利用していただくためには、ご本人やご家族だけでなく、介護スタッフとも良い関係性を築くことが大切です。
依頼~訪問までの手順
2ご本人またはご家族の方に、希望のメニューと支払い方法を確認。日程を調整・決定する。
3ケアマネジャーに訪問日をメールまたはFAXで報告し、独居の場合は当日の立ち会いをお願いする。
立ち会っていただくことで、スタッフの安全管理にもなります。
4お客さまのお宅に訪問&施術を行う。
【よくある質問】
ウェブやFAXで依頼を受けた場合は?2回目以降の依頼の手順は?
ウェブやFAXで依頼を受けた場合も、電話でのやり取りは必須。いたずら等でないか確認するためにも、ご本人またはご家族、そしてケアマネジャーと直接電話で話す手順を踏みましょう。一度ご利用いただいたお客さまの情報は、カルテに記載を。そうすることで、2回目以降、スムーズに予約を受け付けることができます。
営業活動をしよう⑤/やることチェックリスト
- 条例などを確認の上、個人宅へ訪問するお客さまの条件を決める。
- お客さまが条件にあてはまる方か、確認する方法(ケアマネジャーに確認するなど)を決める。
- ウェブサイトやSNSを使った広報活動など、個人宅のお客さま向けにvol.6の宣伝方法を実践する。
- 知人の方からお客さまをご紹介いただいた際は、ご本人にチラシなどをお渡しいただくようにする。
- ご本人やご家族から依頼をいただいた際は、ケアマネジャーにお客さま情報を確認。日程等を調整し、訪問する。
「介護者との連携」が成功の秘訣です。
個人宅のお客さまの場合は、サロン側が「訪問美容を利用できる方かどうか」などの情報を収集する必要があります。また、女性スタッフが単独でご自宅を訪問する際は特に、介護者の方に立ち会っていただくなど、安全管理を徹底することが大切です。そのため、施設の場合と同様、ご家族やケアマネジャーなど、介護者との連携が重要に。ご本人だけをお客さまと思わず、周りの方とも良い関係性を築けるよう努力することが成功の秘訣です。
次号は、「訪問美容のスタッフ確保」についてご紹介。人員の配置方法などをレクチャーします!
監修NPO法人 全国福祉理美容師養成協会(ふくりび)
理事長 赤木勝幸さん
「誰もがその人らしく美しく過ごせる社会の実現」を目指し、全国の「訪問理美容サービス」の質の向上、理美容師の育成や高齢者・介護者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)向上などに尽力する同協会を2007年に設立、理事長に就任。2008年社会貢献支援財団社会貢献賞受賞。著書に、「技術からマネジメントまで 訪問理美容スタートBOOK(女性モード社)」など。
事務局長 岩岡ひとみさん
同協会の事務局長。ヘルパー2級取得、美容師国家資格取得。2009年内閣府青年社会活動コアリーダー育成プログラム英国派遣団員。2010年東アジア地域国際シンポジウム招聘者。2012年内閣府女性のチャレンジ賞受賞。2013年シアトルiLeap SIFJ招聘者、第27回人間力大賞厚生労働大臣奨励賞受賞。2012年より愛知学院大学経営学部非常勤講師。
ふくりび http://www.fukuribi.jp/
参考文献
「技術からマネジメントまで 訪問理美容スタートBOOK」
NPO法人 全国福祉理美容師養成協会(ふくりび)編著/女性モード社
1ご本人やご家族から依頼がきたら、お付き合いのあるケアマネジャー事業所の連絡先を伺う。
ケアマネジャーに連絡し、お客さまの情報(介護度、訪問美容を利用できる方かどうかなど)を確認する。