第3章GOALD、そして自身のロードマップ
「美容業界のバカどもへ!
わきまえてから、さらけ出せ!」
今後、予定していることはありますか?
3月10 日、表参道に大人男性向けサロン「BLACK HAIR LOUNGE(ブラック ヘア ラウンジ)」がオープンします。これは、GOALD 創業から一緒にやってきたスタッフ 星 勇輝が、PC(Partner Concept)サロンオーナーになります。
男性は年齢を重ねると、若い頃とは異なる悩みやコンプレックスを抱えるようになる。そして、10年前に誕生したメンズ美容室市場の初期から通ってくださったお客さまも、若者向けのメンズサロンには行きづらいと感じる方が増えています。そんな大人男性のニーズに応え、磨きをかける新しいブランドです。
確かに、ニーズが高いと思います。
そのような実態もあって、新しい挑戦がどんどん広がっています。一例として、「薄毛の悩み」にアプローチするため、AGA治療や植毛を行うクリニックと提携を進めています。クリニックには「生やす」「植える」といった技術があるものの、お客さまが目指している理想のヘアスタイルまでは分からないことが多いんです。そこで、GOALDの2,000スタイル以上のヘアカタログを活用し、お客さまに理想の髪型を選んでいただき、そのスタイルに必要な髪の量や位置をGOALDとクリニックの先生が共創していく。
さらに、治療後のアフターケアもGOALDで提供できれば、より安心感があるサービスになります。現在、さまざまな試みを行いながら準備を進めている段階。
また、大人男性向けのヘアプロダクトやコンプレックス商材なども展開し、この分野をさらに拡大していく予定です。外見だけでなく、内面からも自信を引き出すサポートを提供し続けたいと考えています。
メンズ美容が、ますます広がっていきますね。海外展開はいかがですか?
アジア各国を対象に2022年から教育活動や市場調査を進めてきました。世界でも「黒髪」が多いアジア市場は、日本の7~8年前の市場に近い状況で、そこには大きなチャンスがあると感じています。
具体的には、韓国でブランド構築を行い、台湾で実態を作り、中国でビジネスを拡張するという流れ。それぞれの国には独自の文化や価値観がありますが、GOALDのサロン・メーカー・教育という事業を、それぞれの国に適した形でフィットさせていくのが理想です。
ただ、海外進出においてはGOALDやCOARのブランドをそのまま押し出すのではなく、私たちの知的財産を活用し、美容師さんやメーカーさんと提携して、その国に合ったブランドを共創する形を目指しています。各国の市場やニーズにしっかり向き合い、柔軟に対応することで、現地に根ざした成長を実現していきたい。
「上場」を目指しているとのことですが、具体的にはいつくらいになりそうですか?
2029年の上場を目指しています。そのために、2026年までに8項目で日本No.1を達成することを目標に掲げています。例えばメンズサロンのシェアNo.1、メンズ美容師オンラインコミュニティ会員数No.1、プロフェッショナルメンズブランドの売上・シェアNo.1など。
これらの実績をエビデンスと信用に変え、上場準備に取り組む計画です。上場の目的は、単なる規模拡大ではありません。美容業界にパラダイムシフトを起こすこと。業界全体の構造やキャッシュフローを見直し、必要ではない部分を破壊しながら新しい価値を創造していく。その過程で市場を拡大することこそ、GOALDの存在意義だと考えています。
具体的には「物:プロダクト」「事:学ぶ機会の提供」「場:働く場所の提供」という3つを軸に、メンズ美容のインフラを創造します。そして、GOALDとしては「美容師の未来を創る」という理念を体現し、GOALD JAPANとしては「業界の未来を創る」という理念を実現していきたいと思っています。
5年前のインタビューでは、「できる限り早くハサミを置いて次のステップに進みたい」とのことでしたが?
伝説の!(笑)確かに、言っていることが変わっちゃいましたね。これには理由があります。私は日本で一番、美容師さんの味方でいたいんです。自分のエゴかもしれませんが、美容師代表としてシザーケースをつけ、ツンツンヘアーにイケイケなファッションで、スーツを着ずに上場の鐘を鳴らしたい!と本気で思っています(笑)。
美容師という職業に対して誇りを持っていますが、社会的地位が高いとは言えない現状に、どこかコンプレックスを抱いていました。他業種で成功している経営者の方々と話すたびに、その凄さに圧倒されることも多いです。だからこそ、「美容師をしている美容室経営者」として上場することに、大きな意義があると感じています。しっかりしたビジネスモデルと緻密な戦略があるので、うまくいかない理由がひとつもないと思っています。
GOALDは、美容室業界・時価総額No.1企業を目標にしています。それが業界において社会的価値があり、多くの人を導いている会社になると思うので。
トメ吉さんが、今いちばん伝えたいことは?
私はこの業界が大好きだからこそ、「美容業界のバカどもへ!」と鼓舞したい気持ちがあります。それは自分が常に未熟で無知だと自覚することです。経営者は仲間とその家族を導く責任があり、導くための知識や手段を常に増やさなければ誰も幸せにできません。ハサミを置いても価値を提供できるように、経験と知識・スキルが必要です。そしてもうひとつ大切なのが、「わきまえてからさらけ出す」こと。できること、できないこと、苦手なことを認め、素直にさらけ出す。頭を下げることを恐れず、人と向き合う。そうすることで初めて、信頼と成長を手にすることができます。
自分が悩んだり、苦しかったり、嫌だった事は、自分の世代で終わりにしようという覚悟です。GOALDの仲間には、私がその年齢だった時よりも、もっと早く成長し、稼げる人になってほしい。
これらの自覚と覚悟がなければ、この業界は他業界の賢い人たちに奪われてしまう。だからこそ、お客さまを含め、業界内外でリアルな情報を共有し、高め合い、新たな価値を創造していきたいと思うんです。
最後に、トメ吉さんを突き動かすものは、なんでしょう?
経営が楽しくて仕方がない、これが私を突き動かしているすべて。自分次第で無限の可能性があります。経営という最高のエンターテイメントをみんなで楽しみたい。だから、GOALDのみんなには全員経営者になってほしいと、創業時から伝えています。
今から10年後、50歳になったらCVC(Corporate Venture Capital:事業会社が社外のベンチャー企業に対して投資を行う活動のこと)を立ち上げて、若者たちの純粋な想いやビジョンに投資をしたいと思っています。彼らの夢を後押しし、未来を一緒につくっていきたいですね。
現状が当初の計画通りかを、たずねると…
「ビジネスとしての実態は想定通り。そこから生まれた可能性は想像以上。」との答え。
GOALDのロードマップを見せてもらった。
細部にわたり考えられた戦略と、業界内外を見渡す視座の高さに驚く。
今回、記事のトップ写真はあえて、2019年のインタビュー時と同じ構図。
さらなる自信と強さにあふれた、トメ吉さんがそこにいた。